みなさんこんにちは、香港在住の携帯電話研究家、山根康宏です。スマートフォンでAIアシスタントを使うことが当たり前になった今、ドイツで格安「AIスマートフォン」が8月に発売されました。ドイツテレコムが自社ブランドで販売する「T-Phone 3」です。私は9月いっぱいドイツに滞在していたので現地で購入してみました。

T-Phone 3は単体価格が149ユーロ、約2万6000円と誰でも手軽に買えるスマートフォンです。スペックはチップセットがQualcomm Snapdragon 6 Gen 3、ディスプレイは6.6インチFHD+、バッテリーは5000mAh。カメラは5000万画素+200万画素マクロ。これといった特徴はありません。

側面の電源ボタンは赤色で、これがAIアシスタント呼び出しボタンになっています。ほかのAndroidスマートフォンも電源長押しなどでグーグルのGeminiを起動できますね。

T-Phone 3はGeminiも利用できますが、ドイツテレコムはPerplexityと提携、購入者にはPerplexity Proの18ヵ月間のサブスクリプションが無料で付属します。T-Phone 3の設定画面にもAIアシスタントをどちらにするかの設定がありますが、本体購入後の設定中にデフォルトでPerplexityを選ぶようになっていたと思います(スミマセンうろ覚え)。

さて実際の使い勝手は、電源ボタン長押しでPerplexityが起動、音声で質問や検索したいことを問いかけると、画面に表示されます。

また、ロック画面でも画面上にPerplexityの起動ボタンが表示されているので、画面タッチからでも呼び出せます。意外とこれも便利。本体の持ち方や机の上に置いているときなど、電源ボタンは押しにくいことがありますからね。

T-Phone 3はドイツと周辺国のドイツテレコム(T-Mobile)がサービスを提供している国で販売されます。そのためか端末の言語設定に日本語はありませんでした。ちなみに製造はベトナムのLuxshare-ICT。同社はアップル製品のベトナムでの製造も請け負っています。

英語メニューでの利用になりますが、Perplexityの設定は端末とは無関係であり、日本語が使用できます。そのため音声での問いかけも日本語が使えました。使ってみると、ドイツ滞在中だったこともあり、電車の時刻を調べてカレンダーに追加したり、レストランを検索して地図を表示する、などなどかなり便利に使えました。

ただしクラウド経由の反応なので、音声による問いかけに対して数秒、時には10秒程度待たされることがあります。それでも文字を打たずに質問できるのは便利(ちなみにこのT-Phone 3は、買ってから日本語入力の設定はしていません)。
さて、ここまでを読んで多くの方が「スマホでPerplextiyを呼び出しただけでしょう?」と感じるでしょう。しかしT-Phone 3の存在意義は、そこではありません。

まず、2万円台という価格です。ポストペイド契約の場合は無料で入手することもできます。スマートフォンそのものにあまり興味が無く、SNSと検索と日常写真が撮れればいいというライト層でも手軽に買える端末なのです。そして、このような格安スマートフォンであるにも関わらず、AIアシスタントを使うことを第一に考えたUI設計がされているのです(各機種で同じ電源ボタンの利用+ロック画面のショートカット、ボタンですが)。

さらに無料版のPerplexityではなく有料版を18ヵ月使うことができます。Pro版なら画像アップやマルチモーダル検索も制限なく利用できます。もしも制限のある無料版を提供した場合、最新知識に詳しい人(つまりここを読んでいる読者の方々など)はPro版に切り替えたり、ほかのAIアシスタントを探す、ということをするでしょう。
しかし、そのあたりを詳しくない一般的なユーザーなら、アシスタントを使って制限にぶち当たってしまったら、面倒と感じて二度と使わなくなってしまうでしょう。高性能なスマートフォンを求めない層こそ、実はProサービスを提供するべきなのです。

このようにT-Phone 3は「AIアシスタントを日常生活の中で毎日普通のサービスとして使うための端末」なのです。高性能なカメラやハイエンドゲームをプレイするユーザーは、素直にiPhoneでもGalaxyでも高性能な端末を買うわけですから、T-Phone 3のターゲットユーザーではありません。

ドイツ滞在中はテストもかねてT-Phone 3を使ってみましたが、スマートフォン性能の低さを気にしないくらい、頻繁にアシスタント機能を使いました。そして2万円台で買ったスマートフォンでも日常生活サポート用途として十分実用的であることも実感しました。
ドイツテレコムは性能の少し高い「T-Phone 3 Pro」も販売予定で、そちらも気になっています。