クラファン締切迫るオートフォーカス・アイウェア「ViXion01」ほぼ製品版で実力をチェックする(西田宗千佳)

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西田宗千佳

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フリーライター/ジャーナリスト

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1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。

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クラファン締切迫るオートフォーカス・アイウェア「ViXion01」ほぼ製品版で実力をチェックする(西田宗千佳)
  • クラファン締切迫るオートフォーカス・アイウェア「ViXion01」ほぼ製品版で実力をチェックする(西田宗千佳)
  • ▲ViXion01。クラウドファンディングは9月30日まで
  • ▲正面から見ると、眉間の辺りにオートフォーカス用カメラがあるのがわかる。ここを見たい方向に向ける
  • ▲本体を内側から。丸く見えるのがレンズ部。直径は5.8mmしかない。
  • ▲屋外に出てかけてみた。かなりSFなルックス
  • ▲こんな風に閉じれば電源は切れる
  • ▲付属のケース
  • ▲鼻パッドはやわらかいのでかなり自由に調整可能。丸いレンズ部は左右に動くので、自分の目に合わせて位置を変える

オートフォーカス・アイウェア「ViXion01」のクラウドファンディングが、もう少しで締切を迎える。

製品版に限りなく近いものをいち早く借りることができたので、「実際どんなものなのか」を、生活の中で使いながら試した結果をお伝えしたい。

▲ViXion01。クラウドファンディングは9月30日まで

すごく便利なデバイスなのだが、主にセッティング・キャリブレーションにクセもある。その辺のコツもお伝えしたい。

オートフォーカスで眼のピント調整を支援

まずは基本的なところから。

ViXionはメガネレンズなどの光学機器製造でお馴染みのHOYAからスピンオフした会社で、アイウエアの開発を行っているスタートアップだ。だから、技術的なバックグラウンドはHOYAにある。

ViXion01はその技術を使い、自分の目で焦点を調整しなくても、機械がそれを助けてくれる「オートフォーカス・アイウエア」として誕生した。メガネと同じように見やすさを助けるものではあるが、医療機器認定を受けているわけではないので「メガネ」そのものではない。「次世代メガネ」的な紹介をされることがあるが、その辺、厳密に言えば違うのでご注意を。

なぜ「メガネそのもの」ではなく「アイウェア」なのかというと、技術的特性から、100%どんなシーンでも使えるわけでないからなのだが、まあその辺は、後ほど述べるとしたい。

仕組みは、言葉で説明すると意外と簡単だ。

眉間の辺りに赤外線を使ったオートフォーカス機能があり、それに合わせてレンズの厚みが瞬時に変わってピントが合う。使っているのは透明なポリマーが充填されたいわゆる「液体レンズ」で、反応は素早い。オートフォーカスというと、デジタルカメラの「ギュイッ」という感じで焦点が合う印象を持つが、もっと素早くて違和感が小さい。

▲正面から見ると、眉間の辺りにオートフォーカス用カメラがあるのが分かる。ここを見たい方向に向ける

レンズも小さいし大きな電力が必要というわけでもないので、バッテリーはかなり長持ちする。連続使用最大10時間、とされているのだが、気がついた時にUSB Type-Cケーブルに、数十分も差し込んでおけば十分、という感じだ。

▲本体を内側から。丸く見えるのがレンズ部。直径は5.8mmしかない

以下はクラウドファンディングのサイトに掲載されているイメージ動画だが、実際かけてみても、この通りの動きをする。

▲ViXionが公開しているイメージ動画。だが実際こんな風にフォーカスが変わる

メガネをかけている人ならよく分かるだろうが、これはけっこう画期的なことだ。「視力が衰える」という場合、たいていは「見ているものまでの距離に合わせてピントを合わせる能力が衰える」ことを指す。老眼で近くが見づらくなるのも、近視で遠くのものがぼやけて見えるのも同様だ。

メガネではそこにレンズを入れて「ある範囲はちゃんと見えるように補正する」わけだが、ViXion01の場合には、オートフォーカスで広いレンジのピントを正確に合わせにいく、という感じである。

その原理上、乱視の補正には対応しない。乱視は「光軸のずれ」が問題であり、レンズの厚みを変える形でのオートフォーカスでは改善できないからだ。

逆に言えば、「メガネ」でない理由は、オートフォーカスのためには「見たい方向に眉間を向ける必要があること」であり、「レンズが小さいので視野が狭くなる」ためである。

この辺の特性が分かっていれば、特に問題はない。

外観はSFチックなグラス、フォーカスは機敏に調整

もうちょっと外見をしっかり見てみよう。

前述のように、レンズ部が小さい(直径約5.8mm)ので、本体はなんというか、細長い。X星人かラフォージュか……という感じではある。まだ「メガネではない」ので、こういう特異なデザインである方がよかろう。

▲屋外に出てかけてみた。かなりSFなルックス

かけ心地は悪くない。重量は55gで、いわゆるヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)よりはずっと軽い。メガネの平均的な重量は35gと言われているから、そこまで大きな違いはないだろう。かけ方もメガネと大差ない。

電源はツルの開閉で自動的にオンオフされる。「使わないときは閉じる」ことさえ意識すれば十分かな、と思う。

▲こんな風に閉じれば電源は切れる
▲付属のケース

ではどんな風に見えるのか?

ぶっちゃけ視界は狭い。目の前に親指と人差し指で丸を作り、目の前に置いてのぞいた時のような感覚だ。

ただ、オートフォーカスは本当に便利。筆者は老眼が入ってきたので近くが見づらいが、問題なく見える。もちろん、1m先の様子も問題ない。

そのくらいの調整……と思うのだが、ViXion01を外してみると、意外なほど見えていないことに気づいたりもする。

どのくらい機敏にフォーカスが変わっているかは、次の動画を見てもらうのがいいだろう。

これは、ViXion01をサポートするスマホアプリ「01Scouter」の動作を示したもの。現状のViXion01のステータスが分かるのだが、近くを見たり遠くを見たりすると、それに合わせ、中央の「距離」や「レンズ度数」がコロコロと変わっているのが確認できるだろう。このくらいに機敏にオートフォーカスしてくれているわけだ。

30cmほど前のPCの画面も、長く見ていると目の疲れを感じるが、ViXion01をかけて仕事してみると、確かに目の緊張は緩和されたように思う。ただこれは、視界の狭さによる違和感と相殺なので、良し悪しも個人差もあるかもしれない。

周りの人からどう見えるか、という話は別として、かけ続けて負担は低いし、手元と奥を見比べながら作業をする時(具体的に言えば、工作やガンプラ作りなど)にはぴったりだと思う。

やっかいな「調節のコツ」をご紹介

とはいうものの、ViXion01を快適に使うには、ちょっとコツがいるのも分かってきた。

というのは、「オートフォーカスを含めた視度調整を、ちゃんと個人にキャリブレーションする必要があること」であり、「かけた時に快適になるよう調整すること」である。視野が広く、1つの視度にあわせた「メガネ」でも、快適なものを作るには、メガネ屋さんでの調整が必要になる。汎用のViXion01も、調整が自分に合っていない状態で使うと、かなり不満の残る結果になる。

まず重要なのは「顔に合わせた調整」。

中央に鼻を乗せる「鼻パッド」は、心地よい感じを追求する方がいいのは当然だが、できるだけ開き、目とレンズの距離が近くなるようにした方がいい。その方が視野は広くなる。

次に、瞳と瞳の間の距離、いわゆる「瞳孔間距離(IPD)」の調整。これがズレるとかなり不快になる。レンズはそれぞれ動くので、片目をつぶって、それぞれの中央にレンズが来るようにした方がいい。

▲鼻パッドはやわらかいのでかなり自由に調整可能。丸いレンズ部は左右に動くので、自分の目に合わせて位置を変える

で、IPD調整と同時にやった方がいいのが「ピント調整」。1mくらい先にあるものを見ながら、片目それぞれで行う必要があるので、いっぺんにやると効率がいい。

このピント調整がけっこう難題だ。

本体に調整ダイヤルがあり、ボタンを押しながらダイヤルを回すことで調整できるようにはなっているのだが、はっきり言って調整しづらい。また、日によって、用途によって調整をし直したくなるので、それも面倒だ。

▲左右にあるボタンが「それぞれの目のピント調節」になっているのだが、これを押しながらの調節は意外と面倒

そこで出てくるのが前出のアプリ「01Scouter」だ。これを使うと、左右の目でのピント調整をし、その結果をいくつか保存しておける。片目ずつ閉じて、スマホアプリ上で度数のボタンを押しながら調整を行っていくと簡単だ。

▲下部の「キャリブレーション」からピント調整ができる

こんな苦労があるのは確かに「まだ改善の余地あり」というところかと思う。

だが、クラウドファンディング応募者には、「次世代機の割引購入権」も特典となる。まずは今のものを体験し、さらなる未来を予感しつつガンプラでも作りながら待つのがベストではないか、という気がしている。

《西田宗千佳》

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