みなさんこんにちは、香港在住の携帯電話研究家、山根康宏です。2026年3月2日から5日まで、スペイン・バルセロナで世界最大の通信関連イベント「MWC2026」が開催され、多数のスマートフォン新製品が展示されました。MWCの直前にはサムスン、ファーウェイ、シャオミ、HONORがスマートフォン新製品を発表。「スマホの祭典」にふさわしい今年のMWCだったと言えます。

MWC2026で展示されていたスマートフォンからは、共通したトレンドが見て取れました。それは「AI」と「変態」。まるで相反するようなこの2つのキーワードが、2027年以降のスマートフォンでは標準的な機能として実装されるかもしれません。

◆エージェンティックAIがスマホの使い方を変える
まずはAI機能から。スマートフォンへのAIの搭載は、サムスンが2023年に「Galaxy AI」を提唱してから、Nothingの「Essential Space」など各社が新しい機能を次々と搭載してきました。スマートフォンのAI機能は画像の生成や文章の要約といった「生成AI」、そして従来のチャットボット的などユーザーの指示に応じて単発のタスクをこなす「エージェントAI」の搭載が当たり前になりつつあります。

2026年のMWCではAIがさらに進化し「エージェンティックAI」へと軸足を移し始めていました。ユーザーの意図を先回りしながら、必要に応じて最終的なアプリ操作まで肩代わりするモデルが複数登場していたのです。その代表例で、現時点で最も進んだエージェンティックAIを搭載するモデルがZTE傘下、nubiaの「M153」です。

M153は現在中国のみで販売されているスマートフォンですが、特筆すべきは中国版TikTokの親会社、バイトダンスが開発したエージェンティックAI「Duobao(豆包)」をOSレベルで搭載しています。単純にAIアプリをインストールしたのとは異なり、スマートフォンの表示画面を直接操作することもできるのです。実際にMWC2026の同社ブースでは以下のデモが行われていました。もはやアプリを使う必要性がありません。

・音声でレストラン予約:「近くで今夜19時に空いているレストランを4名で予約して」と指示。レストラン検索を行い予約可能な店であれば自動的に予約。さらに場所までの地図を表示し配車アプリの予約画面も開く。
・クロスアプリでの価格比較ショッピング:「ある商品をいくらで買いたい、いつまでに配送」と指示。ECサイトを複数検索し、価格や条件を選び購入フローを進行。ユーザーのやることは「購入」ボタンを押すだけ。

またドイツテレコムは「AIスマホ」を謳う「T-Phone 3」「T-Phone 3 Pro」を展示。これらはすでに昨年から販売されています。ただこれらモデルのAIはPerplexityのプリインストールと指定期間無料という、AIアプリをインストールしたレベルの製品です。

本命となるのはT-MobileのエージェンティックAIを搭載したスマートフォンですが、現在開発中のものが実際に操作可能な状態で展示されていました。端末側エージェント(Perplexityベース、OS統合レイヤー)が旅行、買い物、翻訳などをアプリを意識せず対話で完結可能で、さらにネットワーク側に用意されたエージェントAIも併用し、通話中にリアルタイム翻訳や要約も可能としています。このサービスはデバイス非依存でも動作可能で、2026年中に1000ユーロ以下で対応スマートフォンを発売を予定とのこと。

HONORがデモを披露した「Robot Phone」も、将来的なエージェンティックAIを見据えた英品です。本体背面のカメラにはアームがつながっており、カメラを起動するとジンバルカメラのように自在に動きます。さらにはAI機能と連携し、カメラのヘッド部分がロボットの顔のように動くのです。Robot Phoneの名前はここからきています。

Robot Phoneはマルチモーダル認識により、人や被写体の位置や動きを追いながらシーンを理解し、ビデオ通話ではユーザーが立ち上がって歩き回っても自動追尾とフレーミング調整で“撮られていることを意識させない体験を実現します。さらにうなずきや首振り、音楽に合わせたダンスといった感情的なボディランゲージを返すことで、ユーザーに寄り添う小さなロボットのようなキャラクター性を持ったAIデバイスになるのです。

HONORはAIロードマップとして、ユーザーの意図を推定して横断的に操作を肩代わりする「オンデバイス・エージェント」構想を持っています。今後HONORのスマートフォンにエージェンティックAIが搭載されたとき、Robot Phoneの自在に動くカメラユニットは「人に寄り添うAI」を体現する機能として注目を集めるでしょう。なおHONORはヒューマノイド型AIロボットも開発中で、連携も行われる予定です。

サムスンが発表したばかりのGalaxy S26シリーズもエージェンティックAI機能を強化しています。同社ブースでは、Galaxy S26シリーズの新しいGemini連携機能、進化したBixby、そしてNow Nudgeという、3つのエージェンティックAIを謳うGalaxy AI機能が集中的にデモされていました。

◆「変態スマホ」は市民権を得るか
いわゆる変態スマホとは、標準的でない形状やギミックを備えた端末のこと。HONORのRobot PhoneはAIスマートフォンを謳いつつも、本体背面からジンバルカメラが飛び出すという、変態ギミックを搭載したモデルです。
筆者はHONORブースを連日取材していたので、いまやこのギミックも当たり前かなと感じるのですが、同ブースを初めて訪れた人たちは「これはなんだ?」という目でRobot Phoneを見ていました。

MWC2026で最も注目を集めていた変態モデルはTECNOのコンセプト、モジュラーフォンです。4.9mm圧の薄型スマートフォンの背面に、テレコンモジュール、レンズ交換式カメラモジュール、高音質スピーカーモジュールなどを自在に装着可能。バッテリーも薄型のものを数枚重ねて搭載できます。

合体式スマートフォンは何社もが失敗を繰り返してきていますが、TECNOとしてはむしろウェアラブルデバイスの開発とスマートフォンとの連携のために、このような技術を開発しているのだと考えられます。

合体式ではRugOneの小型カメラ内蔵モデル「Xsnap 7 Pro」も話題でした。マグネット式で取り外せる立方体型のカメラは自由なアングルでの撮影が可能。カメラを自在な位置で使えるモデルとして実用性はありそうです。

さらにODMメーカーのFrog Mobileは正方形型画面にスウェブル式のQWERTYキーボード、ゲームパッドを取り付けたモデルのモックアップを展示。AIスマートフォンとして普段は正方形画面を使い、文字入力やゲームユーザー向けにキーボードも使えるようにしたアイディアは、AI時代ならではの設計。どこかのメーカーからの発売が期待されます。

このようにMWC2026では来年以降のスマートフォンが「当たり前」として搭載されている機能を見ることができました。変態のほうはどうなるかわからないものの、これからも今までのスマートフォンの形状にとらわれない、新しいスタイルのモデルが出てくることでしょう。









