サムスン電子の「Galaxy Z Fold7」が、8月1日にいよいよ発売になります。折りたたんでもわずか8.9mm、215gという驚異の薄さ・軽さが注目を集めているこの最新モデルですが、サムスン電子が社運をかけて取り組んでいるGalaxy AIも、前世代の「Galaxy Z Fold6」から進化しています。

▲薄さや軽さが注目を集めるGalaxy Z Fold7だが、Galaxy AIの性能や使い勝手もアップデートされた
Galaxy S25シリーズやAndroid 15にアップデートされたGalaxy Z Fold6までの機能を取り入れつつ、開くと8インチになる大画面を生かした独自のユーザーインターフェイス(UI)を実装しているGalaxy Z Fold7。画面分割やポップアップによる生成AIの表示や、サムスン独自のブラウザで、さらに実力を発揮します。
これまでのGalaxy AIは、例えば翻訳を呼び出すと画面全体の文字が他言語に差し替えられていました。要約は、画面下からせり出す形で表示されます。しかし、これは縦長ディスプレイに最適化されたUIで、正方形に近い開いた状態のGalaxy Z Foldシリーズではディスプレイサイズや比率を生かし切れていませんでした。
Galaxy Z Fold7では、この結果を画面分割で表示したり、ポップアップとして別ウインドーで表示することが可能になりました。左右で原文と翻訳結果を見比べたり、要約を表示させつつ本文を読み進めることができるようになり、生成AIが出力した結果が読み取りやすくなっています。

▲原文と翻訳の2つを並べることができ、比較しながら読むことができる

▲要約はポップアップ表示に対応。翻訳のように、原文の横に並べることも可能だ
惜しいのは、これがSamsungブラウザ限定の機能になっている点。このブラウザはChromeと互換性がなく、ブックマークの同期ができないほか、Googleのパスワードマネージャーも利用できません。そのため、ほかのAndroidやiOS、PCなどとデータを連携するのが困難です。Samsung Notesアプリでも翻訳や要約は利用できますが、前者の場合、画面分割はできませんでした。
他社ブラウザに自社のAIをシームレスに統合するのはなかなかハードルが高そうですが、逆にSamsungブラウザにもっとグーグルの各種機能を取り込むことはできるはず。OSやOne UIをアップデートする際には、こうした観点での改善にも期待したいところです。
ただし、Chromeで開いたページを共有ボタンでSamsungブラウザに送り、そこからGalaxy AIを利用することはできます。これであれば、普段はChromeを使いつつ、必要なときだけGalaxy AIを呼び出せます。ひと手間かかってしまう点はこれまでと同じですが、どうしてもGalaxy AIを活用したいときには覚えておくといいテクニックです。

▲Chromeでは同じことができないため、いったん共有からSamsungブラウザを呼び出す必要がある
個人的に画面分割で便利だなと思ったのは、生成AIで編集したときの前後比較ができるところ。Galaxy Z Fold7では、消しゴム機能などで被写体の映り込みを消したあと、その結果と編集前の写真を1つの画面にまとめて表示できます。縦位置の写真だと、前後両方の写真が大きく、違いを見比べやすいのがメリット。結果を適用するかどうかの判断をしやすくなりました。

▲編集前、編集後を比較できる。背後の建物や首から下げたパスが消え、単なる自撮りの写真のようになった
なお、この画面分割表示もサムスン純正のギャラリーに実装されており、Android純正のギャラリーを兼ねているGoogleフォトアプリでは利用できません。独自カスタマイズでゴリゴリとAIを搭載しているのはいいのですが、他社端末から移ってきたユーザーは特にグーグルへの依存度が高くなりがちなだけに少々気になります。純正アプリとグーグルアプリをどう両立させていくかの課題は、依然として残っている印象を受けました。
使い勝手の向上だけでなく、AIモデル自体もバージョンを上げており、正確性が高まっています。その代表格がボイスレコーダーの文字起こし。それに使われている言語パックのバージョンを見ると、Android 15を適用したGalaxy Z Fold6が「2.x」なのに対し、Galaxy Z Fold7は「3.x」になっており、大きくジャンプアップしていることが分かります。

▲こちらはGalaxy Z Fold6

▲Z Fold7では日本語パックにメジャーアップデートがかかった
実際、反響が比較的ある発表会、目の前の相手の声を拾う囲み取材、マイクに拾った音声を直接出力している決算説明会の動画をそれぞれ録音したあと、文字起こししてみましたが、その精度が大きく上がっていることが確認できました。「Galaxy S24」で導入された当初は、まったく意味不明な文字の羅列になってしまい「ダメだこりゃー」と思ったものですが、この結果を見ると隔世の感があります。

▲Galaxy Z Fold6での文字起こし結果

▲Galaxy Z Fold7では固有名詞に間違いは残るものの、取りこぼしが少なく、文章として読み取りやすくなっている

▲こちらは囲み取材の結果。Fold6は、無理やり単語にしてしまっているところがあり、通しで読みづらい

▲だいぶまともになっているFold7。

▲動画配信を外部マイクで録音。Z Fold6はいきなり社長の名前を間違えたり、数字のミスや意味不明な箇所が…

▲Galaxy Z Fold7では、ところどころ間違いはあるものの、文意が通っている
このように実用度は大きく上がりました。環境の違いもある程度吸収しています。今まで散々ダメ出ししてきたGalaxy AIの文字起こしですが、Galaxy Z Fold7の世代になって、いよいよ実用的に使えるツールになったと言えそうです。
日本語モデルのアップデートだけでなく、ボイスレコーダーはノイズの除去にも対応しています。もしかすると、これが文字起こしの結果にいい影響を与えているのかもしれません。どちらかというと、Galaxy Z Fold6までは、環境に左右されて精度にバラつきがあったからです。

▲Galaxy Z Fold7から、雑音の除去が可能になった。これもGalaxy AIの機能の1つだ
単にボイスレコーダーの文字起こしとして使えるだけでなく、このAIモデルは、音声通話の録音にも活用されているため、比較的出番の多い機能と言えるでしょう。オンデバイスAIでここまで性能が上がったことは大歓迎です。欲を言えばPixelシリーズのようなリアルタイム文字起こしに対応してほしいところですが、文字は後であれば十分というのであれば、満足度は高いと思います。
また、リアルタイムではないものの、録音終了後に自動で文字起こしを始める設定も用意されました。この機能も、現行のGalaxy Z Fold6にはない、Galaxy Z Fold7の独自機能。精度が上がっただけでなく、ボイスレコーダーも使い勝手が向上しています。上記のようなグーグルアプリとどう連携していくかという課題はあるものの、Galaxy AIの利便性は着実に上がっていると評価できそうです。

▲録音終了後に、自動で文字起こしを始める設定も用意されている