1週間の気になる生成AI技術・研究をいくつかピックアップして解説する連載「生成AIウィークリー」から、特に興味深いAI技術や研究にスポットライトを当てる生成AIクローズアップ。
今回は、レポートを「100%AI生成」と判定され不正行為を疑われた学生が、大学を相手に処分の無効を訴えた裁判記録を取り上げます。

▲裁判記録のトップページのスクリーンショット
米アデルファイ大学の1年生であるオリオン・ニュービーさんは、世界文明の授業で提出したレポートに対し、担当教授から0点の評価を受けました。その理由は、教授が使用したAI検出ツール「Turnitin」で、レポートが100%AIによって作成されていると判定されたためでした。
実はニュービーさんは、レベル2の自閉症スペクトラム障害の診断を受けており、大学では特別な支援を必要とする学生に向けたプログラムに参加していました。問題とされたレポートも、このプログラムのチューターからサポートを受けながら、自身が取り組んで書き上げたものでした。
担当教授との面談で、ニュービーさんはAIにレポートを書かせたことを否定しました。潔白を証明するため、ご両親も別のAI検出ツール(「Grammarly AI detector」と「zeroGPT」)を使用して、AI生成の可能性0%という結果を出し、客観的な証拠として大学側に提示しました。
しかし、大学の不正審査の責任者は、こうした学生側の事情や提出された証拠を却下し、ニュービーさんに剽窃(ひょうせつ)を防止するための講習を受けるように命じました。
ここで事態を動かしたのが、最初に0点をつけた担当教授自身の反応です。教授は、「大学の担当部署があなたのファイルを考慮して独自に判断してくれるものだと思っていたのに、実際は、再度異議を申し立てない限り自動的に不正をした扱いになるようです。短くていいから、異議があること、AIは使っていないこと、AIについての検討を続けてほしいことを返信した方がよいです。」と、ニュービーさんを擁護し不服申し立てを促すメールを送っていました。
この教授の後押しもあり、ニュービーさんは正式に不服を申し立てましたが、大学側は再びこれを却下したため、処分の取り消しを求めて裁判を起こすことになりました。
結果として裁判所は、大学側の対応は理不尽で不合理であるとし、授業料の返還請求を除き、処分の無効や違反記録の抹消といった学生側の主要な訴えを認めました。
裁判所が大学側を批判した理由として、告発した教授自身が手続きに疑問を示しており、違反認定の根拠が揺らいでいること、学生側の証拠(AI率0%の検出結果)も検討しなかったこと、最初の処分を下した責任者がそのまま不服申し立ての再審査も担当するという、不公平で実質的な意味を持たない仕組みになっていたことが挙げられました。さらに、学生が自分で選んだアドバイザーに相談する権利を保障しなかったことも指摘されました。



