打てば響く、「キラキラしたフェイザーの入ったローズ」「伝説級のギターリフ」プロンプトが確実に反映されるAI作曲最新モデル「Suno v5」の実力(CloseBox)

テクノロジー AI
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

AI作曲サービスの最高峰といってもいいSunoがバージョンアップを重ね、9月24日にv5に到達しました。まだDAW完全対応、MIDI出力は実装していませんが、その前に作曲モデルを刷新した感じです。

現在はPro以上の有償プランのユーザーのみが使用できます。

今回のバージョンアップはこれまでとすると地味。曲の最長は8分と変わらず、機能的な変更は最小ですが、作曲モデルはかなり強化されたようです。

The world's best music model

Authentic vocals, unparalleled control, studio-quality results. It's the powerful foundation for everything that's coming.

「世界最高の音楽モデル。オーセンティックなボーカル、比類なきコントロール、スタジオ品質の結果。これからの新機能全てのための強力な基礎となります」

とうたっていますが、具体的にどういうことか、実際に試してわかったことは……。

筆者は気に入った歌声をペルソナとして残し、再利用していますが、これまでは必ずしもそのボーカルが出てくるとは限りませんでした。Sunoの方では出しているつもりかもしれませんが、こちらでの認識は別の声ということも。

それが、v5になってからは驚くほど均質な歌声で、声の特徴もはっきりと認識できます。音質はクリアで、そのせいか歌も以前よりパワーアップして上手くなっているように感じます。

楽器の方も、以前は少々MIDIっぽさがあったギターも、これはプロレベルと言っていいのでは、というくらいの粘っこい、魂の入ったギターソロ、リフをこなしています。

現在のSunoは楽曲で使う楽器やジャンル、表現を記述するStylesというフィールドで最大1000文字を記入でき、そこには従来のカンマ区切り英文だけではなく、長文の文章を入れることができるようになっています。

ただし、そこでいくら記述しても反映されないものがありました。楽器の細かい設定、エフェクターなどはいくら記述しても音になって出てくるのは稀。

そこが大きく変わったように感じます。

例えば、従来はエレピのFender Rhodesを入れたいときは「rhodes」とする以上のことはできなかったのが、「rhodes with phaser」とすると、フェイズシフターによる位相変化が反映されたサウンドになり、さらにキラキラ感を出すために「shimmering rhodes with phaser」とすると、さらに好みの音に変化。

こういうことはv4.5まではできませんでした。

「slide guitar solo」には「driging」「soft driving」と音色のニュアンスを伝えることが可能になり、その表現力も大いに高まっているのを感じます。

同じプロンプトで、v4.5+とv5で試してみました。

v.4.5+では曲自体はいいのですが、Rhodesサウンドはほとんど聴き取れませんし、スライドギターソロは登場しません。チョーキングを多用したアコースティックギターソロがあるだけ。

v5ではちゃんと反映されています。ビリー・ジョエルっぽいRhodesサウンド、ローウェル・ジョージっぽさを狙ったスライドギターソロが意図通り、曲にフィットしているのを感じます。

これまで、ハードロックの曲を作る上でなかなか反映されなかったのが、曲全体で登場するギターリフ。これをSunoがなかなかわかってくれなかったのです。

v5では、「epic guitar riff」と入れるだけで、冒頭からたしかに伝説級のギターリフが登場しています。チョーキングビブラートはポール・コゾフかゲイリー・ムーアかというくらいだし、ギターソロに超長いフィードバックから入るところとか、「よくわかってるなお前」と褒め称えたくなります。

ギターのリフは、Come Taste the Bandのトミー・ボーリンを思わせます。これはepic guitar riffといっていいのではないでしょうか。

ヘビーメタルとハードロックの違いについて、「ハードロックってのは、すごいギターとそれに対抗できるボーカルがあって成立するんだよ」と、VOWWOWの人見元基が数年前に酒の席で言ってたのですが、この曲はもはやハードロックってことでいいですよね。

あと、細かいところも変わっています。

出来上がった曲を、同じ歌詞、音楽スタイル、メロディーを維持しながら、バージョンの異なるAI音楽モデルに変えるRemaster機能が、v5では3つのバリエーションから選べるようになっています。

そして、SunoにはDAW機能を搭載し、MIDIエクスポートも予告されているSuno Studioが待ち構えています。

もう1曲、YesのRoundaboutをChatGPTに分析させたプロンプトをいろいろいじっていたら、面白いジャパンプログレ曲もできました。プロンプトの効きがいいのは、AI曲作りの楽しみを倍加させてくれます。

というわけで、v5の入魂ギターソロがSuno StudioでどんなMIDIデータを出してくれるのか、楽しみでなりません。

なお、YouTubeチャンネルの公式動画では、Suno StudioについてCTOが語っています。その内容をまとめるとこんな感じに。

  • Suno Studioは、Sunoプラットフォームに今後搭載される機能。

  • Suno Studioは、ユーザーが作成するものに対して最大限のコントロールを与えることを目的として設計されている。楽曲をあらゆる方法で分解し、再構築し、混ぜ合わせることで、ユーザーが望むものを正確に作り上げることができる。

  • この制作プロセスをより簡単に、より効率的にするために、新しい機能が実装されている。

  • Suno Studioの重要な新機能の一つは、楽曲を時間軸だけでなく「ステム」ごとにも分解できること。これにより、特定のステムを削除したり、追加したり、特定の楽器の特定のセクションを特定の位置に追加したりすることが可能になる。

  • これらのステムはすべて、Sunoの最新モデルであるv5によって生成される。

  • V5は楽曲の構造を理解し、その構造を一度に作り出すことができる。

  • 以前からあった「ボーカル追加」「インストゥルメンタル追加」機能は、このステム機能のプレビューのようなもの。Suno Studioでは、この機能が極限まで高められ、ステムごと、セクションごとに楽曲のピースを自由に追加できるようになる。

  • Suno Studioには録音機能も搭載される予定。これにより、ユーザーは自分で演奏した楽器や歌声を楽曲に追加できる。

  • 追加されたユーザー自身の声などに対して、V5モデルを使って反復作業を行うことも可能。例えば、録音した自分の声を異なるジャンルで聞いたり、様々なバリエーションで試したりでき、新しい方向性を素早く見つけ出すのに役立つ。

  • 現在開発中の「SFX(効果音)とサンプル」機能も、Suno Studioなどのツールと組み合わせることで、さらに創造的な自由度を高めることができる。


Come Taste the Band
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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

《松尾公也》

松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

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