あなたがSunoだと思ってサブスクしているそのAI作曲サービスの正体(CloseBox)

テクノロジー AI
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

音楽生成AI、特にSunoについて人に教えることが多いのですが、このところ立て続けに奇妙な出来事に遭遇しています。電話やメッセンジャーでのやり取りで、「この機能について教えてくれ」と言われて、手元のSunoアプリ(モバイル)やWeb版を見ながらやり方を教えているのに、「そんなボタンやメニューはない」と言うのです。

「そのサービスのURLを調べてください。suno.comになっていますか?」「アプリのアイコンはオレンジ色で白抜きでsunoと書かれてますか?」

確認してもらうと、サブスクしているサービスはSunoではなくて別物。これまで何度もそんなことが起きています。

理由は明白で、Googleなどの検索サービスやアプリストアで「Suno」でヒットした最上位に本物のSunoが来ることはまずないからです。要するにスポンサー広告のリンクを掴まされてしまったというわけ。

Google、DuckDuckGo、Bingも全滅です。Sunoというキーワードは競合サービスが確保しているのでしょう。ちなみに、カタカナの「スノー」でも上位は偽物の方。本物のSunoは現在は「スーノ」と呼んでいます。

いくつかある偽物Sunoの中でも、Mureka自体は悪いサービスではありません。APIに違法アクセスして作曲できるとでっち上げていたLoudMeなどと異なりちゃんとした独自モデルで、この連載でも一度取り上げていますし、その後もバージョンアップを続けていて(バージョン8)、現在ではボイスクローニングをサポートしているなど、Sunoより高機能な面もあります。

だけど、ユーザーがそのサービスをSunoだと思って使っている場面を何度も見ている筆者としては、注意を喚起しておかねばなりません。

「あなたがSunoだと思って使っているそのAI作曲サービスの正体を知っていますか?」と。


Web検索もアプリストアも信用できません。アプリタイトルがSunoになっていても違う場合があります。ダウンロードする前に、デベロッパーを確認するようにしましょう。

Suno, Inc.となっていればOKのはずです。

この注意喚起をしなくちゃならんと思ったのは、とある会話から。

最近Sunoで作った曲を頻繁にアップロードしていて、「これいいでしょ?」と教えてくれる友人がふと、こう言うのです。「バージョン8はさすが、いい出来だね」

Sunoの最新バージョンは5で、無課金ユーザーは4.5。バージョン8などは存在しません。ピンと来た筆者がURLを確認してもらうと、「Murekaという別のサービスだった」というのです。

そういえば、それ以前にも「カラオケみたいな動画表示ができるので、それを使ってミュージックビデオ作ってるんだ」と話していました。Sunoの動画生成にはバグがあって、歌詞に抜けが生じるのでおすすめはできないのですが、その話をしてもピンとこない様子でした。

コンピュータ技術の専門家であっても引っかかってしまう。ならば一般の人が本物のSunoにたどり着くのはもはや難しいのではないでしょうか。

1年近くMurekaユーザーでいる筆者はずいぶん使っていなかったので久しぶりにアクセスしてみたら、月額30ドルのPremier会員でした。4600円を毎月払っていたわけか……。

せっかくなので、曲を作ってみました。悪くはないけどメロディアスさにはちょいと欠ける感じ。最初の頃と比べるとだいぶ良くはなっていますが。

30ドルのプランでは、シンガーの声を登録することが可能です。僕は妻の歌声を登録してあって、それらしい声で歌ってもらうことができます。ただ、生成される歌声は本人とトーンは似ているけれども、本人だと思い込めるレベルには至りません。そこは、RVCでちゃんと学習させたボイチェンの方がそれらしく聴こえます。

ステム分離も可能ですが、分離できる楽器パートは最小限であり、Sunoの12パートには遠く及びません。同じ価格であれば、Sunoの方が圧倒的に良い曲を生成できるし、それ以上の使いこなしができる機能が満載です。

それにしてもMurekaのSunoコピーキャットぶりは、一見区別がつかないレベルです。SunoのWeb版は日本語化されていないのでそれとわかりますが、明らかに寄せてきています。

違いはボタンの色がオレンジ(Suno)か紫(Mureka)か、くらい。では、同じ歌詞、プロンプトでSunoならどういう曲になるか試してみることに。

そしたら、「トークンの検証に失敗しました」というアラートが出て、生成できません。困りました。今日はSuno Studioを使って進めなければならない新曲のプロジェクトがあるのです。

偽物は生きているのに本物が使えないという状況。

Discordのバグフォーラムでも話題になっており、執筆時点では未解決。モバイルアプリでも生成できなくなっています。あまり一つのサービスに依存するのも良くないですね。代替案は持っておかねば。

曲を作るだけならば、オープンソースのACE-Stepがバージョン1.5になってだいぶ改善されたようです。こちらもSunoっぽいWeb UI実装が複数生まれていて、WindowsでもMacでもローカルで生成できます。

同じ歌詞とプロンプトで生成してみました。1分のみですが、ビジュアライザービデオも生成できます。レファレンス音声の自由度が高いので、これも便利に使えそうです。

間違えるほどの類似性を持っているので、MurekaにはSuno Studioに相当するような高機能なAI DAW機能を実装し、ダウンしたときの代替役を果たしてくれませんかね。

《松尾公也》

松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

BECOME A MEMBER

『テクノエッジ アルファ』会員募集中

最新テック・ガジェット情報コミュニティ『テクノエッジ アルファ』を開設しました。会員専用Discrodサーバ参加権やイベント招待、会員限定コンテンツなど特典多数です。