KDDIが発表した法人向け新サービス「KDDIスマートスペースデザイン」は、働く空間や訪れる空間を、通信とテクノロジーを軸に再構築していくというもの。その中でも注目を集めたのが、会見終盤で披露された「オフィスレイアウト生成AI」のデモです。

このAIは、オフィス移転やレイアウト変更の際に必要となるゾーニングや家具配置、さらには概算見積もりまでを、たった15分ほどで自動生成してくれるというもの。従来は建築士と何度も打ち合わせを重ね、数カ月かかっていた作業を、ほぼリアルタイムでやってのけます。建築士や設計担当のノウハウを学習しており、現在は特許出願中とのこと。
使い方はシンプルで、オフィスの目的や重視したいポイントを入力していくだけ。AIが最適なレイアウトやゾーニングを2D/3Dで出力し、必要な家具や設備、予算レンジまで提案してくれます。いきなりCADデータを生成するわけではないですが、初期イメージを掴むには十分すぎる内容で、KDDIでは「まずは総務部が試してみて、気に入ったら相談してほしい」としています。
今回の生成AIは、単なるレイアウト作成ツールではありません。KDDIが強みとする通信やIoT、ロボット活用までを前提に設計を進められるのがポイントです。ロボットの動線や5Gのアンテナ位置、自動ドアやエレベーター連携まで、建築前から盛り込んでいけることで、「完成後に通信系を後付けして工事やり直し」といった無駄を避けられるようになります。
KDDIはこのAIをきっかけに、レイアウト・通信・重機・ロボット動線をパッケージ化し、月額サービスとして提供する構想も進めているそうです。目的に応じて空間を柔軟にアップデートできるようになれば、レイアウト変更のたびにモノを買っては捨てる、というこれまでの常識も見直されるかもしれません。
デモで紹介されたのは、ビル建設前のコンセプト策定からテクノロジーを織り込むフロー。たとえばロボットが自分でエレベーターを呼び、フロアを移動し、オフィス内を自律的に回遊するシナリオが、設計段階から実現可能になります。「人とロボットが自然に共存できる空間」を目指すというKDDIの構想は、会場内でも強く印象に残りました。
なお、このレイアウト生成AIは、将来的にWeb上での無料提供も予定しており、誰でも手軽に試せるようになる見込みです。現在はまだ基本設計レベルですが、データが蓄積されていけば、実施設計や施工フェーズとの連携も視野に入ってきそうです。
説明会の最後には、「これからは倉庫やスタジアム、複合施設など“訪れる空間”にも展開していきたい」といった展望も語られました。現地のKDDI高輪本社では、レイアウト生成AIの実機デモが常設されているとのこと。気になる方は一度体験してみるのもおすすめです。通信とAIがオフィスづくりをどう変えていくのか──その入口が、すでに現実のものになりつつあります。
