みなさんこんにちは、香港在住の携帯電話研究家、山根康宏です。数十万円から上は数百万円という超高級スマートフォンを展開しているVERTU(バーチュ)から、最新の折りたたみモデル「QUANTUM FLIP」が登場しました。

まずはスマートフォンとしてのスペック。チップセットはSnapdragon 8 Elite、ディスプレイは開いたときが6.9インチ 2790×1188ピクセル、外画面は3インチ 682×422ピクセル。メインカメラは5000万画素、フロントカメラは3200万画素です。バッテリーは4300mAh。

特徴的な外画面とカメラの配置やディスプレイサイズから察するに、ベースモデルはZTE傘下のnubiaの「nubia Flip 2」と思われます。というのもVERTUの初代縦折モデル「IRONFLIP」もベースは「nubia Flip」と推測されるからです。VERTUは横折スマートフォンでは今は亡きRoyle(ロヨレ)のモデルを採用していましたが、縦折モデルではZTE / nubiaと協業しているようです。

QUANTUM FLIPは本体仕上げに4つのバージョンが存在します。CARBONはカーボンファイバーボディーのベーシックモデル。CYBERはチタン合金仕上げがクールな印象。AGATEはその名前の通り天然の瑪瑙(めのう)を背面に配置し、天然素材ならではの1つ1つことなりデザインが特徴。そしてワニの本革を採用したALLIGATORは価格も最上位のプレミアムモデルです。

高級感だけが売りのスマートフォンと思われがちですが、QUANTUMの名前が付くように量子暗号化技術を搭載しているとのこと。量子鍵を用いた暗号化技術でデータや通信の安全性を強化。これはSnapdragon 8 Eliteの機能を使っているようです。また、仕事、生活、プライバシーと3つの独立したシステムの切り替えでデータを保護、それぞれは量子キーでアクセス管理が行われます。ほかにも端末の紛失時など「ミリ秒単位」でデータを自動消去するセカンドレベル自己破壊機能も搭載しているとのこと。ターゲットユーザーが企業のトップクラスなどであることから、安全性を強化したシステム設計を行っています。

AI機能も特徴の1つ。こちらもSnapdragon 8 EliteのNPU性能を活用しており、AIカメラ、AI音声・画像認識、AIリアルタイム翻訳が可能。写真や動画から重要シーンをAIが自動抽出を行います。そしてVERTUのコンシェルジェサービスにもAIが活用され、2000人分の専門家・アシスタントが常時待機するバーチャルAIサービスが利用可能です。

価格はCYBERが4910ドル(約71万2000円)から、CYBERが5700ドル(約82万7000円)から、AGATEが6350ドル(約92万1000円)から、ALLIGATORが6670ドル(約96万8000円)から。さらにALLIGATORの最上位モデルは本物の金もあしらったボディーで2万1900ドル(約307万3000円)。もはや貴金属扱いであり、一般人が買うものではありません。

こんな高いスマートフォンを買うユーザーが、実際にいるからVERTUは現在もビジネスを継続しています。「スマートフォンは性能が命」という考えがまだまだ多くありますが、それは正しくもあり、正しくもありません。高級自動車、高級ファッションが世の中に存在するように、スマートフォンにプレミアム感を求める人もいるからです。

日常的に使うツールとなったスマートフォンを性能だけで語られる時代ではもうありません。例えばNothing Phoneのアプローチもその1つです。VERTU QUANTUM FLIPの実機を実際に見ることは困難ですが、ぜひともその質感や使い勝手を一度体験してみたいものです。