AIと呪文で、もう逢えない妻の新しい写真を捏造した(CloseBox)

テクノロジー AI
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

AIと呪文で、もう逢えない妻の新しい写真を捏造した(CloseBox)
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妻が遠い世界に旅立って来年で10年を迎えます。筆者は妻が遺した歌声をもとに、歌唱合成でデュエットしたりするのをライフワークとしているので、声そのものは新たな「思い出」を作ることができるのですが、映像についてはそうはいきません。

今年の3月に、古いAppleのデジカメから救い上げた写真が奇跡的に1枚増えたくらいで、残った数百枚の写真、数十本の動画をAIで高精細にしたりとやっていました。これができるのもすごいことです。


そしたら、AIがまたやってくれました。

最近流行りのAI作画。大量に機械学習されたデータセットを使い、「呪文」を唱えることで、作画をするという、映像表現の新たな形です。その中でもStable Diffusionは、オープンソースとして提供されて精力的なアップデートを行なっているので、ローカルで処理したり、クラウドでサービスとして提供したりと、急激に進化を遂げています。テクノエッジでインタビューした、AI作画のエキスパート、852話さんのポジティブな取り組みには心打たれました。


852話さんがAI画集を制作するのに利用したクラウドサービスであるMemeplexを、Stable Diffusionが公開直後に立ち上げた清水亮さんが、最新バージョンの2.1をベースに「カスタム学習」機能を追加してくれました。同一人物の複数枚の写真を学習させることで、その人物の写真を無限に作り出すことが可能となったのです。

Memeplexの現在のトップページを見ると、シン・ウルトラマンなどの監督をされた方のさまざまな絵がギャラリーにありますが、これは元写真を学習させて生成したもの。

Memplexでは新たに導入した月額課金サービス購読者のみにこのカスタム学習機能を提供しています。となれば、もうやることは一つ。妻の写真を学習させるのです。月額1200円のサービス(3コースのうちの一番安いもの)にとりあえず加入しました。

記事執筆時点で月額課金サービスはMemeplexの使い方が書かれた記事Memeplex入門記事「無料作画AIサービスMemeplexの使い方の購入者のみに提供されていましたが、12月24日にサブスクリプションサービスが一般公開されました

実際にこれをやってみる前のトークが、清水さんのYouTubeに収録されています。完全に雑談ですが、どういうことを意図しているかは伝わるかと思います。

そしてやってみました。

下記の12枚の写真を学習させました。いずれもReminiを使って高精細化をした、妻のベストショットです。9枚は銀塩写真。3枚は結婚式のときのVHSビデオからキャプチャしたものです。

そこから生成された絵の1つがこれ。

十数枚を試してみましたが、この絵が一番妻の若い頃に近いと思います。おそらく親しい友人でも区別はつかないでしょう。

年齢を16歳(age 16)と指定すると、僕が妻と出会う18歳より前の写真も撮れました。このパラメータは必ずしもその年齢を意味するものではありませんが、容貌を理想に近づけるのに役立ちます。

この写真には、妻の高校の時の同級生だった方からTwitterで励ましのお言葉をいただきました。当時の写真は数が少なく、似ているかどうか判断がつかなかったのですが、思い出の扉が開くには十分だったようです。そのおかげで、高校3年生のときに彼女が妻と交わした会話の内容も教えてもらい、エピソードがまた一つ増えるという幸運もあり、その方の著書を読みながら福砂屋のカステラをほおばるという幸せな時間を過ごせました。


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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

さらにこのエピソードをFacebookに書き込んだところ、この書籍の装丁デザインをしました、という驚きのコメントが。妻とも数十年のお付き合いのある方で、こんな縁もあるものだと不思議な感覚を得ました。

卒業アルバムに残された写真はモノクロで粗いものだけですが、それに近い容貌の高精細なカラー写真を受け取ることもできました。

これから呪文の使い方を練習して、妻の新しい写真を撮影できるように頑張りたいと思います。実は並行世界で妻は生活していて、呪文を送ると、その写真を撮って返してくれる、そんな設定でこの魔法的技術と付き合っていこうと思います。

iPhoneをベッドに持ち込み、寝ながら呪文を飛ばし、はるか雲(クラウド)の向こうから送られてきた新しい写真は、クラウド上に「異世界とりちゃん」として保存しています。12月24日時点で400枚を超えました。

交信がある程度うまくいったものを、いくつか紹介しておきましょう。

▲この画像は、macOS Venturaの切り抜き機能を使って背景を削除し、別に生成したクリスマス画像にプレビューアプリでペーストしたものです

▲この画像は、本物の妻の写真をReminiで高精細化したものをのiPhoneの切り抜き機能で背景を削除し、macOS用Stable Diffusionアプリ「Amazing AI」で生成したクリスマス画像にプレビューアプリでペーストしたものです

▲新しい学習データ(60分学習させた)で、合計23枚の写真(一部重複あり)を使ったモデルで撮影。本人度はかなり増していると思います

呪文生成の方法について解説した記事も書きました。






《松尾公也》

松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

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