世界最先端の自動運転を体験。無人タクシーはちょっとドキドキしたけど想像以上に快適だった(スマホ沼)

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山根康宏

山根康宏

香港在住携帯研究家

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みなさんこんにちは、香港在住の携帯電話研究家、山根康宏です。先日、中国の深センに行って自動運転の無人タクシーに乗りました。

今回、利用したのはポニーAIのサービスで、車種はレクサス。この無人タクシーの利用方法などは、ネットに多数の情報が上がっているので今回は省きます。私が無人タクシーに初めて乗り、感じた印象や気付いた点を。

乗車してすぐ、何も言葉を交わすことなく車が走り出すのは不思議な感覚です。しかし、数分も乗っているとその違和感はなくなり「こんなものかな」と思えてきました。ハンドルがあり、勝手に回るため運転手がいないことを意識させられるのですが、もしもハンドルの無いクルマだったら、個室に乗って移動しているだけという感覚になるでしょう。

サービスを提供しているエリアは深センの南山エリア。TCLなど大手企業のビルが並ぶオフィス街だけではなく狭い道を通ることもあり、急な人の横断やバイクが前から横を通ってすり抜けていく状況に何度が遭遇しました。そのたび、無人タクシーはしっかりとブレーキをかけ、速度を落とします。なお、周囲の状況は後部座席のモニターにシルエットとしてリアルタイム表示されるので、状況が一目瞭然です。

ちなみにレクサスにはLiDARが9台、カメラが14台、ミリ波レーダーが4台搭載されています。これらからの情報をポニーAIが開発した車載コンピューターが解析し、周囲の状況に応じて車をコントロールしています。最高速度は時速60Kmでしたが、高速ではもっとスピードが出ます。

道路の合流地点では、不慣れなドライバーならスピードを落としたり一時停止してしまうところを、無人タクシーは速度をやや緩める程度で上手に合流していきます。合流車線後方の車の動きもLiDARで認識しているからです。また、合流車線を高速で走る車が続くときなど、あきらめて合流せずに別のルーティングを再度行なって目的地に向かいます。

乗車中は特に狭い道でヒヤッとすることもありましたが、これは無人運転だからというよりも、深センだからだと思います。狭い路地を走行中、路肩駐車の車が急に出てくることもありましたが、無人タクシーは正確に反応し、対処していました。

一方で弱点にも気付きました。ショッピングモールを目的地にしたのですが、到着目前でモールの乗客用のタクシーの行列に並んでしまったのです。列が進むには10分以上かかるでしょう。カメラが前方にいる車がタクシーであることを認識するだけではなく、モールの防犯カメラと連携し、その車列が動いているのかを判断し、タクシーの列には止まらないといったコントロールが必要です。

ただ、ここで驚いたのは、前のタクシーが動かないと判断(おそらく前方の車列も含めLiDARのデータから動きを判断)すると、無人タクシーがバックを始めたのです。一瞬、「え、大丈夫?」と心配しましたが、LiDARとカメラで後方もしっかりと確認しているので問題ありません。慣れないのでドキドキしましたけどね。

後進はゆっくり少しずつで、後ろから車が来た時はすぐに止まります。お互い自動運転同士だと、より安全なんですけどね。

無事に降車したとき、ホッとしたものの乗車体験は快適で「無人タクシーはこんなに便利だったのか」と思いました。スマートフォンで予約から支払いまで完結する点では、Uberなどの配車サービスがすでに利用されていますが、それとはまた異なる新鮮な体験でした。

まず、運転手がいないので、一切気を遣う必要がありません。Uberだと話好きな運転手も結構いますから。気にしない人や、上手に対応できる人もいるでしょうけど、何も話したくないという時も人間、ありますからね。完全プログラム制御なので(ハッキングなどされなければ)、変なところへ連れ去られてしまう心配もありません。

今回の乗車は20分ほどでしたが、中国都市部での無人タクシーサービスは、自動運転の運転データの取得・解析に非常に有益と感じました。急に出てくる障害への対応は自動運転の実用化において最重要ポイントです。逆に言えば歩行者やバイクなどがほとんどおらず、広い道路を自動運転で走行しても、そのデータは都市部へ反映できません。テスラも自動運転に注力していますが、テストするフィールドを考えると中国企業に分があると感じました。

安全面に関しては、周辺環境への反応速度、ブレーキの利き具合などに問題があるとは感じず、危ないかもと思った時には走行がピタリと止まったり、低速になりました。そのうち窓をディスプレイにして、何かしら映像をリアルタイムに映し出すことで、乗客の不慣れから来る緊張感を緩和できるかもしれませんね。

将来、自動運転が当たり前になることは確実です。しかし、実用化には都市(道路)の再設計など自動車以外のインフラやシステム、法整備も必要であり、「すべての自動車が無人で動く」未来が来るにはまだ時間がかかるでしょう。中国では都市部での自動運転の商用サービスが進み、着々と自動運転、無人運転の技術を積み上げています。日本も遅れることなく、社会実験を増やすなどして自動運転の技術革新のスピードを加速してほしいものです。

《山根康宏》

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