TCLのスマートフォンが少しずつ海外で存在感を高めています。製品のウリは新しいディスプレイ技術である「NXTPAPER」。同ディスプレイを搭載し、2025年1月に発売されたばかりの最新モデル「P10」を上海で見てきました。

P10のチップセットはメディアテックのDimensity 6300、メモリ12GB、ストレージ256GB / 512GBでメインカメラの画質は1億800万画素。5010mAhバッテリーを搭載しています。

NXTPAPERディスプレイは6.68インチで2460×1080ピクセル、リフレッシュレート120Hz。一見すると紙のように見えるマットな外観で、アンチグレア処理に加えブルーライトを50%低減します。また、カラーモード以外にも電子ペーパー風モードを備え、モノクロ表示にすれば最大7日間連続駆動できるとしています。
ちなみにグローバルでは姉妹モデルが「TCL 60」として登場しています。

急に出てきた感のあるTCLのスマートフォンですが、数年前まではアルカテル(Alcatel)ブランドの製品として展開していました。「IDOL」シリーズなど、日本でも一部モデルが販売されていたことを覚えている人は、もうほとんどいないかもしれませんね。

アルカテル最後のスマートフォンは2022年登場の「ALCATEL 1B(2022)」。末期はIDOLなどの製品名を廃し、「ALCATEL」+「数字」と、ブランド名をそのままアピールする型番形式に変更していました。
この型番はアップルやNothingなど成功例はあるものの、マイナーになってしまった製品では逆に特徴が見えにくく、特に多品種展開しているメーカーのモデルとなると「1」と「3」でどちらが高性能なのかわかりづらかったり、といって数字の後にアルファベットを足すといよいよ複雑になるといった悪循環に入り込んでしまいます。ALCATEL 1B(2022)はまさにそのパターンでした。

TCLは家電の大手メーカーですが、家庭用テレビの世界シェアも高く、子会社を多数有しています。スマートフォンを展開していたTCL Communicationもその1つ。また、ディスプレイを開発するCSOTも傘下にあり、最新ディスプレイの開発を進めています。モトローラの折りたたみスマートフォン「razr」シリーズのディスプレイはTCL / CSOT製なのは、よく知られています。

NXTPAPERはTCLが次世代ディスプレイとして開発しているもので、スマートフォンには第三世代、タブレット向けには2025年に第四世代のパネルが採用されています。電子ペーパーのように目にやさしい一方、液晶をベースにしたディスプレイなのでカラー表示は一般的なディスプレイ同等。写真や動画も鮮明に表示できます。

TCLとしてはNXTPAPERをスマートフォンやタブレット、PCメーカーなどへの採用を働きかけるものの、実績の少ないディスプレイということでなかなか採用されません。一方、アルカテルブランドのスマートフォンが衰退し実質撤退した状況の中、TCLのブランドを付けてNXTPAPERの広告塔としてスマートフォンやタブレットを展開しているわけです。海外ではスタイラス入力対応の「TCL 50 PRO NXTPAPER 5G」なども販売しています。
NXTPAPERは目にやさしいので子供向けなど教育用端末にも有意です。日本にTCLのスマートフォン上陸は当面なさそうですが、目の疲れが気になる人には最適なモデルだけに、NXTPAPERを採用するデバイスが登場してほしいものです。