ANAはフランスで開催中のパリ・エアショー 2025にて、国際線中型機ボーイング787-9向けの最新ドア付き個室型ビジネスクラスシート「THE Room FX」を2025年6月17日に発表。同シートはANAと航空機シートメーカー大手のSafran Seats、イギリスのデザイン会社Acumen Design Associateの協力のもとで開発されました。

THE Room FXは、大型機ボーイング777-300ERに導入されている「THE Room」と同等のシームレスな顧客体験を提供することを目指して開発。2026年度以降、ANAの長距離国際線の主要路線に採用されているボーイング787-9に順次導入されます。ANAの中型機のビジネスクラスシートの刷新は約10年ぶりです。

▲左からANA上席執行役員CX推進室長 大前圭司氏、ACUMEN CEO Ian Dryburgh氏、Safran Seats CEO Victoria Foy氏
新シートのネーミングにあるFXは「Future Experience」の略で、シンプルなメカニズムにより、椅子、ソファ、ベッドの3つのスタイルを自由に選択できる点が特徴。大型のサイドテーブルと快適なベッドスペースを備えています。


設計面では、個室ドアや壁を薄型化し、背もたれに曲線ラインを採用。また、座席を前後の向きで互い違いに配列することで空間を再構築しています。これにより、中型機であるボーイング787でも大型機並みの空間体験と世界トップクラスの居住性を実現。ちなみに後ろ向きの席のほうが若干広いとのこと。


現行シートと比較して横幅がさらに広くなり、あらかじめ背もたれをリクライニングさせたプリリクライニング方式を採用。背もたれは倒れないものの、クッションなどを利用すれば、リビングのソファのように自由な姿勢で過ごすことが可能です。レッグレストを水平にすることで、ソファからベッドへの移行もスムーズ。


機能面では、現行シートの1.4倍となる24インチHDモニターを搭載し、十分な収納スペースを備えています。電源設備としてUSB Type C充電、ワイヤレス充電、USB Type A充電、AC電源が利用可能。また、Bluetoothオーディオ接続にも対応しています。


ただし、現行のTHE RoomにあったHDMI入力機能はありません。担当者によると乗客がケーブルを用意する必要があるのと、今後はインターネット接続の高速化により、ホテルにあるスマートテレビのようにオンデマンドサービスを飛行機にも導入できる未来がくるのではという予測もあるとのことです。


「THE Room FX」は、個室ドアや背もたれ、座席間のディバイダーの薄型化により座席の軽量化が図られ、現行ボーイング787-9ビジネスクラスシートと同水準の重量に抑えられています。シートの仕様として、シートピッチは103インチ(約2.6m)、座席配置は1-2-1の4アブレスト。シート寸法は最大長が約194cm(76.5インチ)、横幅が最大約105cm(41.5インチ)、腰元は約69cm(27.0インチ)となります。ボーイング787-9長距離国際線仕様機における座席数は、ビジネスクラス48席、プレミアムエコノミー21席、エコノミー137席の合計206席と予定されています。