ソニーXperia 5 V発表。カジュアル路線になったプレミアムコンパクトスマホ (石野純也)

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石野純也

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ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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ソニーXperia 5 V発表。カジュアル路線になったプレミアムコンパクトスマホ (石野純也)
  • ソニーXperia 5 V発表。カジュアル路線になったプレミアムコンパクトスマホ (石野純也)
  • ▲背面、特にカメラ周辺のデザインが大きく変わった
  • ▲9月1日に発表されたコンパクトハイエンドのXperia 5 V
  • ▲イメージセンサーには、Xperia 1 Vと同じExmor T for mobileが採用されている
  • ▲スピーカーやアンプも刷新。サウンドの迫力や精細感が過去モデルより増した
  • ▲カジュアル路線に大きく舵を切ったプロモーション。細かな技術内容を説明するというより、キレイに撮れて音もいいといったイメージを前面に打ち出している
  • ▲Xperia 5 IV(写真左)までは、Xperia 1のイメージを踏襲していたが、Xperia 5 V(写真右)でその方針を転換した格好だ
  • ▲Xperia 5は、1と10の中間だったが、どちらかと言えば1に近い要素が多い端末。ただ、それがいいとこ取りにはならず、中途半端になってしまった側面がある

ソニーは、9月1日にオンラインで「Xperia 5 V」を発表しました。同モデルはXperia 5シリーズの最新モデル。Xperia 5は、そのナンバリングの通り、フラッグシップのXperia 1と、ミッドレンジのXperia 10の中間に位置づけられる端末です。

どちらかと言えば、機能面はXperia 1寄りですが、本体やディスプレイがコンパクトで価格も抑えめになっています。より取り回しがしやすいXperia 1といったポジションの端末と言えるでしょう。

実際、Xperia 5 Vも、先に発売された「Xperia 1 V」と同様、イメージセンサーを刷新。ソニーセミコンダクタソリューションズが開発した、2層トランジスタ画素積層型の「Exmor T for mobile」を搭載し、高感度・低ノイズの撮影を可能にしています。センサーサイズ自体が前モデル比で1.7倍に大型化していることに加え、トランジスタを2層に分け、光を取り込みやすくしたのがその理屈です。

▲イメージセンサーには、Xperia 1 Vと同じExmor T for mobileが採用されている

スピーカーも刷新し、アンプを強化したことでサウンドがよりダイナミックに再生されるようになりました。雑音低減や高精細化も実現しており、音の解像感も向上。

実際、前モデルである「Xperia 5 IV」と聞き比べてみると、音の迫力が明らかに増しています。筐体サイズが大きく、スピーカーも大型化しやすいXperia 1 Vには一歩及んでいないものの、コンパクトモデルとしては十分な音質です。

▲スピーカーやアンプも刷新。サウンドの迫力や精細感が過去モデルより増した

端末の機能面ではXperia 1 Vに近いXperia 5 Vですが、その打ち出し方は大きく変更しています。これまでは、Xperia 1のコンパクト版というイメージが強く、どちらかと言えばXperiaのビジョンである「好きを極める」に忠実でした。

誤解を恐れずに言えば、ガジェット好きや同社のデジカメ「α」のユーザーに刺さるような売り方をしていたと言えるでしょう。それに対しXperia 5 Vでは、若者がカジュアルに持つようなビジュアルで、プロモーションの仕方を大きく転換しています。

▲カジュアル路線に大きく舵を切ったプロモーション。細かな技術内容を説明するというより、キレイに撮れて音もいいといったイメージを前面に打ち出している

こうした方針に則ったためか、端末のデザインもXperia 1との差分が大きくなりました。Xperia 5 IVまでは、Xperiaの特徴でもある背面左上に並んだトリプルカメラを採用していましたが、Xperia 5 Vはデュアルカメラになり、そのデザイン処理もXperia 1 Vとの違いを出しています。

機能的には、望遠カメラに非対応になった代わりに、メインカメラの画素数を活かした切り出しの2倍ズームに対応することとなりました。イメージセンサーの大判化、高画素化を生かし、望遠カメラを省く判断をしたというわけです。

▲背面、特にカメラ周辺のデザインが大きく変わった
▲Xperia 5 IV(写真左)までは、Xperia 1のイメージを踏襲していたが、Xperia 5 V(写真右)でその方針を転換した格好だ

これによって、コストダウンを図れていることは容易に推察できます。現時点では価格が未定で、物価高、円安傾向のなか、価格を維持するためか、これまでのモデルより価格を下げるためかは定かではありませんが、Xperia 1との差を大きくしたい意図は感じ取れます。いずれにせよ、ターゲット層を、これまでよりも広く取ったXperia 5と言えるでしょう。

▲9月1日に発表されたコンパクトハイエンドのXperia 5 V

先に述べたように、Xperia 5はXperia 1とXperia 10の中間に位置していた端末ですが、悪く言えば、中途半端な存在になっていたことは否めません。

いち早く最新技術を取り入れ、価格を気にせずに飛びつくようなユーザーに支持されるXperia 1や、こなれた価格とおなじみのブランドで幅広く売るXperia 10に対し、Xperia 5はどっちつかずの状態になっていました。

8月に入って、ソフトバンクがXperia 5 IVを13万円ほど値引きし、投げ売り状態になっていましたが、皆まで言わずともその理由はお察しのとおりです。

▲Xperia 5は、1と10の中間だったが、どちらかと言えば1に近い要素が多い端末。ただ、それがいいとこ取りにはならず、中途半端になってしまった側面がある

確かに、コンパクトなほどよいサイズのハイエンドモデルは、広い層を狙った方が市場は大きくなります。スペックが高く、価格も決してリーズナブルとは言えないiPhoneが、老若男女問わずに受け入れられていることを踏まえれば、Xperia 1 Vの路線変更は理解できます。Xperia 1がある中、あえて自らターゲットを狭めていく必要はないからです。

一方で、ソフトウェアに関しては、まだXperia 1に引きずられているようにも思えました。その一例が、αのUIをスマートフォンのUIに落とし込んだカメラアプリの「Photography Pro」。Xperia 5 Vでも、このアプリはそのまま搭載されています。

Photography Proもスマートフォンライクな撮影が可能なBasicモードを採用するなど、スマートフォンの操作体系に歩み寄ってきてはいるものの、少し設定を変更すると、シャッター速度優先やプログラムオートが顔を出し、難しい印象になります。

▲Photography Proは引き続き搭載。カメラのUIに関しては、Xperia 1 Vと共通だ
▲モードを切り替えると、αライクなUIで撮影ができる

また、動画撮影用の「Videography Pro」や、映画撮影などに使う「VENICE」のUIを落とし込んだ「Cinematography Pro」も、そのまま搭載されています。

機能自体があることはいいのですが、プロモーションをカジュアル路線に切り替えるのであれば、こうしたアプリは詳しい人だけが追加できるよう、ダウンロード対応にしてもよかったのでは……と思わずにはいられませんでした。

特にCinematography Proは、うっかり開いてしまうと混乱は必至。ガジェットに詳しいと思われている筆者ですら、正しく操作できる自信がありません。

▲Photography ProのBasicモードでも動画撮影はできるが、Videography ProやCinematography Proも引き続き搭載している

同じXperiaでも、ミッドレンジのXperia 10には、Photography ProやVideography Pro、Cinematography Proはなく、より普通のスマートフォンライクな操作ができます。路線変更したのであれば、ソフトウェアやUIまでXperia 10に寄せていった方がより納得感が出たような気もします。

その方が、Xperia 1のプレミアム感もより出せるのではないでしょうか。大胆にイメージを刷新してきたことが吉と出るか、凶と出るかは未知数ですが、中身ももっと振り切ってほしかったのがXperia 5 Vを見たときの率直な感想でした。

《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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