USB-C版AirPods Proは低遅延ロスレス対応、防塵防滴も強化 「端子違い」ではない実質新機種。iOS 17だけの新機能も(本田雅一)

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本田雅一

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ネット社会、スマホなどテック製品のトレンドを分析、コラムを執筆するネット/デジタルトレンド分析家。ネットやテックデバイスの普及を背景にした、現代のさまざまな社会問題やトレンドについて、テクノロジ、ビジネス、コンシューマなど多様な視点から森羅万象さまざまなジャンルを分析。

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昨年から販売中の第2世代 AirPods Proが、「第2世代」の冠はそのままLightning端子からUSB-Cに更新された。これでiPhone 15/15 Pro以降と組み合わせれば、Lightningケーブルを用意しておく必要もなくなるわけだ。

6月のWWDCではiOS 17のリリースとともに、第2世代AirPods Proに3つの機能が追加されるとアナウンスされており、既存ユーザーも含めてより高い利便性を得られる。

追加機能は3つ。

周囲の騒音環境や装着者の動き方など、センサーが常に検知している雑多な情報からユーザーの情報を機械学習で判別し、ノイズキャンセリングの利き方を自動調整する"適応型オーディオ"

周囲の環境とコンテンツに応じて音量を適切に自動調整する"パーソナライズされた音量"

そしてユーザーが喋り始めたことを検知し、音楽などコンテンツ音の音量を下げた上で外音取り込みモードに切り替える"発話検知"だ。

それぞれについて、後ほど簡単に紹介するがその前にLightning版とUSB-C版は、同じように"第2世代"をうたってるが、実はハードウェアの機能が異なるという点に注意して欲しい。

今後、Lightning版の在庫が安価に販売されるケースもあるかもしれないが、両者は同一ではない。USB-C版は第2.5世代と表現した方がいいだろう。


IP54の防塵防滴仕様、低遅延ロスレスモードに対応

USB-C端子からの充電が可能になった点は一番の大きな違いだが、さらにIP5X準拠の防塵性能が追加され、IP54に準拠した防塵、防滴、防汗仕様となった。(Lightning版はIPX4のみ)

とりわけランニングなどで使ってる人には嬉しい仕様向上だが、実はアップル独自の手法で20bit / 48kHzのロスレス音声転送が可能になっている。

ただし、この転送モードは接続先デバイスにも、第2世代AirPods Proが搭載するH2チップを搭載している必要がある。理由は明らかになっていない。

現時点でH2チップを搭載するホストデバイスは存在しないが、来年発売予定の空間コンピュータApple Vision Proは対応する。

この低遅延ロスレス音響は、Apple Vision Proにおける空間オーディオを、より的確に表現するために組み込んだものだ。

"ロスレス"ということで音質向上に期待する向きもあるだろう。実際、立体音響を再現するために役に立っている面はあるだろうが、最も大きな要素は"超低遅延"なこと。条件にもよるが、"一桁"ミリ秒以内に収まるよう設計されている。

これにより、Vision Proが描き出すミックスドリアリティ(MR)の世界に、遅延なく立体音響を重ねることが可能になり、自分自身のアクションと立体音響のズレも認知できないレベルに抑え込むことができる。

現時点ではこの技術をMR以外の用途にも活用するかどうかは不明だが、実装そのものはH2さえホストに組み込まれていれば問題なく行えるようだ。

ちなみに接続そのものは通常通り、Bluetoothを通じて行い、双方の条件や必要に応じて自動的に通信手順が切り替わる仕組み。アップルは具体的な手法を公開していないが、Bluetoothが使っている物理的な無線通信やデータリンクの仕組みはそのまま、より上位の手順を簡素化しているものと推測できる。

Vision Proの日本導入はかなり先と見られるため、そのためだけに買い換えるのはナンセンスだが、新規に購入する場合はIP54対応であることも考えれば、あえてLightning版を選ぶ理由はないだろう。

iOS 17由来の機能はライバルにもあるが……

さて、ここから先はLightning版の第2世代AirPods Proでも利用可能な、iOS 17との組み合わせで"アンロック"される機能に話を進めよう。

適応型オーディオは、機械学習によりユーザーが置かれている環境を判別し、ノイズキャンセリングの利き方を自動調整する機能だ。自宅やカフェ、移動中の電車や飛行機内なら可能な限り静かに過ごしたいだろうが、街中を歩いているときには、適度に周囲の状況を知りたいもの。ノイズキャンセリングをその場に合わせた効き具合にする機能はソニーが先鞭をつけたものだ。

まだ完全に比較はできていないが、切り替わりをあまり意識せずに使えるところが好印象だった。ただし、必ずしも意図通りになるわけではなく、その際にはいつも通りに軸部分の圧力センサー長押しで切り替える必要があろう。

東京の街中での利用では、電車内のアナウンスが聞き取りやすくなり、電車を降りて歩き始めると周りの状況が聞こえてくるなど、なかなか自然な切り替わり。急な変化ではなく滑らかな変化が好ましい。

パーソナライズされた音量は好みの音量を学習していき、音楽や映像、ウェブコンテンツの音量など、様々な音のレベルを最適もしてくれる。

単なるノーマライズと異なるのは、音量調整をユーザーが行なっていると学習をしてくれること。周りのノイズ環境でも音量を変え、ユーザーが好みの音量レベルへと自動的に合わせ込んでくれる。

発話感知は、ソニーの上位モデルに搭載されている"Speak to Chat"と同等の機能。自分が話し始めるとコンテンツ音量が下がり、外音取り込みモードになるが、ほんの少しモードに入るまでのラグを感じる。これは誤検知を意識してのことだろうが、外音取り込みモードになるまでの少しばかりの間が個人的には気になる。ただ、自分が話をしていない場合でも会話相手が応答している間はモードが外れないなど、なかなか使いやすい。

デフォルトではオフだが、筆者は常にオンにしておいても良いかな? と思っている。機械学習処理がうまく実装されているようで、咳払いやちょっとした独り言ぐらいには反応しない、との触れ込みだが、実際には多少、誤動作はある。それも実際の話し相手がいないとすぐに戻るので、機械学習が進めばもっと精度が高まるかもしれない。

そのほか同じApple IDを共有しているアップルデバイスごとの切り替わりが素早くなったことも体感できる。

ちなみに、USB-C版AirPods Proは基本的なドライバ構成などアナログ面での音質設計は変わっていない。

なおAirPods Proのアップデートは手動では開始できない。

iOS 17が導入されたiPhoneとペアリング、接続した上でイヤーピースをケースに入れていると、十分に充電された状況で自動アップデートがかかる。数時間の場合もあれば、30分程度で終わる場合もあるため、近くに置いてしばらく放置しておくのがいいだろう。

無事、アップデートされれば、iPhoneのロックを外す際にアップデートした機能を説明するパネルが自動ポップアップするはずだ。


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《本田雅一》

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