ドコモは2025年末の「コミックマーケット107」(コミケ)で、ネットワークの混雑対策を公開しました。
コミケは、来場者が大量かつ密集した状態で通信も発生しやすいイベント。ネットワーク対策の鬼門とも言われているだけに、各社とも移動基地局車を出したり、臨時の基地局を設置したりと、対応には力を入れています。

▲ドコモはコミケでのネットワーク対策を一部報道陣に公開した。写真は会場内に掲げられた横断幕
例年、ドコモはコミケ対策を公開していたものの、実際に来場者が待機している会期初日にぶつけてきたのは初めて。ここ数年、対策は施したもののその想定を超えるユーザーが集まっていたこともあり、Xを中心としたSNSには不満の声も聞かれていました。満を持してメディアへの公開を初日に合わせてきたのは、ドコモの並々ならぬ自信が伝わってきます。

▲ドコモはコミケでのネットワーク対策を一部報道陣に公開した。写真は会場内に掲げられた横断幕写真は西待機列に並ぶ来場者。これだけの密度になるため、各社とも品質対策には頭を悩ませている
コミケ対策としてドコモが実施しているのは、主に4つ。1つ目は、周辺に常設している基地局のカバーエリア調整で、アンテナの角度や出力を調整することで1つ1つのエリアを最適化し、大量の通信をさばける状態にしています。これは、コミケ対策というより、各社が全般的にやっていることです。2つ目のパラメーター設定変更も同様で、エリアのバラつきを減らして周波数を有効活用するというものです。
3つ目が臨時基地局の運用。コミケでは、東駐車場の待機列に合わせて移動基地局車を設置しているほか、持ち運びが容易な「キャリー5G」を設置して、不足する容量を稼いでいます。今回、ドコモは移動基地局車にMMU(Massive MIMO Unit)を初めて搭載。多素子アンテナで、より多くのトラフィックをさばけるようにしています。

▲ドコモはコミケでのネットワーク対策を一部報道陣に公開した。写真は会場内に掲げられた横断幕東待機列の駐車場に設置された移動基地局車。他社と比べてアンテナが低いが、これはよりエリアを狭めてキャパシティを上げるため。待機列までの距離がないため、これでも十分だという

▲ドコモはコミケでのネットワーク対策を一部報道陣に公開した。写真は会場内に掲げられた横断幕その上には、初の3セクター(3方向に向けてエリアを構築)MMUのアンテナを搭載。大容量の通信をさばくための秘密兵器だ
4つ目の対策が周辺基地局への設備増強。4G、5Gの設備を増強するのに加え、今年は5G SA(スタンドアローン)化を進めており、よりキャパシティの大きな5G側にトラフィックを流すことを徹底しています。ドコモによると、5G SAはいったん4Gに接続しなければならない5G NSA(ノンスタンドアローン)とは異なり、直接5Gにつながるため、4G側の混雑の影響を受けないメリットがあるとのこと。

▲ドコモはコミケでのネットワーク対策を一部報道陣に公開した。写真は会場内に掲げられた横断幕西待機列の伸びた行列に合わせて設置した臨時の基地局
また、5G SAのトラフィックが増えると必然的に4G側が空くことになるため、4Gのみでつながっているユーザーや4Gを経由して5Gにつながる5G NASのユーザーにもメリットが出てきます。今回のコミケでは、西待機列の伸びた先(青海駅へ向かう行列の途中)で課題になっていた場所に臨時の基地局を設置することができ、通信の混雑を解消できているといいます。

▲ドコモはコミケでのネットワーク対策を一部報道陣に公開した。写真は会場内に掲げられた横断幕4Gを経由せず、直接5Gに接続する5G SA。4Gの混雑状況に影響を受けないのがメリットだ
実際、5G SA化の効果は如実に出ており、西待機列でスピードテストを実施したところ、5G NSAは1.8Mbps程度だったのに対し、5G SAでは130Mbpsを超える速度が出ており、安定して通信をすることができました。参考として他社を計測してみたところ、周波数の割り当てが少ない楽天モバイルはタイムアウト。ネットワーク品質でNO.1をうたっているKDDIも、UQ mobileはタイムアウトしてしまい、速度を計測できませんでした。

▲ドコモはコミケでのネットワーク対策を一部報道陣に公開した。写真は会場内に掲げられた横断幕左がNSA、右がSA。ともに西待機列の臨時基地局設置エリアで測定したもの。SAの効果が如実に出ている
なお、auでは低速ながらも通信ができていたため、もしかしたらauの料金プラン向けに適用している「au 5G Fast Lane」の優先制御が効果を発揮していたのかもしれません。ソフトバンクも通常よりやや遅めながら、通信はできていました。一方で、100Mbpsを超えるのはドコモだけ。各社共通で課題になっていたエリアまで対策を施すことで、名誉挽回を狙っていることがうかがえます。

▲ドコモはコミケでのネットワーク対策を一部報道陣に公開した。写真は会場内に掲げられた横断幕上記のエリアは各社が対策に苦戦しているようで、5G SA契約のUQ mobileや、NSAしかない楽天モバイルは速度測定ができないレベルまで品質が悪化していた
西側エリアでの計測後は会場を抜けつつ、東の待機列が伸びている駐車場まで移動しました。筆者は手持ちのドコモ回線で、その間もちょこちょこXをしたり、スピードテストをしたりしていましたが、特に通信が詰まることなく、快適に利用できました。画像のアップロードなどにも特段問題がなく、むしろ、これは都心部の普段以上では……と思えたほど。5G SAの実力をいかんなく発揮していた印象です。

▲ドコモはコミケでのネットワーク対策を一部報道陣に公開した。写真は会場内に掲げられた横断幕東待機列での通信速度。こちらはNSAとの差が少ないものの、SAの方が速度が出ていることが分かる
この効果を来場者にも体感してもらうべく、ドコモはコミケ会場内に「コミケは5G SA 令和の新スタイル」と銘打った横断幕を大々的に掲げていました。実はこのメッセージも年々進化しており、昨年は5Gを有効にすることを呼び掛けていましたが、今年から、それが5G SAに変わった格好。対策に合わせて、ユーザーに向けたメッセージもアップデートしています。
もっとも、この部分はドコモの課題にも直結しています。いくら5G SAが優れていても、それを使えるユーザーが限られているからです。厳密に言えば、対応端末や回線は広がっていますが、ドコモの場合、5G SAはユーザー自らが進んで契約しなければならないオプション扱い。対応端末や対応するSIMカードを契約した場合、自動で有効になる他社とは異なり、ユーザーがあえてショップやmy docomoで申し込む必要があります。
そのため、かなりの逸般人でないと5G SAを契約していない状況。これは5G SA対応端末を持っていたとしても、です。5G SAは無料なものの、これはあくまで終了期間未定のキャンペーン扱い。一応は有料オプションのため、ドコモ側が勝手に変更できない形になっています。5G SAエリアがかなり限定されており、そのメリットが明確ではなかったことも、ユーザーに積極的な案内をしづらかった要因の1つと言えます。

▲ドコモはコミケでのネットワーク対策を一部報道陣に公開した。写真は会場内に掲げられた横断幕ドコモの5G SAは、ユーザー自らがオプションを有効にする必要がある。画像はmy docomo
とは言え、ドコモも5G SAエリアは急ピッチで拡大しており、上記のようにネットワークのひっ迫に対して有効に作用する側面は多々あります。コミケでメッセージを出すのもいいのですが、どちらかと言えば、自動でオンになるような契約の仕組みづくりの方が必要になりそうです。
今回はコミケ限定で一時的に人が集まる場所の対策でしたが、こうした歯車がうまくかみ合い、それを全国に広げていければネットワークへの不満が解消されるかもしれません。昨年末の取材でしたが、ドコモのネットワークに光明が見えてきた印象を受けました。









