シャープ、FCNT、モトローラ、OPPOと、ここ1ヵ月の間に日本や中国のメーカーが相次いでスマホの夏モデルを発表しました。
それぞれ特徴はあるものの、ざっくり一言で共通ポイントを挙げると“AI”。いずれのメーカーもグーグルのGeminiとは別に、独自機能として自社開発のAIを搭載し、それをウリとしています。
なかでも取り組みとして大掛かりなのは、AIセンターを設立し、研究開発にも力を入れているOPPO。同社はクラウドAIですべてのユーザーにAIを行き渡らせることを目標に掲げ、5万円を下回るミッドレンジの「Reno13 A」にも多数のAI関連機能を搭載してアピールしています。

▲ハイエンドからエントリーモデルまで、すべてのラインナップにAIを搭載していく方針を明かしたOPPO
Apple IntelligenceのようにオンデバイスAIになると、AIを搭載できる端末がハイエンドモデルに限定されてしまいますが、クラウドに処理を委ねればエントリーモデルから搭載できるというわけです。アップデートなどのコストやクラウドの利用料をどう捻出するかは課題となりそうですが、この方法なら同社が強みにしているミッドレンジモデルにもAI機能を搭載できます。
実際、Reno13 Aや同時に発表された「Reno14 5G」は、どちらもハイエンドモデルではありませんが、文章を書き直したり要約したりするライティング用ツールや、画像の反射除去、写り込み消去などを行う画像編集用のツールが搭載されており、一般的なミッドレンジモデルよりAI関連の機能が豊富です。クラウドAIというと、プライバシー面での心配もありますが、こうした点もGoogle Cloud上に構築した仕組みで、個人情報には触れないようにしています。

▲文章を生成する「AIライター」や、要約する「AIサマリー」などを搭載。写真はReno14 5Gだが、廉価モデルのReno13 Aもこの機能に対応する

▲Reno13 AやReno14 5Gは、写真編集もにもAIを活用。Googleフォトにない反射除去などの機能も用意される。写真はReno13 A
モトローラも自社開発のmoto aiを「motorola edge 60 pro」に搭載しています。同社はカメラ機能で被写体の動きを検知してブレを抑えたり、動画撮影で水平をロックしたりといったことにAIを活用。撮影機能にAIを取り入れる動きは以前からありましたが、できることがより広がった印象です。

▲モトローラはAIを撮影に活用。写真の水平ロックもその1つ。本体を大きく傾けているが、画面内は水平に保たれている
また、edgeシリーズは、この機種から側面に“AIキー”を搭載しています。これは、AI機能を呼び出すための専用ボタンという位置づけ。長押しとダブルクリックに、モトローラ独自のイラスト生成AI、Image Studioと、AI検索のPerplexityを割り当てることができます。ほかのアプリは指定できず、AI用に割り切ることで差別化を図っています。

▲AI専用のキーを備え、対応するアプリを呼び出せる
このAIキーに似たボタンは、FCNTの「arrows Alpha」にも搭載されています。それもそのはず、モトローラとFCNTはともにレノボ傘下で、部材や一部ソフトウェアの共通化を進め、コストダウンを図っているからです。arrowsにおける専用キーの名前は「アクションキー」。こちらはグーグルのGeminiに加え、arrowsの操作方法を自然な文章で聞くことができるarrows AIを割り当てられます。
FCNTもアクションキーはAI専用キーと位置づけていますが、モトローラほど割り切っているわけではなく、ほかのアプリも登録可能。PayPayなどのコード決済アプリを設定して、ワンプッシュで呼び出すこともできます。

▲arrows Alphaも、AIアプリを割り当てられる専用キーを搭載
ちなみにモトローラ、FCNT双方とも発売時点でのAIは“完全体”ではなく、秋ごろにアップデートによる追加提供を予定しています。モトローラの場合、通知の要約や記録しておいたことを後から思い出せるリコールのような機能に対応します。これらの機能は海外では提供されていますが、日本語化に時間を要しています。FCNTも、これと似たような機能を備える予定です。
シャープは「AQUOS R10」に電話の中身を要約したり、迷惑電話を検知したりする電話アシスタントを搭載。カメラには本などを映したときにできる影を自動で除去する機能も組み込まれました。4社ともハードウェアだけでなく、AIによる差別化を図っていると言えるでしょう。ミッドハイのスマホでも、こうした機能が徐々に一般化しつつあることを示唆しています。

▲シャープは、電話にAIを活用。内容を要約してカレンダー登録などを提案したり、話の中身を聞いて詐欺電話を検知できる
いずれもAndroidスマホなので、当然Geminiも搭載されています。この点を考えると、どのモデルでも同じようにAIを使えると言えるでしょう。ただし、GeminiはAndroidに一律で採用されてしまうため、メーカーごとの差別化になりません。各社がアピールするAIの機能を見ると、“Geminiでできないこと”にフォーカスしていることがわかります。

▲各社ともGeminiを基本とした上で、独自のAIを載せることで差別化を図っている
例えばOPPO AIの文章を編集するような機能は、Androidに横展開されていません。モトローラ、FCNTが今後対応する通知の要約も然り。シャープの電話アシスタントも同様です。Pixelにはさまざま機能が搭載されているものの、これはAndroidとしての標準ではなく、グーグルがPixel用に実装した機能。その意味では、Geminiやかこって検索がカバーしていない、かゆいところに手が届くAIを載せていると言えるかもしれませんね。
実際のところ、性能面でGeminiを超えるようなAIモデルを開発するのは、各メーカーにとって非常にハードルの高い話です。AI開発ではトップ争いをしているグーグルが手がけているだけに、むしろ、これを積極的に活用したほうが得策です。ただし、Geminiだけではかゆいところに手が届かないのも事実。スマホメーカーは、それを補完する方向に注力しているのが現状です。