Adobeの生成AI技術を先取り公開 Adobe Summit 2024「Sneaks」のマーケティングツールを一挙解説(西田宗千佳)

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西田宗千佳

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フリーライター/ジャーナリスト

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1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。

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Adobeの生成AI技術を先取り公開 Adobe Summit 2024「Sneaks」のマーケティングツールを一挙解説(西田宗千佳)
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Adobeは春と秋に大きなイベントを開催する。秋は「Adobe MAX」。Adobeと言われて多くの人が思い出す、Photoshopなどのクリエイティブ・ツールのイベントだ。

では春は? それが「Adobe Summit」。同社のもう1つの柱である、デジタルマーケティング関係のイベントだ。今年も同社の協力で、米・ラスベガスに取材に来ている。

「Sneaks」は、Adobeが社内で開発中の新技術について「チラ見せ」するイベントだ。製品への導入時期などは公開されないが、反響によってはそのタイミングが早まったりする……かもしれないという、Adobeイベントの華でもある。Adobe Summitでも2日目夕方から「Sneaks」が開催された。

その性質上、Adobe MAX向けでは派手なビジュアルのある未来的なツールの話が多い。


一方、Adobe Summitはマーケティング・テクノロジーが主軸になるので、そこまで絵面は派手ではない。ぶっちゃけ文字ばかりなので、デモの絵面だけを見るとイマイチ目立たない。

最近はどのサービスも生成AIが主軸になっているが、Adobe Summitも同様。ちょうど1年前には、同社の生成AIである「Firefly」がローンチされた。Fireflyは年末までに65億枚以上の画像を生成しており、同社の歴史の中でももっとも素早く広がっているサービス、と言えるようだ。

Firefly登場から1年が経過し、そろそろ「生成AIを仕事に活かすにはどうしたらいいか」という話に主軸が移っている。


だから、今年のAdobe SummitのSneaksも、「プロンプトに文章を入れ、仕事を楽にしてもらう」ような技術が中心になった。

しかし、やっていることはどれも「こうやって面倒な仕事をAIが奪ってくれるのならなあ」と思わせるものばかりだ。

ここでは発表されたもののうちいくつかをご紹介しよう。

今回のSneaksのゲストは、元NBA選手のシャキール・オニール。伝説のバスケットボール・プレイヤーであり、史上最も体格の良い選手の1人(身長216cm)でもあるので、とにかく存在感抜群。

誰でもインフォグラフィックスが作れる「Project Infograph It」

今回発表された技術の中でも特にビジュアルがわかりやすいのが「Project Infograph It」だ。

動く図でデータをわかりやすく示す「インフォグラフィックス」を生成AIで簡単に作る「Project Infograph It」

インフォグラフィックスのニーズは高まっている。だが、IllustratorやExcelを駆使して作るのはかなり大変。デザイナーだけで作れるわけではなく、アナリストやマーケティング担当者など、関わる人も多くなる。

「Project Infograph It」では、プロンプトでスタイルや見せたい内容などを指定し、データを読み込むだけでインフォグラフィックスが出来上がる。他人に何かを依頼しなくても、現場担当者だけで作れてしまうのだ。これは結構インパクトが大きい。

「Project Infograph It」説明ビデオ

マーケの計画を自動立案する「Project Perfect Plays」

マーケティングキャンペーンというと、我々のように「受け取る側」は広告イメージを思い出す。しかしそれを世に出すには、「どんな製品を」「どんな顧客に向けて」「どんなタイミングで」「どんな素材を」「どこに出すのか」という計画立案が必須になる。

当然ながらこれがなかなか大変。特に現在はデジタルマーケティングが主流になり、ウェブ・動画・SNSと様々な媒体に、ベストなタイミングで展開する多様性が重要になっている。だからさらに大変なわけだ。

それを楽にするツールを売るのがAdobeの仕事でもあるのだが、「Project Perfect Plays」は、さらにそれを加速するのが狙いだ。

デジタルマーケティングの戦略立案をプロンプトで一気に行う「Project Perfect Plays」

プロンプトにマーケティングの狙いや製品の画像などを入力すると、そこから自動的に「顧客層」「戦略目標」などを軸とした、マーケティングプランの行動計画が出来上がる。もちろん、背後で動いているのは生成AIだ。

「Project Perfect Plays」デモビデオ

キャンペーンサイト立ち上げを自動化する「Project Ready Click Go」

マーケティングキャンペーンの計画はできた。では、そのキャンペーンを展開するウェブサイトはどう作るだろうか?

通常は、ウェブサイト管理の担当者と開発者を交えてミーティングを行い、計画を立て、開発し、そこから素材の調整を行なって……と長い期間が必要になる。

それをもっとシンプルにするのが「Project Ready Click Go」。生成AIとAdobeの管理ツールであるAdobe Experience Managerを組み合わせ、ウェブサイトを立ち上げ、さらにその上でのキャンペーンも最適化ツールであるAdobe Journey Optimizerと連動して展開してくれる……という仕組みだ。こちらもまた、「生成AIが面倒なプロセスを自動化してくれる」という方向性である。

マーケティングキャンペーン向けのサイト立ち上げを一気通貫で完結させる「Project Ready Click Go」
「Project Ready Click Go」デモビデオ

キャンペーンをサクサクパーソナライズする「Project Get Personal」

さて、マーケティングキャンペーンの展開が楽になるのはいい。

一方でいまや重要になっているのは、「リーチする消費者に対し、いかにパーソナライズされたキャンペーンを届けるか」ということである。当然そのための分析ツールなどはあるわけだが、その結果を反映したマーケティングコンテンツを「楽に作る」ことが重要になってくる。

そのためのツールが「Project Get Personal」だ。

例えば顧客の好みを類推し、それにあった画像をFireflyで作り、さらに色や文字などを簡単に修正し、ウェブサイトに反映できる。

「Project Get Personal」を使うと、メールマーケティングやSNS向けの広告画像を、よりパーソナライズした形で労力少なく作れる

ブランドルールとの合致を「Project Brand Slam」でチェック

生成AIでコンテンツを作る速度が上がるのはわかる。だが実際に企業が使うには、自社のブランドロゴやコピーなどのルールに適合しているものでないといけない。いわゆる「カスタム学習」が企業向けには必須、と言われるのはそのためだ。

生成AIで作ったものをそのまま使うことは実際には少なく、結局人間が使えるものを精査することに違いはないのだが、その作業もできるだけ少ない方がいい。

というわけで、生成AIで作られたデータなどについて、企業の定めるガイドラインに合致しているかを確認するための技術が「Project Brand Slam」だ。

「Project Brand Slam」では、用意した素材が社内で定めたブランドルールに合っているかをチェックし、修正まで自動的に行う

この技術も生成AIを使っているのだが、データを作る方ではなくチェックする方に使う。指定したブランドガイドラインから離れていた場合、自動的に修正を行う。

それでも人間の手による最終チェックは必要になるだろうが、なんでもかんでも責任者がチェックしなければならない状況を緩和することができそうだ。

「Project Brand Slam」デモビデオ

《西田宗千佳》

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