みなさんこんにちは、香港在住の携帯電話研究家、山根康宏です。アップルの「iPhone Air」やサムスンの「Galaxy S25 Edge」など、鳴り物入りで登場した超薄型のスマートフォンが思ったほど売れていないなんてニュースが最近、話題です。実際に私の住む香港ではiPhoneとGalaxyのユーザーが多いにも関わらず、これらの薄型モデルを持っている人を見かけることはほとんどありません。この状況は中国でも同じです。

しかし、HONORが2025年11月に中国で発表したHONOR 500シリーズは、背面をパッと見はiPhone Airにインスパイアされたようなデザインです。

HONORの数字3桁モデルは、ライバルメーカーに同じターゲットユーザー層を持った機種があります。ファーウェイの「nova」、OPPOの「Reno」、vivoの「S」シリーズなどです。ミドルハイレンジモデルであり、カメラ性能はポートレートやセルフィーを強化。ターゲットはZ世代ということになるのですが、その中でも女性層を狙っています。HONOR 500シリーズは、それもあってアンバサダーに中国で人気のイケメン俳優・歌手のシャオジャン(肖戦)氏を採用しています。

芸能人の採用でスマートフォンの売れ行きに影響が出るのはどこの国も一緒で、日本ではモトローラが目黒蓮氏を採用したことでrazrシリーズの人気に拍車がかかりました。中国では特にミドルハイレンジモデルに関しては、芸能人を使って大々的なアピールを行うことが当たり前になっていて、OPPOのRenoシリーズはK-POPアイドルグループi-dleの中国出身メンバー、ウギ氏(本名:宋雨琦、ソン・ユチ)を採用しています。

HONOR 500シリーズは2モデル展開。HONOR 500はチップセットがクアルコムSnapdragon 8s Gen 4、バッテリーは8000mAh、カメラは広角2億画素と1200万画素の超広角を搭載します。

HONOR 500 ProはSnapdragon 8 Eliteに8000mAhバッテリー、2億画素広角+5000万画素 3倍望遠+1200万画素超広角のトリプルカメラ構成。どちらのモデルもミドルハイレンジのさらに上を行く性能を持ちます。パステル系の淡いボディーとは裏腹に、実は高性能なゲームも対応できるパワフルな機種です。

HONORの数字3桁モデルは若い世代・女性向けという製品展開のため、トレンドセッターとなるべくデザインを毎年変えてきました。しかし、ここ2年の製品を振り返ると「HONORの中核製品」というイメージを植え付けきれなかったと私は感じています。
2023年11月発表のHONOR 100シリーズは、カメラバンプにあえて非対称・不安定なデザインを採用。これは半年後のHONOR 200シリーズにも引き継がれました。ただ、このデザイン、実物を実際に見てみると、どうも落ち着かないものでした。

2024年11月登場のHONOR 300シリーズでは台形のバンプデザインに。3桁数字モデル初のペリスコープカメラを搭載した「HONOR 300 Ultra」を含む3モデル展開としました。半年後のHONOR 400シリーズも同じデザインですが、Ultraモデルは無くなっています。ミドルハイレンジにUltraを求めるユーザーはいなかったのでしょう。こちらも特徴的な差別化デザインとは言えなかったと感じます。

そして、2025年11月に登場したHONOR 500シリーズでは、イメージを大きく変更。市場ではまだあまり採用例がないiPhone Air系の横型カメラバンプデザインとしたわけです。

HONOR 500シリーズはどちらも本体厚みが7.8mmと一般的なスマートフォンと変わらず、薄型を目指した製品ではありません。しかし、今年の新型iPhoneの中でも最もイケてる製品となるはずだった、iPhone Air風デザインとすることで販売増を狙ったのでしょう。このデザインの採用がプラスとなるのかどうかはまだわかりません。半年後のHONOR 600シリーズ(仮称)でもこのデザインを引き継ぐかどうか、気になるところですね。

とはいえ、前モデルのHONOR 400シリーズよりバッテリーは大型化され、本体サイズもやや小ぶりとなり持ちやすくなったこと、逆目立ちする背面デザインは話題を集めるのではないでしょうか。日本未参入のため注目度は低いHONOR 500シリーズですが、グローバルでどう展開されるか、気になっています。









