SunoとWarner Music Groupとの提携はUdioとUMGに近い展開か。無料アカウントは既にダウンロード不可。AI音楽制作はこれからどう変わる?(CloseBox)

テクノロジー AI
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

生成AI作曲サービスの最大手であるSunoは11月26日(米国時間)、3大音楽レーベルの一つであるWarner Music Group(WMG)との提携を発表しました

2024年6月に、大手音楽レーベルから訴訟されていたSunoとそのライバルであるUdioでしたが、両社とも、訴訟を起こしたレーベルの一社と提携したことになります。両社と提携していない大手レーベルはSony Music Entertainmentのみとなりました。


では、SunoとWMG、UdioとUMGの提携はどこが共通して、どこが違うのでしょうか。

どちらも以前の著作権侵害訴訟を和解させる画期的な動きであるという共通点がありますが、プラットフォームの移行期間や既存ユーザーへの対応とエコシステムの拡大戦略において違いがあります。

ユーザーにとって大きいのは、現行サービスが維持されるかどうかですが、この点においてはUdioは新サービスへの移行期間中はダウンロードができなくなっているという、既存利用者にとって致命的な状況ですが、Sunoは、有償プラン限定ではありますが、そのまま使えます。

Sunoの無料プランでは再生と共有のみが可能。有料プランはダウンロードは可能ですが、毎月のダウンロード数には上限が課せられます。上限については後ほど発表される予定。Sunoユーザーも無傷ではいられなかったようです。

▲Sunoの無料アカウントでは生成した楽曲がダウンロードできなくなった

最近導入したばかりのDAW機能、Suno Studioはそのまま使えるようです。

提携の一環として、SunoはWMGからライブ音楽・コンサート発見プラットフォームであるSongkickを買収。Songkickを成功したファン向けサービスとして運営し「アーティストとファンのつながりを深める新たな可能性を生み出す」としています。これは音楽制作にはあまり関係なさそう。コミュニティ規模を買われてということでしょうか。

レーベル所属アーティストの生成AI活用については、Udio=UMGに近い建て付けとなっています。

WMGアーティストのうち、自身の名前、画像、肖像、声、および著作物のAI生成音楽での使用にオプトインしたアーティストのコンテンツを導入し、新しい創造体験を提供するとしています。これまでは既存楽曲やアーティスト名をプロンプトとして使うことはできませんでしたが、オプトインされたアーティストの許諾曲であれば可能になる、ということでもあります。

また、この提携により、高品質なライセンス音楽を使用して、現行のv5を超える「新世代の強力な音楽モデル」を構築することが可能になるとしています。例えばマルチトラックの完全に分離された音源を使用すれば、さらに生成楽曲の品質は上がるでしょう。

アーティスト自身が自分の楽曲を学習させて、自分の創作の助けにしたい場合にも便利なのですが、現状だとそれが使えるのはWMGアーティストのみ。同様の提携を他の音楽レーベルやインディーズレーベル、アーティストと提携する術は提供されるのか、という疑問は残ります。

最先端の音楽AIであるSunoのフル機能がWMG所属アーティストしか使えないというのであれば、例えばPro ToolsやCubase、Ableton Liveなどが使えるのは特定レーベル所属ミュージシャンのみ、に近いことになります。

音楽レーベル最大手であるSony Musicがどこと手を組むのかもまだ謎です。ソニーグループではSony PCLがAI作曲の研究「Flow Machines」を進めていたこともあり、どう出てくるのか、気になるところです。

まあ、僕らにはProducer、Tunee、オープンソースのYuE、ACE-Stepも残っているわけですが、どうなるのでしょうね。

比較項目

UdioとUMGの提携 (2025年10月29日)

SunoとWMGの提携 (2025年11月25日)

典拠

訴訟の状況

UMGを含む複数のレーベルからの訴訟を和解させる

WMGとの間で生じていた訴訟を和解させる

楽曲ダウンロード

移行期間中、利用不可になる

機能は廃止されず、有料アカウントが必要になる

既存ユーザー補償

Pro/Standardユーザーにクレジット付与(1200/1000)や同時生成上限拡大など、具体的な補償あり

新規モデル構築の言及はあるが、具体的なクレジット付与や機能拡充の補償はソースに記載なし

エコシステム拡大

音楽関連のプラットフォーム買収に関する言及なし

WMGからライブイベント発見プラットフォームのSongkickを買収し、エコシステムを拡大する。

アーティスト参加

アーティストが許可・管理する「許可制AI音楽」の仕組みを導入

アーティストがオプトインして、そのコンテンツ(名前、声など)の使用を許可し、新しい収益源を確保する

《松尾公也》

松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

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