AppleやIBMが採用、多くのPCで使われた5.25インチFD「ミニフロッピーディスク」(109KB~、1976年頃~):ロストメモリーズ File026

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宮里圭介

宮里圭介

ディスク収集家

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需要のわからない記事を作る自由物書き。分解とかアホな工作とかもやるよー。USBを「ゆしば」と呼ぼう協会実質代表。

特集

AppleやIBMが採用、多くのPCで使われた5.25インチFD「ミニフロッピーディスク」(109KB~、1976年頃~):ロストメモリーズ File026
  • AppleやIBMが採用、多くのPCで使われた5.25インチFD「ミニフロッピーディスク」(109KB~、1976年頃~):ロストメモリーズ File026
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[名称] ミニフロッピーディスク、130mmフレキシブルディスクカートリッジ
(参考製品名 「MD2-256HD」他)
[種類] 磁気ディスク
[記録方法] 磁気記録
[メディアサイズ] 約133.5×133.5×1.7mm(実測)
[記録部サイズ] 直径約130mm
[容量] 109.4KB~1.6MB(アンフォーマット時)
[登場年] 1976年頃~

ひとつ、またひとつと消えていき、記憶からも薄れつつあるリムーバブルメディア。この連載では、ゆるっと集めているメディアやドライブをふわっと紹介します。

ロストメモリーズの記事一覧

「ミニフロッピーディスク」は、5.25インチサイズのフロッピーディスク(以下、FD)。8インチのFDをベースに小型化されたもので、Shugart Associates社によって開発されたFDドライブ「SA400」で採用されたのが最初です。

大抵のディスクのパッケージに「ミニフロッピーディスク」(多くの場合、「Mini-Floppy Disk」という英語表記ですが)という名称が記載されていますが、この名称で呼ぶ人は多くありません。一般的には「5.25インチFD」や「5インチFD」といった、「サイズ+FD」の名前で呼ばれています。

これは単純に、フロッピー(8インチ)、ミニフロッピー(5.25インチ)、マイクロフロッピー(3.5インチ)という3つのサイズが、同時に現役だったことが影響していそうです。もちろん登場年に差はありますが、オーバーラップしている期間が長く、サイズを含めた名称の方が明確に区別できるぶん、分かりやすかったためだと考えられます。

8インチを知らない人に「ミニフロッピー買ってきて」といえば、「ミニというくらいだから小さい方だろう」と考え、結果、3.5インチFDを買ってくるだろうことは想像に難くありませんしね。

▲8インチ、5.25インチ、3.5インチのサイズはこのくらい違います

ちなみに、規格上の名称は「130mmフレキシブルディスクカートリッジ」。普段はインチ表記を嫌っていますが、FDの区別に関しては、使い慣れたインチのほうが分かりやすいですね……悔しいですが。

最初に登場した5.25インチFDドライブ、Shugart社のSA400は、基本的に8インチFDドライブの技術を使用し、小型化した仕様。そのため、FDのトラック密度は48TPIのままで、面積が小さくなったぶんトラック数が77から35と半分以下となり、容量も109.4KBと小さいものでした。これが片面・単密度の「1S」となります。

▲自信はないですが、種類が明記されていないので1Sかも?

この5.25インチFDに目を付けたのが、Apple社です。SA400の機構部分だけをShugart社から購入する契約を結び、コントロール基板を自作。Apple II用のドライブとして「Disk II」を作り上げました。これによって、5.25インチFDは広く一般に認識されるようになっていきます。

Shugart社はSA400の後継として、変調方式をFMからMFMへと変更し、両面記録にも対応したSA450を開発。このドライブではトラック数は片面35(両面で70)のままでしたが、この後、Tandon社がトラック数を片面40(両面で80)に拡張したTD100を開発し、容量を500KBへとアップ。この両面・倍密度となる「2D」仕様のドライブが、1981年以降の多くのPCで採用されていきます。

▲両面記録で容量が500KBになった2D

さらに、5.25インチFDは径が小さいことから、ディスクの温度・湿度による伸縮が小さく、トラック密度を高められます。このトラック密度の拡張で、トラック数が片面40から80(両面160)へと倍増し、1MBを実現。これが、両面・倍密度・倍トラックの「2DD」です。

▲トラック密度が2倍になった2DD

ここまでは物理的な部分はほぼ共通でしたが、さらなる大容量化にはディスクの保磁力が足りません。そこで、磁性体材料に従来から使われていたγ酸化鉄ではなく、Co-γ酸化鉄を採用。保持力を約2倍に引き上げることで、記録密度を1.6倍に向上させることに成功しました。これが、両面・高密度・倍トラックの「2HD」となります。

▲磁性体材料の変更で高密度化した2HD

2HDでは容量が増えただけでなく、回転数が300rpmから360rpmへと高速化され、データ転送レートが500kbit/sへと引き上げられました。ちなみに日本では、8インチFDとの互換性を重視した仕様として、トラック数を片面77(両面154)としたものを採用。これにより、8インチの2Dディスクと共通となり、移行がしやすくなりました。なお、この仕様を提案したのは、当時の日本電信電話公社です。

▲5.25インチFDの種類と主な仕様

この表では、実物やカタログで存在が確認できた5.25インチFDをまとめてみました。トラック数の違いはメディアにはあまり関係なかったりもしますが、一応記載しています。

なお、これ以外に2EDもありますが、富士通のOASYSでしか使われなかった特殊なものなので、今回は除外します。

これら5.25インチFDは容量が異なりますが、形状に関してはすべて同じ。ということで、その特徴を見ていきましょう。


基本は8インチFDと同じでも、ライトプロテクトに違い

元々、8インチFDの小型化として始まったこともあって、その構造はほぼ同じ。フィルムに磁性体を塗布したディスクを記録部とし、塩化ビニルなどで作られたジャケットに封入されています。

ただし、ひとつだけ変わったのが、ライトプロテクトの方法。8インチFDでは挿入口付近の一部を切り取るというものでしたが、5.25インチFDでは、右辺の一部が最初から切り取られている形となっています。

▲8インチFDをそのまま小型化したかのような形状

この切取り部分がそのままの場合は、書き込み可能。塞がれている場合は、書き込み禁止となります。塞ぐ方法は、付属のシールを貼るというとてもシンプルなもの。

8インチFDとは意味が反転しましたが、パンチなどを使って切り取る必要がなくなったぶん、使いやすくなりました。

▲ライトプロテクト用のシールが付属しています

中央の穴は、モーターと接続するセントラルウィンドウで、この右方向にある小さな穴が、インデックスウィンドウです。この小さな穴からディスクに空けられた穴を検出し、トラックの開始位置を認識できるようになっています。

細長い穴はヘッドウィンドウで、ドライブのヘッドがここに押し当てられ、データを読み書きします。

裏面は、インデックスウィンドウの位置と、ライトプロテクトの切り欠き位置が左右逆になるだけで、とくに大きな違いはありません。製造上の都合、3辺が折り曲げられて溶着されている、という見た目の違いはありますけど。

▲3辺が折り曲げられ、溶着されています

なお、誤挿入防止の仕組みがないため、裏表間違えて挿入できてしまいます。といっても、その場合は右辺に切り欠きがない、つまり、ライトプロテクトシールが貼られた状態と同じになるため、書き込み禁止となるので安心を。まー、そもそもインデックスウィンドウが見えなくなるため、基本的にアクセスできませんけどね。

ただし、AppleのDisk IIは、インデックスウィンドウを使わずにトラック位置を認識する方式を採用していたため、裏表逆でもアクセス可能でした。これを逆手に取り、左右両方にライトプロテクト用の切り欠きを作って、片面記録だったDisk IIで両面使えるようにする、なんていう小技がありました。ディスク1枚で容量が2倍になるのですから、使わない手はないですよね。

また、他の片面ドライブでも両面使えるように、インデックスウィンドウも最初から左右両方にある、という特殊なディスクも存在します。

▲ライトプロテクト、インデックスウィンドウが左右両方に

これらはあくまで、片面ドライブが使われていた時のもの。両面ドライブが主流になった後は、当然のように使われなくなりました。

ジャケットの内側には、不織布が貼られています。ディスクが余裕で空回りできるほどの空間は確保されていないので、この不織布に接触しながら回転することになります。回転数は300~360rpmと高くないとはいえは、ちょっと心配になりますね。

▲内側には不織布が貼られています

利用頻度、信頼性、経済性を考慮すれば妥当なのでしょうけど、これでいいんだ……と、今更ながら思ったりしました。

個人向けでも広く使われた5.25インチFD

8インチFDは個人で使われることが少なく、職場で使ったという人が多いでしょう。これに対し5.25インチFDは、1980年代に登場した個人向けのホビーPCなどで採用されることが多く、この時代にPCを使ったことがある人なら、懐かしく思い出すのではないでしょうか。

基本的にどのメーカーのFDも黒ばかりでしたが、差別化なのか、後期になるとカラーディスクが登場。また、10枚セットに体験版ソフトが書き込まれたディスクが1枚オマケで付いてくる、といったものもありました。

ちょっと珍しいところでは、ジャケットにイラストの入ったFDが雑誌の付録になったこともあります。ゲームソフトでこういうのを作っても良かったんじゃないかと思いますが、エンベロープやラベルで十分だったのでしょう。全然流行りませんでしたね……。

▲月刊ポプコム 1989年11月号付録

最初の方にちょっと書いたように、磁性体材料は基本的に2DDまですべて一緒。FDには形状の違いもないため、1Sだろうが2DDだろうが、フォーマット次第で同じように使えます。

唯一異なる2HDもドライブ側から識別する手段がないため、2DDなどとしてフォーマットできてしまいます。この逆に、2DDのFDを2HDフォーマットすることもできました。安い2DDのFDを2HDフォーマットし、容量を増やして使う、なんてことができたわけです。

ただし、保磁力の強い2HDのFDには強い磁力で書き込むため、2DDのFDだと周囲にまで磁力の影響が広がります。また、記録される磁力も弱いので、最初は大丈夫でもしばらくするとデータが読めなくなる、といったことが起こってしまいます。こういったことを踏まえてか、3.5インチFDではメディアの種類を識別できる機構が追加されています。

とくに日本では5.25インチFDが長いこと使われましたが、1990年代には3.5インチFDが主流となり、Windows 3.1が登場する頃には、ほとんど使われなくなりました。


参考:

ロストメモリーズの記事一覧
《宮里圭介》

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