眼鏡市場までスマートグラス『Linse』発売、「ジェネリック レイバンメタ、AI抜き」な仕上がり。オーディオだけのLinse Liteも(ミニレビュー)

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Ittousai

Tech Journalist. Editor at large @TechnoEdgeJP テクノエッジ主筆 / ファウンダー / 火元

国内1000店舗以上の『眼鏡市場』を展開するメガネ大手 メガネトップが、スマートグラス『Linse』(リンゼ)とオーディオグラス『Linse lite』を発売しました。

上位モデルの Linseはカメラとマイク、スピーカーを搭載し写真・動画・音楽・通話等に使えるタイプ。Linse Lite はマイクとスピーカーのみで、音楽や通話向けのシンプルな製品。

▲画像:カメラ搭載の Linse (リンゼ)。ドイツ語等で「レンズ」を意味する単語

最近流行りの『AIグラス』ではなく、あくまでカメラやマイク・スピーカーという付加価値を持ったメガネとして、軽さや装着感など「毎日かけるメガネとして成立するか」を基準に開発したとうたいます。

Linse でできることは、1200万画素の写真撮影、1920 x 1440 @ 30fpsの動画撮影(1クリップにつき最長1分)、通話、音楽や動画の音声再生、ボイスメモ。

本体には32GBストレージを内蔵します(システム領域に18GB以上占有)。バッテリーは音楽の連続再生で約4時間。

操作はツル部分のタッチパッドに触れる、『Hi リンゼ~』のウェイクワードで音声コマンド、もしくはスマホアプリからのリモート操作。

ディスプレイは搭載しないタイプなので、レンズは交換が容易。標準では可視光透過率20%の濃いグレーの樹脂製レンズが入っていますが、6200円~で度付きレンズにも対応します。

既存のポピュラーな製品でたとえれば、「AIやアプリ抜きのRay-Ban Meta」的なメガネです。

もうひとつのLinse Lite は「オーディオグラス」。こちらはさらにシンプルに、機能は通話と音楽(メディア)再生のみ。昔ながらの「メガネ兼用Bluetoothヘッドホン」です。

マイクは搭載するものの音声録音には対応せず、音声操作にも非対応とシンプルなモデル。

無線はBluetooth 5.3と、カメラ付きのLinseのみメディアインポート用にWi-Fi 6にも対応します。同時ペアリングはどちらも1台のみ。

メガネとしては、どちらのモデルもフレーム・レンズとも樹脂製で比較的軽量。Linse は約45g、Linse Lite は約40gとなっています。

日本向けに大きな鼻あてでフィット感重視

いわゆるスマートグラスはまだまだメインストリームに普及したとはいえませんが、ガジェットやテック好きの文脈ではむしろ古典的な存在で、各社が多数の製品を販売しています。

「日本の業界最大手が扱うこと」以外のこだわりポイントをメガネトップ担当者にうかがったところ、普段使いできるメガネとして日本人向けに販売するにあたり、特に鼻あてのフィット感や調整を重視したとのこと。

どちらのモデルもかなり大きめで柔らかな素材の鼻あてパーツがあり、広くも狭くも調整できるようになっています。

他社のスマートグラスで、鼻の高さやかたちに応じた調整が難しかったり、一体型で鼻の高さに応じて別モデルになっていると、あと付けの調整パーツを用意したり、在庫や納期で苦労することもあるだけに、調整範囲の広い鼻あては安心できる仕様です。

日本全国の店頭で「カメラつきメガネ」販売。プライバシー対策は?

Linseはオンラインストアでは販売せず、全国の眼鏡市場のうち100数十店舗ほどで店頭販売します(発売時点で約130店舗。眼鏡市場公式サイト調べ)。

カメラつきスマートグラス、AIグラスの国内展開の文脈でよく話題に上がるのが、盗撮などに悪用される懸念。

そもそも論的な話をすれば、盗撮が目的ならば隠しカメラ的なデバイスは「自衛用」等の名目で様々な形態の商品が堂々と売っており、わざわざ隠しようのない顔面に装着するのか?という言い方もできますが、とはいえ世の中ではまだ「明らかにスマホを向けられれば警戒するけれど、メガネで撮られているとは思わない」人が大半。

「悪用目的ならもっと向いたものがある」も知っているからこそ言える話で、ストーカー対策を組み込んで悪用しづらいAirTagでも悪用例があるように、多くの人の目に触れる状態で販売されれば、そこから悪用したがるものも出てくるのは世の習いです。

▲画像:撮影通知LEDが光ったところ。実際には(周囲の明るさや環境によるものの)明滅するためもう少し視認しやすい

そこでLinseでは、

・撮影時には、カメラと反対側のヨロイ部分にあるLEDライトが点灯する

・LEDライトを隠すと撮影できない

・(イヤースピーカーで)シャッター音を再生する

という対策をとっています。年間で数百万本を販売するメタのAIグラスとほぼ同じ内容です。

▲画像:撮影通知LEDを塞ぐとシャッターが切れない。

悪用ができないのか?と言われれば、シャッター音は(本人以外には)そこまで大きくないので騒がしい部屋では周囲に聴こえない、ライトも煌々と眩しいわけでもなく周辺環境が明るければレンズの反射等とあまり区別がつかない、そもそもメガネで盗撮される可能性を予想していないとライトを確認しない、見ても分からない等はありますが、いずれもスマートフォンが「撮影中に光るわけでもなく、シャッター音も消せる / そもそも鳴らないモデルも普通に買える」時点で、少なくともスマホ以上に対策しているとはいえます。

「ジェネリックRay-Ban Meta、AI抜き」

短期間ながら実際に使ってみたところ、Linseについては、ハードウェアとしてはメタのRay-Ban Meta (ディスプレイがないほう)とよく似た感覚

メタの場合は写真や動画が撮れること自体よりも、いつでもMeta AIと会話でき、AIと視界を共有していま見ているものについて質問する、翻訳させる、覚えてもらって後から内容を調べる等々がメインの「AIグラス」ですが、Linseは決め打ちの音声コマンドには対応するものの、AIやSNS連携を抜いてシンプルにしたような仕上がりです。


許認可のIDやメタデータから判断すると、眼鏡市場のパートナーとして製造を担当したと思われるのは中国のEmdoor(億道)。安価なタブレットやVRヘッドセットなどを他社のニーズにあわせて製造する、OEM / ODMとしてはかなり大手のメーカーです。

Linseは採用プラットフォーム等を製品ページに載せていませんが、Qualcommがメタとの協業で開発したSnapdragon AR1シリーズは多くのカメラつきスマートグラスで採用されています。

Linseの製造元と思われるEmdoor もSnapdragon AR1を採用したスマートグラスの相手先ブランド製造を請け負っているため、模倣したというよりは共通のリファレンスに基づいているというほうが正確かもしれません。

コンパニオンアプリの Linse Connect の機能は、写真や動画、録音した音声メモのインポート、確認、最大録画・録音時間の設定など。

メディアファイルは、スマホとLinseのWi-Fiが直結してすばやくインポートします。無線周りは環境依存も多く、スマートグラスによっては接続に毎回苦労する製品も少なくないものの、Linseは画像のインポートについては苦労せずスムーズに扱えました(Pixel 10 Proと接続)。

やや面白い機能としては、スマホアプリのボタンでも写真や動画、音声の記録をトリガーできます。装着検出もオフにできるため、身に付けないでどこかに置いて撮影する使い方もできるかもしれません。

カメラの画質

静止画は約4000 x 3000の1200万画素。センサーもレンズも比較的小さく、最近のスマホカメラほどの画質は望めませんが、かなり広角であることと光量、頭を動かさないことに注意すれば、「見ているもののメモ」的にはしっかり機能します。


(▲画像:Linseで撮影した夜景。約3000 x 4000画素をクロップして掲載用に縮小。小さなセンサには難しい環境でもそれなりに撮れる。画素数が同じRay-Ban Metaと比較すれば、発売後にソフトウェアで画質や後処理を向上させてきたこともあり、似た傾向ながら白飛びや細部の潰れは少なく、Ray-Ban Metaのほうがやや上)

暗い場所での撮影や、画質を求めるならスマホを出すとして、ハンズフリーで両手を使う手元を撮れる、手が塞がっていても撮れるのが利点です。

動画はいまのところ最長でも1クリップにつき連続1分までの制限があり、料理や趣味、いわゆるハンズオン動画などを撮るには尺を気にする必要がありますが、短尺動画が流行るいまのご時世にはむしろ使いやすいかもしれません。

意外と違う Linse と Linse Lite

仕様的にはカメラありの Linse、なしの Linse Lite ですが、実はそれ以外にも多くの違いがあり、またメガネとしての形状もかなり違う、明確に別モデルです。

たとえば充電は、Linseはこれまたレイバンメタとそっくりなバッテリー内蔵メガネケースに収める方式ですが、Linse Lite はUSB-Aから二股になったマグネット式POGOピンを、左右のツルに装着する仕組み。端子にはかなり存在感があります。

オーディオグラス製品には、左右のツル部分のみに電子部品を載せており、前のフレームやレンズは完全にdumbなただのメガネという構造のものがありますが、Linse Liteもその仲間。驚いたことに電源オンの動作も独立しており、左右それぞれをオンにしないと片方からだけ聴こえて悩むことになります。(逆にいえば、片側だけでも使えます)。

タッチ操作についても、カメラつきのLinseはツルのなかほどの一定範囲がセンサーになっており、前後にスワイプして音量調整などができるものの、Linse Lite で反応するのは、ツルの前方にある赤いタッチセンサー部分のみ。

音楽再生や一時停止が1秒長押しなど、誤認識を操作方法で制御する、どこか懐かしい仕組みです。

遮音性が高いイヤホンで再生停止や外部音透過モード切り替えが長押しだと、咄嗟に周囲の音を聞き取りたいときに不便ですが、Linseはオープン型なのである程度は軽減されるかもしれません。

音量を上げるのが左タッチセンサー2度押しで1段階(3回連続してしまうと曲送りになる)、下げるのは右タッチセンサを2度押し(3回連続してしまうと曲戻し)など、今となってはクセのある操作ですが、スマホと接続するならばスマホ側で、あるいはスマートウォッチ等で操作する手もあります。

音質は用途と期待の持ち方。カメラ有無で差

どちらもスピーカーを備えて音楽や動画の音声が聴けますが、カメラつきLinseのほうがスピーカーの容量が大きいのか、オープンイヤーイヤホンとしての音質は上になっています。

とはいえオープン型なので、Linseも低音は弱め。一括りに「音質」として良し悪しを表現するのは難しいところですが、少なくとも無印Linseについては、一定の音量で鳴らすなら、ボーカルなど中音域もちゃんと聞き取れる、ピンキリのダイナミックレンジが極端に広いオープン型イヤホン、耳までの距離が開いてしまうオーディオグラスとしてはまずまずの音質です。

大きなスピーカーや密閉型のイヤホン、ヘッドホン等にはもちろん及ばないものの、音楽の細かいニュアンスまでは必要ない、動画の音声を聴きたい、聞き慣れた曲をBGM程度に、耳をふさがずに聴きたいといった用途はしっかり果たします。

オーディオグラスのLinse Liteはもっとシャカシャカ感が強め。各社の最新オープンイヤー型イヤホンが低音の迫力や中高音の解像度も含めて驚くほど進化している現状ではなんともノスタルジックな感覚ですが、こちらも使いどころ。

両モデルともメガネ型・オープン型なので、耳栓が欲しいときや耳を塞いでも良い音で楽しみたいときはインイヤー型のイヤホンと両立します。

Linse の価格は5万5000円、Linse Lite は1万9800円。度付きレンズ対応はどちらもプラス6200円から。

オーディオグラスは2000年代のOAKLEY THUMPや、孫正義氏が黒サングラスで会見に現れた姿も懐かしいO ROKR など、ある意味枯れた分野です。物々しいサングラス型で細々と売られるニッチだったのが、数年前にはHUAWEIのEyewear シリーズが一般的なメガネに近いスタイルで話題になったり、つい最近もシャオミのライフスタイル寄りブランドMijiaから発売されるなど、新製品が続いています。

顔にマウントする製品としては、目と耳に近いこと、AIに人間に近い視覚と聴覚を与えられることから、またスマートフォン向け技術の発展応用で次々と製品の可能性が広がっていることから、今後もメガネ型デバイスは加速するはずです。

眼鏡市場のLinse は仕様こそシンプルですが、特にカメラつきメガネが全国130店舗で販売されることで、メガネ系デバイスがガジェット好きやテック趣味だけのものではないメインストリームになる段階を加速してくれるかもしれません。



《Ittousai》

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