ローソンで書き換え可能だったNINTENDO POWER用ゲームカートリッジ「SFメモリカセット」「GBメモリカートリッジ」(1997年頃~):ロストメモリーズ File019

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宮里圭介

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需要のわからない記事を作る自由物書き。分解とかアホな工作とかもやるよー。USBを「ゆしば」と呼ぼう協会実質代表。

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ローソンで書き換え可能だったNINTENDO POWER用ゲームカートリッジ「SFメモリカセット」「GBメモリカートリッジ」(1997年頃~):ロストメモリーズ File019
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[名称] SFメモリカセット、GBメモリカートリッジ
(参考製品名 「SHVC-P-MMSA」「DMG-P-MMSA」)
[種類] フラッシュメモリー+SRAM
[記録方法] Loppi
[メディアサイズ] 128×88×20mm、57×65×7.8mm(実測)
[記録部サイズ] ----
[容量] 32Mbit+256kbit(SFメモリカセット)、8Mbit+1024kbit(GBメモリカートリッジ)
[登場年] 1997年頃~

ひとつ、またひとつと消えていき、記憶からも薄れつつあるリムーバブルメディア。この連載では、ゆるっと集めているメディアやドライブをふわっと紹介します。

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「SFメモリカセット」「GBメモリカートリッジ」は、任天堂が開発したゲーム書き換えサービス「NINTENDO POWER」(ニンテンドウパワー)用のカートリッジ。ローソンに設置してある「Loppi」を操作することで、ゲームを書き換え購入できたのが特徴です。

スーパーファミコン用の「SFメモリカセット」(3980円)が本格的に登場したのは、1997年11月。既に前年の1996年にはNINTENDO64が発売されており、旧機種用の新サービスという、少し不思議な立ち位置で始まりました。

カートリッジで提供するゲームは、お店の販売スペースの取り合いとなるため、旧機種用のゲームを残してしまうと新機種用のゲーム販売スペースが圧迫されてしまいます。かといって、新機種用のゲームばかり売るのでは、すぐにはゲーム機を買い替えないライト層がゲームを買えなくなってしまいます。

遊ぶだけなら中古で買うというのが安く遊べる方法ですが、これではゲーム開発元には一銭も入りません。廉価版として再販するという手もありますが、結局売り場の取り合いになってしまい、本末転倒です。

これを解決するため、手軽なゲームソフト販売方式として誕生したのが、「NINTENDO POWER」です。これは、1つのカートリッジに複数(最大7つ)ゲームの書き込み/書き換えができるというサービス。ローソンに置かれていたマルチメディアステーション(MMS)、つまりLoppiを操作して購入申し込みをし、レジでお金を払って店員さんに書き込んでもらうという手順です。

▲カートリッジを挿し込んで購入を申し込みます

旧作であれば1000円程度、新作でも2000~4000円程度と割安に設定されていたため、手頃な価格でゲームが購入できました。

▲Wayback Machineでたどれるソフト一覧の一部

また、この方式は在庫リスクがない、中古と違って開発元に売り上げが入る、パッケージ生産の必要性がないので早くリリースできるというのがメリット。安く買えるユーザーはもちろんですが、販売店や開発元にもメリットがあったわけです。古くはディスクシステムの書き換えサービスやソフトベンダーTAKERU、今でいえばダウンロード販売みたいなものですね。

2000年3月にはゲームボーイ向けのサービスが追加され、専用カートリッジ「GBメモリカートリッジ」(2500円)が発売されました。ちなみに、GBメモリカートリッジも複数(最大7つ)のゲームが書き込めます。

ということで、この2つのカートリッジを見ていきましょう。

中身は専用ICとフラッシュメモリー、SRAM

どちらも見た目は、普通のスーパーファミコン用カセット、もしくは、ゲームボーイ用カートリッジです。

▲左がSFメモリカセット、右がGBメモリカートリッジ

通常と大きく異なるのは、正面に1~7までの数字がついた四角が並んでいること。ここは付属のインデックスシールを貼る場所で、書き込んだゲームタイトルを記入し貼ることで、なんのゲームが入っているのかがわかるようになっています。

▲カートリッジ付属のインデックスシール

ちなみに、SFメモリカセットに貼られているイラスト入りのインデックスシールは、おそらく「NINTENDO POWER 公式遊び方BOOK」というムックの付録。中古で手に入れた時から貼られた状態でした。

書き込めるゲーム数は「最大7つ」なのですが、なぜ「最大」という微妙な書き方をしているかといえば、ゲームソフトによってサイズが変わるためです。

ちょっと複雑なのですが、どちらもゲームソフト書き込み用の「Fブロック」(分割したフラッシュメモリー領域)を8つ、ゲームデータ保存用の「Bブロック」(分割したSRAM領域)を16持っています。

さきほどのSFメモリカセットを例にすると、「牧場物語」がFブロック4+Bブロック4、「ツインビー レインボーベルアドベンチャー」がFブロック2+Bブロック4必要とします。つまり、この2つのゲームソフトが書き込まれていると、Fブロック6+Bブロック8が使用された状態となるわけです。

残りはFブロック2+Bブロック8しかありませんから、最大でも書き込めるのはあと2本。それ以上書き込みたければ既存のゲームを消して、ブロックを開放しなくてはなりません。

複数ゲームを1つのカートリッジで楽しめるというのも魅力のひとつだと思うのですが、容量制限を考えるとなかなか厳しいものがありますね。

カートリッジの裏面は、これといった特徴はありません。どちらも「MADE IN TAIWAN」という刻印があるくらいです。

▲GBメモリカートリッジのネジは裏面

これで終わってしまうのもつまらないので、中身を見てみましょう。まずはSFメモリカセットから。ネジは特殊な形状となっているので、特殊ドライバーを使うなどして外します。

▲SFメモリカセットの中身

中の基板は結構シンプル。中央にあるMegaChips MX15001TFCは、Loppiとの通信やゲーム選択メニューなどのプログラムが書き込まれているであろうIC。左下にあるNintendo F411Bは、偽造防止用のチェックICで、スーパーファミコン用のカセットではよく採用されているものです。

左上に2つ並んでいるMX 29F1601MCは、16Mbitのフラッシュメモリー。2つあるので32Mbitとなります。右上にあるSEC KM62256CLGは256kbitのSRAMで、ゲームデータの保存用です。その下のM134Bは、シルクにあるMM1134BFというのが正式名。本体電源オフ時にS-RAMの内容をバッテリーバックアップするためのICです。

▲GBメモリカートリッジの中身

GBメモリカートリッジはさらにシンプルで、3つしかICがありません。中央にあるMegaChips MX15002UCAがLoppiとの通信などを行うメインIC、右下のMX 29F008ATCが8Mbitフラッシュメモリー、左上のHYUNDAI HY628100Bが1024kbitのSRAMです。

SFメモリカセットのバックアップ電池はCR2032でしたが、GBメモリカートリッジでは、より薄型のCR2025となっていました。

開始から1~2年で新規登録が失速し、短期間で撤退

自分がゲーム関係に疎いこと、また、Loppiを触る機会が全くなかったということもあり、そもそも、NINTENDO POWERというサービスをやっていたことを知ったのがここ最近。そのため、当時どのような受け止め方をされていたのかはわかりません。

ただ、個人売買サイトをチェックしているとSFメモリカセットの流通量は多く、それなりに利用されていたようです。また、最初からゲームが書き込まれているカートリッジもあり、割安に過去のタイトルを追加できるという点で、お買い得だった……かもしれません。

そうはいってもSFメモリカセット向けのタイトル登録数は、1999年には失速。2000年はわずか6本で、2000年12月の「メタルスレイダーグローリー ディレクターズカット」が最後となりました。

据え置きのゲーム機はプレステとサターンがシェアを伸ばし、NINTENDO64もそれなりに台数が出て、さらにドリームキャストも発売された後ですから、さすがにスーパーファミコン離れが進んだ結果といえるでしょう。

もうひとつのGBメモリカートリッジはどうかというと、1999年11月に提供開始予定が、台湾大震災の影響でカートリッジ生産に遅れが出て、2000年3月にずれ込むというトラブルがありました。ほとんどのゲームが税別1000円以下と安かったのは魅力ですが、大部分は開始直後の2000年の登録で、2001年には早くも失速。2002年1月の「Loppiパズルマガジン ひらめくパズル第3号」を最後に追加されなくなりました。

元々旧機種向けのサービスですから、対象となるユーザー数が増えることはありません。そういった事情もあってか、Loppiでの取り扱いは2002年8月で終了。事実上のサービス撤退といっていいでしょう。その後は任天堂の「お客様ご相談窓口」へと郵送しての書き換え対応となりました。

そしてその郵送対応も、2007年2月で終了しました。……意外と長くやっていたんですね。

参考:

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ローソンの看板 そのまんまルームライト
¥9,590
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《宮里圭介》
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