KDDIが「Googleメッセージ」採用を決めた理由 「+メッセージ」併存で分断のおそれ(石野純也)

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石野純也

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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KDDIが「Googleメッセージ」採用を決めた理由 「+メッセージ」併存で分断のおそれ(石野純也)
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 「Gemini 1.5 Pro」「Gemini 1.5 Flash」「Project Astra」などなど、AI一色だったグーグルのGoogle I/Oですが、Androidの新展開として発表されたトピックスの中に、サラッと日本向けのGoogleメッセージに関する言及がありました。

日本ではKDDIと協力し、RCS対応のGoogleメッセージを展開してゆく趣旨の内容です。

 これを受け、KDDIも16日にGoogleメッセージを採用していくことを発表。具体的な時期は明かされていませんが、今後、同社の取り扱う端末にはプリインストールアプリとしてGoogleメッセージが内蔵されていくことになります。

KDDIに確認したところ、同じRCSを採用した「+メッセージ」も廃止ではなく、2つのアプリが併存する形になるようです。

(▲画像:KDDIも、16日にGoogleメッセージを追加採用していく方針を明かした)

 RCSとはRich Communication Servicesの略で、従来のSMS・MMSの発展形として策定された規格です。

キャリア間をまたがるためのプロファイルもある一方で、SMSやMMSとは異なり、相互接続先が限定されていました。

例えば、日本では3キャリア間+そのMVNOではRCSベースの「+メッセージ」でやり取りできるものの、同じRCSを採用するRakuten Linkとは相互運用されておらず、同アプリのみ、日本のRCSからは分断されています。

(▲画像:日本では3キャリアが+メッセージを提供している。デモの写真のように、わずかだが企業アカウントも存在する)

 また、あくまで日本内部での運用になっているため、海外のRCSとやり取りすることもできません。国内ユーザー同士、かつRakuten Link以外とはやり取りができる一方で、「RCS鎖国」状態になっていたと言えるでしょう。

世界各国でも似たような状況がありましたが、グーグルが18年に「Googleメッセージ」でRCSに参戦。グローバルで統一されたAndroidのプラットフォームを提供する立ち位置を生かし、グイグイとRCSを普及させてきた格好です。

 結果として、昨年には月間アクティブユーザーが10億を突破しています。さらにグーグルは、宿敵アップルにもあの手この手で採用を呼びかけ、RCSを業界標準にすることを狙っていました。

この呼びかけに折れたのか、欧州方面からの規制を回避するためかは定かではありませんが、アップルもついにRCSの採用を表明。iMessageと並行し、24年にRCSを提供する方針を明かしています。

(▲画像:23年11月には、アクティブユーザーが10億を突破した)

 アップルのRCSがiMessageにきちんと組み込まれるかどうかはふたを開けてみるまで分かりませんが、少なくとも、間もなく2大プラットフォーマーのOSが、業界標準のRCSでつながる形になります。

大っぴらには書かれていなかったものの、KDDIがAndroidにGoogleメッセージを採用するのも、こうした背景を踏まえたものと考えていいでしょう。

 一方で、KDDIは「+メッセージ」の旗振り役として同アプリを牽引してきた経緯もあり、これを知っていた筆者としては、あっさりGoogleメッセージの採用を表明したことにかなりの驚きを覚えました。

KDDIは「+メッセージ」の提供を継続するものの、Androidに設定できる標準メッセージサービスは1つのみ。Googleメッセージを選択したユーザーは、必然的に+メッセージのRCSからは離脱することになるからです。

(▲画像:Androidで標準設定できるRCSのメッセージサービスは1つのみ。ユーザーの移行による、分断が起きる可能性もある)

 複数のRCSが併存するデメリットとしては、ユーザーがどちらを使っているかによって、料金が変わってしまうことが挙げられます。

例えば 「Googleメッセージ」を有効にしたauのユーザーが、ドコモの友達にメッセージをする場合、相手が「+メッセージ」だと、双方ともRCSベースでありながら相互接続はしていないため、古い形式のSMSで通信することになり、1通当たりの課金になります。

 これはauの友達同士でも同じで、相手がシレッとGoogleメッセージに乗り換えていた場合、これまで使っていた「+メッセージ」でのやり取りができなくなってしまいます。

大手キャリア各社がAndroidの標準アプリとして採用した結果、「+メッセージ」は24年2月に4000万ユーザーを突破しているだけに、しばらくはこうした分断が続いてしまうことになりそうです。

(▲画像:+メッセージのユーザー数は、2月に4000万を突破したばかり。それだけに、KDDIのGoogleメッセージ採用は衝撃が大きかった)

 とは言え、日本の+メッセージのユーザーは、その多くがAndroid端末を使用しています。iOS版も存在するものの、セルフインストールが必要で、iMessageがある中、あえて利用する存在意義が薄いからです。

半数に近いユーザーとは、RCSではなく、SMSを通じたやり取りになってしまっている現状があると言えるでしょう。iOSとの相互運用が可能になることが見込まれているGoogleメッセージに乗っかっておけば、近い将来、こうした問題は解決できます。

旗振り役のKDDIがGoogleメッセージを採用したことで、今後、ドコモやソフトバンクも方針を転換してくる可能性があります。Rakuten Linkで広告収入を上げている楽天モバイルがどう動くかも、注目と言えそうです。

《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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