今回の一連のアップル製品発表での注目は、なんといってもM2 Pro搭載のMac mini登場だろう。
▲2010年のモデルから13年にわたって形状がほぼ変わらないMac mini(2010年だけSuper Driveスロットがある)。外観から識別はほぼ不可能
従来は、M1 Proを搭載するのはMacBook Proだけで、デスクトップ機は搭載していなかった。Mac mini、iMacはM1搭載機のみだし、Mac StudioはゴージャスにM1 MaxとM1 Ultraを搭載している。
▲箱をあけるとピッタリとMac miniが入っている。この他は電源ケーブルが本体下に収められているだけ
しかし、私のようにプロっぽいこともするけど、基本的にはそれほど重い動画や、ヘビーな処理をしないユーザーにとって、一番ピッタリなM1 Pro搭載モデルはなかったのだ。多くの動画編集ユーザーの方にとってもそうではないだろうか? 多くの方は、扱うとしても4K画像を数ストリームだろう。となると8K動画(4Kの4倍のデータ量)を7ストリーム同時に扱うことができるというM1 MaxはToo Muchだ。
というわけで、私はM1 Pro搭載のMacBook Pro 14インチを愛用している。静止画か、動画を扱っても4Kを2~3ストリームがせいぜいの私にとっては十二分のマシン。この1年あまり仕事に使っているが、『遅い』と思ったことは一度もない。
▲Studio Display(21万9800円)と組み合わせるとカッコいいが少々お高い。ディスプレイは手元にあるものを使うのが本来のMac mini流かもしれない。
同様に、キーボードやマウスも、Magic Keyboard(2万5800円)、Magic Mouse(1万3800円)ではなく、すでに持っているものを使ったっていい。スティーブ・ジョブズが2004年にMac miniを発売したときののメッセージ「Bring your own display, keyboard, and mouse」と言ったとおりに。
さらに、M2系列のチップはM1系列よりGPUが強化されているので、ますます動画編集に適している。だから、今回発売されるM2 Pro搭載のMac miniは多くの動画編集をするユーザーなど、一般的なプロユーザーにとってピッタリのマシンのはずなのだ。
ちなみにM2 Pro搭載の最廉価モデルは18万4800円。M2 Pro搭載MacBook Pro 14インチの同スペックのモデルより10万4000円も安い。
なんとあの小さな『ひらP mini』にピッタリフィット
そんな話をしていたら、テクノエッジ編集部の松尾さんが「持ち運ぶのにもいいしね」と言う。
いや、いくらなんでも持ち運びは……と思ったが、松尾さんは自宅と職場(テクノエッジの編集部である技研ベース)の両方にモニターやキーボードがあるから、それが可能なのだという。
たしかに、筆者のMacBook Proも、せっかくXDRディスプレイを搭載しているというのに、ほとんどの場合自宅で外付けディスプレイを接続して、そちらで作業している。キーボードはHHKB、マウスはLogicoolのMX Master 3sだ。つまり、MacBook Proをノートパソコンとして使っているのは、外出時にメモする時ぐらい。それなら、持ち歩くのはiPadだけでもいい。
と話しながら、ふとMac miniを、超小型バッグの「ひらくPCバッグnano」に入れてみたら、なんとピタリと収まる。重さはM2 Pro搭載モデルで1.28kg。それなら、M2 MacBook Air(1.24kg)とほとんど変わらない。
そもそも、ひらくPCバッグnanoはポケット部分を開かないとMacBook Airさえ入らない小さなカバンだ。なのにMac miniはスッポリと収まる。しかも、本機はM2 Proのパワーを持ってるのである。この小さなバッグにこれほどパワフルなマシンが入ることに興奮する。
松尾さんの言う通り、『持って移動できる高性能マシン』として、M2 Pro搭載Mac miniを使うというのはアリかもしれない。
ベンチマークではM2 Pro搭載モデルが非常に優秀
今回発売されたモデルの概要を説明しておこう。
大きくわけてM2搭載モデルと、M2 Pro搭載モデルの2種類。
M2搭載版は、CPUが8コア、GPUが10コア。一番安価なモデルは8万4800円から。
M2 Pro搭載版は、CPUが10コア、GPUが16~19コアで、一番安価なモデルは18万4800円。
M2搭載モデルはThunderboltポートを2つしか持たないが、M2 Pro搭載モデルは4つ持つ。また、前者は6Kディスプレイ1枚しか接続できないが、後者はThunderboltで6K 2枚とHDMIで4K 1枚を接続できる。拡張性がかなり違う。
▲M1、M2は、2ポートしかThunderboltがないが、M2 Pro搭載機は、インテルMac時代と同様に4ポートのThunderbolt 4を持つ
ちょうど、発売前に試用できたマシンはM2 Pro搭載機だったので、GeekBench 5でM2 MacBook Airや、M1 Pro搭載機として、M1 Pro MacBook Pro(14インチモデル)のスコアと比べてみた。
▲さっそく、定番のGeekBench 5をかけてみた。ほぼコア数が示すのと同様の性能を発揮しているといっていいだろう
ちなみに、取材機のMac miniは、M2 Pro搭載、12コアCPU、19コアGPU、16GBユニファイドメモリ、1TBストレージというモデル。CPU / GPUのコア数はMac miniとしては最上位となるモデルだ。購入すると25万4800円。
ベンチマークの結果を非常におおざっぱに言うと、M1→M2の進化はおよそ10~20%の性能向上だが、搭載コア数が増えていれば、その分の性能向上が見込めるという感じ。iPhoneで量産した回路をたくさん積んで、数でスペックを実現していくというアップルの方法論通りのスコアだといえる。
▲M2 Pro搭載のMac miniと、M2搭載のMacBook AirをGeekBench 5で比べてみた
とはいえ、その結果もたらされる性能は、25万4800円のマシンとは思えないほど素晴らしいもので、M2 Pro搭載Mac miniはビデオ編集など、負荷のかかる処理をするためのマシンとして非常にコストパフォーマンスが高いといえる。
また、最廉価MacであるM2搭載Mac miniも、8万4800円からという価格は非常に魅力的だ。
特に、まだIntel Macを使ってる方にとって、今回のMac miniの性能向上幅は非常に大きいので、切り替えの機会になるだろう。今回のモデルチェンジでMac miniのIntel版も消えてしまい、もはやMac Proを残すのみ。MacのApple Silicon化もM2世代に移っているのだ。