Zenbook 14 OLEDでみるCore Ultra内蔵GPUのゲーミング性能。内蔵GPUのレイトレ性能はどのくらい?(西川善司のバビンチョなテクノコラム)

ガジェット PC
西川善司

テクニカルジャーナリスト。東京工芸大学特別講師。monoAI Technology顧問。IT技術、半導体技術、映像技術、ゲーム開発技術などを専門に取材を続ける。スポーツカー愛好家。

特集

Core Ultra搭載のノートPCのサンプル評価機が我が家にやってきた。

モデル名はASUS「Zenbook 14 OLED UX3405」。

西川Zen司という名前でありながら、ASUSのZenbookを実際に自宅で触るのは初めてのことである(Ry"Zen"の方は初代から愛用してはいたが)。

本機の搭載CPUは、Core Ultra 7 155Hで、ラインアップ上の中間グレードに位置するモデルとなる。

搭載CPUはCore iシリーズではなく、Intelが昨年末から投入を開始した新シリーズ「Core Ultra」を採用。本機は、いわゆるIntelが2024年以降に強力に推進する「AI PC」だ。

わざわざ「AI PC」と名乗るのは、Core Ultraには、Intel系のCPUとしては、初めて推論アクセラレータを搭載したからだ。この推論アクセラレータには「NPU(Neural-network Processing Unit)」という名前が付けられている。

推論アクセラレータといえば、Intelは、同社の現行単体GPU「Arc」シリーズに「Xe Matrix Engine」(XMX)と名付けた推論アクセラレータを搭載していることが思い起こされるわけだが、Core Ultraに搭載されたものは、XMXとは別系統のものとなっている。

と、Core Ultraの特徴を説明してきてここで言うのもなんだが、GPU好きの筆者が注目するのは、むしろCore Ultraに搭載された内蔵GPUの方なのであった。

本稿では、この手のノートPCレビューでは、あまり深掘りされる機会の少ない、Core Ultra内蔵GPUにスポットを当てていきたいと思う。

Core Ultra内蔵GPUってどんなGPU?

Core UltraシリーズのCPUとしては、史上初のリアルタイムレイトレーシング(以下、レイトレ)に対応した「Xe-LPGアーキテクチャ」ベースのGPUが搭載されているのだ。

このXe-LPGアーキテクチャとは、事実上、「Xe-HPG」アーキテクチャのデチューン版に相当する。

そう、Xe-HPGとは、Intelが高性能な単体GPUとして投入済みのArcシリーズのことだ。

つまり、平易にいえば「Core Ultraの内蔵GPUはArcシリーズのデチューン版が搭載されている」ということになるのだ。

どのあたりがデチューンされているのか……といえば、まず、CPU本体側と機能が被る推論アクセラレータのXMXがGPU側から削除されているところ。つまり、Core Ultraシリーズにおいて、推論アクセラレータはCPU側に搭載されたNPUのみ、ということになる。

それ以外のデチューン部分といえば、GPU本体の動作プロファイルが、ノートPC向けということで「省電力」「低発熱」を重視した性能チューニングになっているというところだ。

では、素性として、このGPUがとんなものに仕立て上げられているか、簡単にそのアーキテクチャを覗いてみよう。

Core Ultraシリーズの内蔵GPUは名称としては「Intel Arc Graphics」となっている。ちなみに、Core Ultraシリーズが登場する前のCPUである、第11世代Coreプロセッサ(開発コード名:Tiger Lake)、第12世代Coreプロセッサ(開発コード名:Alder Lake)、第13世代及び第14世代Coreプロセッサ(開発コード名:Raptor Lake・同Refresh)に内蔵されているGPUの名称は「Intel Iris Xe Graphics」である。なお、一部のモデルでは「Intel UHD Graphics」も採用されている。

Core Ultraシリーズでも、一部のモデルでは、旧世代のIntel Graphicsが採用されているモデルもあるが、Intel Arc Graphicsが採用されているモデルでは、GPUコアに相当する「Xe-Core」が8基(Core Ultra 5 135系以上)ないしは、7基(Core Ultra 5 125系以下)を搭載する。

1基のXe-Coreには合計16基の「XVE(Xe Vector Engine)」と呼ばれるベクトル演算エンジンが搭載されている。

NVIDIAのGPUでたとえると、Xe-CoreはGeForceのSM(Streaming Multiprocessor)に相当し、XVEはCUDA(Compute Unified Device Architecture)コアに相当する……と考えるとイメージしやすいかもしれない。

XVEの実態は、256bitの「SIMD浮動小数点ベクトル積和算演算器」だ。なので、XVE1基でFP32(32bit浮動小数点数)演算を行う場合、1命令で最大8つの演算を並行して行える。いわゆる「SIMD8」に相当する。

「Intel Arc Graphics」(Xe-LPG)は、単体GPU版Arc(Xe-HPG)に対してデチューンはされているものの、世代としては新しいため、一部の機能は、単体GPUの現行Arcシリーズよりも先進的な部分もある。そのあたりを列挙すると、

(1)FP64(64bit倍精度浮動小数点)演算に対応

(2)FP16(半精度浮動小数点数)またはFP32のSIMD演算に対応

(3)整数のSIMD演算または超越関数のスカラ演算の同時実行に対応

などが挙げられる。

また、Intel版のDLSSとも呼ばれる、超解像/アンチエイリアス技術「Xe Super Sampling(XeSS)」の実務処理には、「符号付き8bit整数による4要素行列(ベクトル)積和算」が大量に実行されるわけだが、これの実行を担当する「DP4a(Signed Integer Dot-Product of 4 Elements and Accumulate)」命令については、単体GPU版のArcシリーズでは、推論アクセラレータのXMXが担当していた。

一方で、XMXを搭載していないCore Ultra内蔵GPUの「Intel Arc Graphics」では、代わりに、その専用実行ユニットをXVE上に実装している。そのため、上記(3)のメリットが活かされ、3Dグラフィックス処理に多用される浮動小数点演算性能の足を引っ張らない。つまり、XeSS処理効率において、「Intel Arc Graphics」は、単体GPU版Arcに見劣りしない……と言うことをインテルは主張している。

と、まあ、小難しい話はここまでにして、「Intel Arc Graphics」の理論性能値(TFLOPS値)を求めてみよう。

「Intel Arc Graphics」の理論性能値は以下の式で求めることが出来る。

8(同時計算数)×16(XVEの数)×8(Xe-Coreの数)×2FLOPS(積和算)×稼働クロック(Hz)

今回、我が家にやってきたASUS「Zenbook 14 OLED UX3405」のCPUは「Core Ultra 7 155H」なので、Xe-Coreの数は8基、動作クロックは2.25GHzとなり、上式で計算すれば4.608TFLOPSとなる。

約4.6TFLOPSという理論性能値で、AMDやNVIDIAのレイトレ対応GPUであたると、

AMD Radeon RX 6400(約3.6TFLOPS)以上、RX 6500 XT(約5.8TFLOPS)以下、

NVIDIA GeForce RTX 2060(約6.5TFLOPS)以下

といったところ。

ゲーム機で一番近いものを挙げるとPS4 Pro(約4.2TFLOPS)あたりだろうか。

旧世代のRadeonやGeForceのローエンドにすら勝てない事実ににガッカリした人も多そうだが、それでも「PS4 Pro以上の性能が有る」と聞けば、「そんなに悪くないかも」と認識を改める人も出てくるかもしれない。

その「秘めたる? ゲーミング性能」に期待をかけてなのか、2024年1月にはMSIが、今回取り上げているZenbookと同等のCore Utra 7 155H搭載のゲーミングUMPC(携帯型ゲーミングPC)として「Claw」を発表した。

ただ、2024年5月時点では、この手のゲーミングUMPCにおける採用プロセッサでは、AMDの「Ryzen Z1 Extreme」が約8.6TFLOPSでトップに君臨しているので、この分野の性能競争では、まだIntelのCore UltraにはAMDの背中は見えてないといったところ。

この分野でAMDを打ち負かしてナンバーワンをとるには、Xe-Core数が2倍の16基が必要になりそうだ。そうなれば約9.2TFLOPSにまで理論性能値を引き上げることができる。

ASUS「Zenbook 14 OLED UX3405」本体レビュー~PCMARK 10の結果はゲーミングノートPCを上回る!?

ということで、GPU評価の本題に行く前に、軽くASUS「Zenbook 14 OLED UX3405」の本体側のレビューも行っておこう。

今回、我が家にやってきたZenbookのCPUはCore Ultra 7 155Hだったが、CPUは、その下位のCore Ultra 5 125H(GPUのXe-Coreは7基)や、その上位のCore Ultra 185H(GPUのXe-Coreは8基)を選べる。

メインメモリ(RAM)は「LPDDR5X-7467」を採用。筆者のモデルは容量としては32GBとなっていたが、16GBモデルも選択可能だ。

ストレージ(SSD)は、筆者のモデルは1TBだが、512GBも選択できる。

▲画面を広げた際の全体像。14インチ画面で重さは約1.2kg

▲キーボード部。カーソルキーは、[SHIFT]キーあたりにテトリス的に入り込んだ配置でないので極めて使いやすい

▲天板部。ボディの質感は良好。海外ではシルバー系のボディーが選べるようだが、日本国内はこの紺色(ポンダーブルー)のみが設定される

▲画面を閉じた状態の正面

画面は14インチ。その製品名からも想像出来るように映像パネルは有機ELを採用する。画面解像度は筆者のモデルは2880×1800ピクセルだが、1920×1200ピクセルのモデルも選択可能だ。画面アスペクト比は16:9ではなく、最近、ノートPCへの採用事例が急増している16:10となっている。

その他、共通仕様としては、

・Webカメラ 207万画素(Windows Hello対応赤外線カメラ内蔵)
・無線LAN Wi-Fi6E対応
・接続端子類 HDMI×1
USB-C(Thunderbolt4)×2
USB-A(USB3.2/5Gbps)×1
・オーディオ ステレオスピーカー(1W+1W)、アナログヘッドセット端子(4極φ3.5mmミニジャック)×1

といった感じになっている。

▲正面向かって左側面。写真左側の端子はUSB3.0(5Gbps)端子。その横にあるスリットは排気口

▲正面向かって右側面。2基のThunderbolt4端子、ヘッドセット端子、HDMI端子が並ぶ

電源供給はUSB-C端子で行う形式。付属のACアダプタはUSB-C/PD 65W対応なので、PD65W仕様の汎用充電器やモバイルバッテリーを使ってのUSB-C給電/充電が可能だ。

▲付属のACアダプタはUSB-C/PD65W仕様

バッテリー駆動時間はJEITA2.0測定で約21.0時間。JEITA3.0測定の動画連続再生時で約11.4時間となっているのでなかなか優秀。Core Ultraシリーズは、CPUコアにLP-Eコアという、Eコアよりもさらに省電力なCPUコアが搭載されており、動画再生はこのコアだけで実現可能なのがウリ。なので、このJEITA3.0測定結果はその恩恵が最大限に表れたものなのだろう。

実際のPCとしての使用感には全く不満なし。Windowsの起動も速いし、ログイン後にデスクトップが出現するまでのスピードも速い。Webブラウザ、メールソフト、Officeソフトの使い勝手もキビキビしている。

まあスペック的に考えても「そりゃ当然だろ」という感じではあるが。

本機に対して、特に筆者が気に入ったのは、画面のタッチに対応しているところ。マルチタッチに対応しているので、画面の拡大縮小のピンチ操作が直感的に二本指で行える。しかし、なんと日本正式発売モデルでは、この画面タッチ機能はないらしい。残念。

有機ELパネルの画面は非常に美しい。AV Watchの筆者連載である大画面☆マニアで行っているカラースペクトラムを計測してみたので、下に示す。赤緑青(RGB)のスペクトラムピークが鋭く立ち上がり、各RGBスペクトラムがほぼ完全に分離しているので純色と混色の精度も高そうだ。

▲ASUS「Zenbook 14 OLED UX3405」の白色光のカラースペクトラムの計測結果。かなり理想的なカラースペクトラムである

▲有機ELパネルの画面は発色が鮮烈。なおパネル表面は光沢仕様。非光沢(ノングレア)表面はコントラストが落ちるので、それを嫌っての光沢仕様か

それと、参考までに、PCの使い勝手の指標を計測する「PC MARK10」の結果を示しておく。PC MARK10の結果は、他メディアのPC製品レビューでもよく行われているので、気になっている製品と比較検討するときに参考にしていただきたい。

ちなみに筆者が愛用しているギガバイトのゲーミングノートPC「AERO17」(XE5-73JP744HP、CPU:intel Core i7 12700H、GPU:NVIDIA GeForce RTX 3070 Ti/8GB+Intel Iris Xe Graphics、RAM:DDR5-4800/64GBに換装)の測定結果も示しておく。

▲Zenbook 14 OLED UX3405(Intel Arc Graphics)のスコアは6331

▲AERO17(NVIDIA GeForce RTX 3070 Ti Laptop)のスコアは5584

筆者のAERO17は、本稿執筆時から約2年前の2022年モデルである。CPUは2世代古い、Intel第12世代Core i7ではあるが、GPUは2024年現在でもそこそこに高性能なNVIDIA GeForce RTX 3070 Ti(理論性能値16.6TFLOPS)を搭載しているので、どんな結果になるか楽しみだったのだが、残念。約13%の差で負けてしまった。

PC MARK10は、グラフィックス性能テストが実践はされるものの、PCのトータル性能を検証するベンチマークテストのため、GPU性能が幾ら高くても、CPUやメモリ、ストレージの性能が優秀なPCに軍配が上がることが多々ある。今回はまさにそうしたパターンだったということだろう。

3つあるテスト要素「Essentials」(一般的なPC用途テスト)、「Productivity」(文書、図版、表計算テスト)、「Digital Content Creation」(写真、映像、グラフィックステスト)のうち、AERO17が勝てているのは、GPU性能の高さが結果に出やすい「Digital Content Creation」のみ。SSD性能はそれほど差はないと思うので、CPU性能、メモリ性能でZenbookに差を付けられたという感じか。

2年前とはいえ、ハイエンド級ゲーミングPCに勝つとは、恐るべし、Zenbook。

▲底面側。ボディサイズは幅312.4mm×奥行き220.1mm×高さ14.9mm

▲底面パネルを外して撮影。ネジ形状はトルクスT5だった。NVMe SSDは換装が可能だ。メモリ(RAM)換装は不可

ゲーミング性能はどうか? FF15ベンチ編

さらにもう一つ、多くのメディアで実行結果データが潤沢な「ファイナルファンタジーXVベンチマーク」(以下、FF15ベンチ)も実行してみた。

ここでも参考までに、筆者のゲーミングノートPCのAERO17での実行結果も示しておく。

設定は「解像度:1920x1080」「グラフィックス品質:標準」、「画面モード:フルスクリーン」だ。

AERO17は、GeForce RTX 3070 Tiも搭載しているが、CPU側には旧世代のIntel Iris Xe Graphicsが内蔵されているので、AERO17の結果はまずはそちらのほうから。なお、Core i7 12700H内蔵GPU、Intel Iris Xe Graphicsの理論性能値は約2.15TFLOPSである。

▲Zenbook 14 OLED UX3405(Intel Arc Graphics)のスコアは3352。判定は「普通」

▲AERO17(Intel Iris Xe Graphics)のスコアは2805。判定は「やや重い」

事実上の「CPU内蔵GPUの新旧対決」となったこの結果を見ていくと、スコア値にして約20%ほど、Zenbook側の最新CPU内蔵GPUのIntel Arc Graphicsの方がよいパフォーマンスを示している。

下に、Zenbook/Intel Arc GraphicsのFF15ベンチの実行中の様子を示す。

▲FF15ベンチをZenbook/Intel Arc Graphicsで実行している様子。録画はHDMIキャプチャを使っているので、PC本体側に録画による追加負荷はない。以下同

よく見ると、シーンの転換/展開時に、ググっとフレームレートが落ちる……というか、一瞬静止するようなプチフリーズが起きていることに気が付く。

これは、おそらく、IntelのCPU内蔵GPUにおいて、非ゲーミングPC製品で採用事例が多い「Dynamic Video Memory Technology」(DVMT)の動作による副作用(弊害)だと思われる。

CPU内蔵GPUでは、グラフィックス処理用のグラフィックスメモリ(VRAM)は、CPU管轄下のメインメモリと共有するアーキテクチャ(UMA:Unified Memory Architecture)となっている。一部のPCでは、このCPU内蔵GPUに割り当てるグラフィックスメモリをBIOS側で比較的大きな容量を固定的に割り当てられるモデルもあるが、逆に、非ゲーミングPCなどでは、この容量を最初は最低限の割り当てに留めておき、必要になってから動的に割り当て容量を増やしていく……プロセスを採用するモデルがある。そう、この動的な割り当ての仕組みがDVMTだ。

もしやと思い、Zenbook 14 OLED UX3405のBIOS画面をチェックして見たところ、DVMTに対する初期割り当て容量は64MBとなっていた。

▲ZenbookのBIOS画面。DVMT機構の初期グラフィックスメモリの割り当て容量はわずか32MBないしは64MBしか設定できなかった。ギガバイト……ではなく、メガバイトだ。この初期設定で近代ゲームをプレイするのはほぼ無理。ということは、ゲーム動作中にグラフィックスメモリ再確保は確実に行われるということだ

FF15ベンチでは、これでは当然不足するので、シーンが転換したり、新たな3Dモデル、テクスチャなどが、メインメモリ領域からグラフィックスメモリ領域に転送が掛かるたびにプチフリーズしていたのではないか……と筆者は推測している。

ちなみに、家庭用ゲーム機のUMAと違い、PCのUMAの場合(というかWindowsの場合?)、CPUとGPUが物理的に同一のメモリ空間を共有していても、論理的には別のメモリ空間を扱っていることになっているので、こういったことが起こりうる。

もちろん、最新のDirectXでは、UMAに特化した最適化機能が搭載されているが、そもそも、PCゲームでは、UMAでの動作(≒CPU内蔵GPUでの動作)をあまり想定していないケースが多いので、こうした現象が起きてしまうのも仕方がないといったところか。

逆に言えば、BIOS側のCPU内蔵GPUのグラフィックスメモリの割り当ての初期値を大きく割り当てられる場合は、そうした方がゲームのパフォーマンスは向上する、あるいは安定するはずである。

なお、AERO17において、NVIDIA GeForce RTX 3070 Tiで実行した結果は以下の通り。

▲AERO17(NVIDIA GeForce RTX 3070 Ti)のスコアは12511。判定は「非常に快適」

スコア差は、Zenbook/Intel Arc Graphicsの約3.7倍。

まあ、ここは「そりゃそうですよね」としかいいようがない(笑)

Zenbookで実際にゲームをプレイしてみたら

続いて、3Dグラフィックスベンチマークの「3DMARK」を実施。

実行したのは、最新のDirectX12 Ultimateテストの「Speed Way」と、リアルタイムレイトレ性能テストの「Port Royal」の2つ。

ここでも、参考までに、筆者のゲーミングノートPCのAERO17での実行結果も示しておく。なお、AERO17の方はNVIDIA GeForce RTX 3070 Tiの方でしかテストしていない。

▲Zenbook 14 OLED UX3405(Intel Arc Graphics)のスコアは585

▲AERO17(NVIDIA GeForce RTX 3070 Ti)のスコアは2381

事実上の「グラフィックス重めのゲームグラフィックステスト」の「Speed Way」の結果は、スコア2381でAERO17が圧勝。Zenbookのスコア585は、AERO17の約4分の1に留まった。

両者のGPU理論性能値はIntel Arc Graphics:約4.6TFLOPS、NVIDIA GeForce RTX 3070 Ti:約16.6TFLOPSで、その差は約3.6倍。

Zenbookのメモリ帯域は、LPDDR5X-7467の128ビットバス(64ビットデュアルチャンネル)なので、119.47GB/s。NVIDIA GeForce RTX 3070 TiはGDDR6-14GHz、256ビットバスなので、448GB/s。こちらも両者で約3.7倍の開きがある。

このスコア差は、まあ納得といったところである。

▲Zenbook 14 OLED UX3405(Intel Arc Graphics)のスコアは1375

▲AERO17(NVIDIA GeForce RTX 3070 Ti)のスコアは5825

レイトレーシング性能テストの「Port Royal」も、AERO17のスコアが5825、Zenbookのスコアが1375で、こちらも約4.2倍の差が開いた。この差も、前述した理由から来るものだろう。

とはいえ、IntelのCPU内蔵GPUでレイトレが可能になったことは、感慨深い。今後も、性能強化を期待したいものである。

最後に、最近、筆者が夢中になっているアクションゲーム「アーマードコア6」を、今回のZenbook/Intel Arc Graphicsでプレイしたらどうなるのかを検証してみた。

ゲーム自体の起動は成功。

その後、「それなりに遊べるギリギリの設定はどこなのか」をテーマに、設定を探ってみたところ、筆者的には以下のような結論に辿り着いた。なお、筆者はテアリングを嫌うため「垂直同期オン」設定は絶対としている点を了承いただきたい。

●解像度1920×1080ピクセルの場合
映像品質「中」:30fps~40fps
映像品質「低」:40fps~50fps

●解像度1280×720ピクセルの場合
映像品質「高」:30fps~40fps
映像品質「中」:40fps~50fps
映像品質「低」:50fps~60fps

解像度は1280×720ピクセル未満とすると遠景が見にくくなるので、解像度は「これが下限」という印象。

「解像度は1280×720ピクセルが下限」という条件下で、フレームレート重視でいけば映像品質「低」設定がよさそう…と言うことにもなりそうだが、これでも60fpsが安定しないのと、映像品質「低」設定では影描写がとんでもなく低品質になってしまうので、品質設定は「中」が下限という印象であった。

ということで、解像度を1920×1080ピクセルとするならば映像品質は「中」設定、解像度を1280×720ピクセルとするならば映像品質は「中」ないしは「高」がお勧め…というのが「筆者のお勧め」設定になる。

ということで、以下に、実際にZenbookで「アーマードコア6」をプレイしている様子を録画した動画を下記に示す。この動画では、まさに、上記の2つの設定を序盤と終盤で切り換えてプレイしている様子を収録している。画面右上には、フレームレートを初めとしたシステムステータスが表示されているが、GPU動作クロックの2000の桁が表示されていないのは、この表示を担当しているNVIDIA FrameView側の不具合のようである。

▲ZenbookのCPU内蔵GPUで「アーマードコア6」をプレイして見た動画

上の動画を見てもらうと分かるように、例のDVMTがらみのプチフリーズは、ゲーム序盤にはそこそこの頻度で発生するが、しばらくすると、動的に確保したグラフィックスメモリ容量が安定するためなのか、プチフリーズの頻度は下がっていくようであった。

今後のリアルモバイルノートPCに、2880×1440ピクセル画面はちょうどいい

今回のレビューは、本来のASUSのZenbook 14 OLED UX3405の活用の仕方ではなかったとは思うが、それでも、Intel Arc Graphicsに、予想より高いゲーミング性能があることを知れたのは収穫であった。

おそらく、ほぼ同じシステム構成のMSIのintel Core Utra 7 155H搭載のゲーミングUMPCの「Claw」は大体、こんなパフォーマンスのはずなので、そちらの購入を検討している読者にも参考になれば幸いである。

それと、今回の評価では特に引き合いに出してこなかったが、筆者が普段、仕事で携行している、富士通のリアルモバイルノートPCの「LIFEBOOK-UH」(2020年モデル)よりも、このZenbookの方が、画面解像度が高いところが気に入ったことにも触れておきたい。

Zenbookの画面解像度は2880×1440ピクセルなのだ。

最近は、リアルモバイルノートPCにおいても、高解像度のPDF資料や図版を閲覧する機会が増えてきたので、フルHD解像度程度では力不足を感じることが増えてきたように思う。筆者がお気に入りの「LIFEBOOK-UH」シリーズは、現行最新モデルでも未だに画面解像度がフルHD解像度クラスなので、今回のZenbookが採用している2880×1440ピクセル解像度をとてもうらやましく思ってしまった。

今後は、このZenbookを、リアルモバイルノートPCとしての使い勝手に注視しつつ、さらなる評価と活用を進めていこうかと思っている。


西川善司さんが講師を務める、自作PCワークショップを5月15日に開催いたします。

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《西川善司》

西川善司

テクニカルジャーナリスト。東京工芸大学特別講師。monoAI Technology顧問。IT技術、半導体技術、映像技術、ゲーム開発技術などを専門に取材を続ける。スポーツカー愛好家。

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