使ってわかったApple Pencilの選び方。新発売のApple Pencil(USB-C)の立ち位置は?(村上タクタ)

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村上タクタ

フリーランスライター。1969年京都府生まれ。バイク雑誌編集者に憧れて上京し経歴を開始。ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌、デジモノの雑誌をそれぞれ7〜10年編集長として作る。趣味人の情熱を伝えるのがライフワーク。@takuta

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使ってわかったApple Pencilの選び方。新発売のApple Pencil(USB-C)の立ち位置は?(村上タクタ)
  • 使ってわかったApple Pencilの選び方。新発売のApple Pencil(USB-C)の立ち位置は?(村上タクタ)
  • ▲左からApple Pencil(USB-C)、Apple Pencil(第1世代)、Apple Pencil(第2世代)、それぞれの充電方法
  • ▲Apple Pencil(USB-C)はキャップ部分がスライドして、USB-Cコネクターを差し込める
  • ▲Apple Pencilの安価なニセモノと、LogicoolのCrayon(USB-C)。どちらも筆圧感知には対応していない
  • ▲ペン先の真鍮部分のたわみを筆圧として感知し、それをBluetooth経由でペアリングされているiPadに送る
  • ▲手書きでメモを取るなら筆圧を感知しなくても何ら問題はない
  • ▲筆圧感知するiPad ProとApple Pencil(第2世代)で線を引いたのが、手前の2本。上の2本は筆圧感知しないApple Pencil(USB-C)。表現力の違いは明らか。アプリはZen Brush 2
  • ▲上から、Apple Pencil(第1世代)(第2世代)(USB-C)。この3種類のApple Pencilは併売されるという

3種類目のApple Pencil、『Apple Pencil(USB-C)』が発表され、11月上旬に発売となる。この新しいApple Pencil(USB-C)を、ひと足先に試すことができたので、レポートしよう。

併売される3種類のApple Pencil。対応機種や機能が違うので注意

そもそも、なぜApple Pencilに3種類もバリエーションが必要なのか? その事情からご説明しよう。

まず、Apple Pencil(第1世代)は、初代のiPad Proと一緒に2015年11月に発表された。キャップを外して、iPadのLightningコネクターに挿して充電するタイプだ。

続いてApple Pencil(第2世代)は、サイドがスクエアになったiPad Pro 12.9インチ(第3世代)、11インチ(第1世代)と一緒に発売された。こちらは、iPadのサイドにマグネットで着けて充電するタイプだ。より洗練されているが、描画精度やレイテンシーなどは第1世代と変わらない。

▲左からApple Pencil(USB-C)、Apple Pencil(第1世代)、Apple Pencil(第2世代)、それぞれの充電方法

問題は、最新のもっとも安価なiPadである、『iPad(第10世代)』にある。iPad(第10世代)はUSB-Cコネクターを持つが、ボディサイドにApple Pencil(第2世代)を着けて充電することはできない。Apple Pencil(第1世代)をケーブルと変換コネクターで繋げて充電しなければならない。これは面倒だし、不細工だ。アップルの求める洗練とはほど遠いように思える。

そんなわけで、登場したApple Pencil(USB-C)。なんと、フタがスライドして、横向きにUSB-Cコネクター(メス)が現れる。ここにUSB-Cコネクターを挿すことでペアリング、充電を行うことができる。

▲Apple Pencil(USB-C)はキャップ部分がスライドして、USB-Cコネクターを差し込める

価格はApple Pencil(第1世代)の1万4880円(税込・以下同)、(第2世代)の1万9880円に対して、1万2880円と安価。しかし、Apple Pencil(USB-C)は筆圧感知機能が省略されている。

Apple Pencil(USB-C)に筆圧感知がない理由

賢明なるTechnoEdgeの読者諸兄は「ならば、LogicoolのCrayonや、社外のコピー品的なApple Pencilと同じだし、その方が安いじゃないか!」と思われるかもしれない。まぁ……そうだ。

▲Apple Pencilの安価なニセモノと、LogicoolのCrayon(USB-C)。どちらも筆圧感知には対応していない

しかしながら、アップル純正品として安心感があるし、デザイン的にも美しい。学校や会社での共同購入の場合、一緒に精算処理ができるというメリットもある……かもしれない。

また、一般ユーザー的視点で考えると、アップル純正品であればiPadと一緒に購入すると、Apple PencilもAppleCare+のサポートに含まれるというメリットもある。アップルの純正品を買うという意味はあるのだ。

「なぜ、筆圧感知機能を削るのだ!」と思われるかもしれないが、理由は筆圧感知の仕組みにある。画面上の位置や傾きの感知はiPadのディスプレイ側に設けられたセンサーで行っているが、筆圧感知はApple Pencilの先端(ペン先を外すと現れる真鍮の棒状の部品のたわみ)で感知しているのだ。そのデータを遅延なくiPad側に送信し、描画に反映するという高度な処理を行わないと、筆圧感知機能は実現しない。

▲ペン先の真鍮部分のたわみを筆圧として感知し、それをBluetooth経由でペアリングされているiPadに送る

そのため、筆圧感知機能を省略すると、ペン先の圧力センサーだけでなく、iPad側との低レイテンシーで通信を行う仕組みなども外すことができるので、コストダウンの効果が大きいのだ(だから、LogicoolのCrayonにも、社外のApple Pencilコピー商品にも筆圧感知機能は搭載されていない)。

たぶん、アップルも筆圧感知機能がApple Pencilの重要な要素であると考えていると思う。

しかし意外や、手書きメモなどの利用で、筆圧感知機能を活用していない人が多いというデータが得られたのではないだろうか? 「であれば、高コストな筆圧感知機能を省略した製品を作ろう」ということになったとしても納得できる。

学校で、GoodNoteなどにノートを取るとか、仕事上のメモ書きとか、案外筆圧検知機能を必要としない人も多いかもしれない。

メモを取るのに使うなら、Apple Pencil(USB-C)で十分

使用感は、想像通りというか、筆圧感知機能を使わない限り、従来のApple Pencilと何ら変わらない。絵を描かないという人ならこれで十分だろう。逆にメモ書きなどの用途なら、(アプリによるが)均質な線が引けて便利な側面もある。

▲手書きでメモを取るなら筆圧を感知しなくても何ら問題はない

筆者は絵を描いたりするのも好きなので、買うなら筆圧感知機能のある第1世代、第2世代を買うだろう。学校への大量導入などでは、今後安価なApple Pencil(USB-C)が増えそうだが、子どものクリエイティブな感性を育てるために、できることなら筆圧感知機能のあるApple Pencilを導入して欲しい。特に、幼い時期には『強く描くと、太い線が引ける』という感覚を学ぶことも大事なのではないか思う。また、Frescoや、Procreateで絵を描く人、CLIP STUDIO PAINTやアイビスペイントを使う人も筆圧感知機能付きが必須だろう。

▲筆圧感知するiPad ProとApple Pencil(第2世代)で線を引いたのが、手前の2本。上の2本は筆圧感知しないApple Pencil(USB-C)。表現力の違いは明らか。アプリはZen Brush 2

ペアリングや充電は、やはりiPadのサイドにくっつけるだけというApple Pencil(第2世代)の方が簡単。どこにでもあるUSB-Cケーブルとはいえ、ないと充電できないというのは手間だ。しかし、USB-Cで充電できるということは、逆に電源アダプターやモバイルバッテリーからも充電できるということで、iPadの側面にくっつけないと充電できなかった第2世代より、使い方によっては便利だと感じる人もいるかもしれない。

アップルの望んだことではないと思うが、複雑過ぎる

3本のApple Pencilは適合機種や機能が違うこともあって、今後も併売。時を追うごとに、約1cmずつ短くなるが、重さはほとんど同じとなっている。

▲上から、Apple Pencil(第1世代)(第2世代)(USB-C)。この3種類のApple Pencilは併売されるという

iPad(第10世代)に欧州の規制の都合上仕方なくUSB-Cコネクターを導入した……というのがこの混乱の原因だと思うが、3種類のApple Pencilを併売して、しかもそれぞれに対応機種が違うというのは、アップルの望んだことではないだろう。

ゆくゆくはLightningコネクターを持つApple Pencil(第1世代)がフェードアウトしていくのだろうが、現在のところiPad(第10世代)で筆圧感知機能を使うにはApple Pencil(第1世代)が必要なので、しばらくはラインアップに残っていると思われる。


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《村上タクタ》

村上タクタ

フリーランスライター。1969年京都府生まれ。バイク雑誌編集者に憧れて上京し経歴を開始。ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌、デジモノの雑誌をそれぞれ7〜10年編集長として作る。趣味人の情熱を伝えるのがライフワーク。@takuta

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