Apple Vision Pro体験者が7つの疑問に答える。装着感、バッテリー、リアルとのずれ、心打たれたポイント

ガジェット XR / VR / AR
村上タクタ

フリーランスライター。1969年京都府生まれ。バイク雑誌編集者に憧れて上京し経歴を開始。ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌、デジモノの雑誌をそれぞれ7〜10年編集長として作る。趣味人の情熱を伝えるのがライフワーク。@takuta

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Apple Vision Pro体験者が7つの疑問に答える。装着感、バッテリー、リアルとのずれ、心打たれたポイント
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アップルの世界開発者会議WWDC23初日である6月5日、基調講演の後に、Steve Jobs Theaterの地下ロビーでVision Proの実物が展示された。しかしこれは展示のみで、触れたりすることはできなかった。


そして6月5日の午後から6月6日にかけて、一部のジャーナリストがApple Park内の某所(場所は非公開)で、Vision Proを体験することができた。筆者は幸運にもその機会を得たので、知り得たことを、Q&A形式で回答しよう。

なお、その体験の舞台となった部屋は、アップルのプレゼンテーションに出てくるような広いリビングを模した部屋。筆者は大きな3人がけのソファーに座っており、前にローテーブル。正面は壁。そして、ローテーブルの左右には1人がけのソファーがあり、人がいるという状態だった。

正確には計測していないが、体験時間はおそらく40分ぐらい。前後にセッティングや順番待ちなどを含めて1時間半ぐらいを費やしたと思う。

完全にパーソナルな体験で、落ち着いた空間が必要で、視力矯正対応のレンズの入れ替えや、Face ID、空間オーディオの登録、瞳孔間距離の調整、アイトラッキングの設定……などが必要。

いずれも簡単なものではあるが、最適な環境で試してほしいという意気込みを感じる。これほどに時間と空間が必要とされたので、体験できる人数が限られたというわけだ。

Q1 装着感はどう? 


良好。

後頭部のヘッドバンドは、幅が広く、おそらく上下にワイヤー(のような線状のもの)が通っていて、そのワイヤーを右側頭部にあるダイヤルで締められる。その間にあるジャバラ状の部分の幅が非常に広く、広い範囲で支えてくれるので非常に収まりがいい。

ゴーグル部分も薄く作られているので、重心から遠くならず、重さを感じにくい。取材時には実は、頭頂部を横にわたるトップバンドが追加されており、一般に公開されている写真と違うが、そのトップバンドがある方が快適に装着できていたので、これは効果的なパーツだと思う。

▲Meta Quest Pro用には、サードパーティから頭頂部を支えるトップバンドが販売されている

最終的な仕様はまだ決っておらず、快適な装着感を求めてまだテストを続けている最中だという。実際には40分足らずしか装着していないので、長時間使うとどうはわからないが、これまで経験したVR、ARデバイスの中で、トッププラスの装着感だと思う。

そういう意味では(邪魔ではあるが)バッテリーを別体としたのは正解だった。

Q2 ゴーグルの中ではどんな風に見えるの? 実景とのズレは?


標準状態では、自分の部屋の中が見えている。これは、光学的に透過して見えているわけではなく、外側にある多くのカメラやセンサーの映像を使って、ヘッドセット内のディスプレイに表示しているものだ。

通常、こういうパススルーのARの場合、映し出されている映像と、実際の場所の間に多少のズレがあったりするのが普通。しかし、Vision Proの場合、そういうズレは非常に少ない。だから、家の中であれば歩いて移動したりすることも可能。ズレが少ないので、その映像を頼りにテーブルの上の本を手に取ったりすることも自然にできる。

その上に、通常、ウィンドウを介してアプリが表示されたりする。ウィンドウは磨りガラスをモチーフに描かれている(グラスウィンドウと呼んでいる)。ウィンドウの枠の部分は半透明になって、背景を透過し、アプリ内の情報が表示されている部分は不透明となる。

背景として表示されている実際の室内風景は、『エンバイロンメント(Environment)』という機能で、用意された仮想の環境で覆うことができる。エンバイロンメントの介入度はデジタルクラウンを回すことによって0~100%まで自由に調整できる。

つまり自室にいるか、エンバイロンメントとして提供される風景の中にいるか、それともその間にいるかは自由に選べるというわけだ。

エンバイロンメントは画面の中央を中心に染み出すように視界を覆う。中間の状態では、前はエンバイロンメント内で、背後は実際の室内風景、そしてその間はグラデーションで繋がった状態となる。

Q3 バッテリーが外部接続で、2時間しか持たない点は?


たしかに首の後ろに突き出てポケットに入ったバッテリー本体までケーブルが見えているのはAppleらしからぬ不細工さだが、装着感向上のために本体重量が増すのを避けたかったのだろう。そして、それは効果を発揮している。

バッテリーにはUSB-Cポートが設けられており、そこに電源を繋ぐことで長時間利用も可能。AC電源に繋げば電池切れの心配はなくなるし、モバイルバッテリーに繋ぐこともできる。

そもそも安全性の面から言っても、戸外を歩き回るデバイスではないので、定位置にいるなら電源に繋げば良い。

『バッテリー持続時間2時間』という情報が、二時間使ったら充電待ちのようなニュアンスで独り歩きしているが、基本的には屋内用の製品であり、電源につなげば連続して使えることを考えればそこまで強い制約ではないと感じた。

Q4 所有者以外も使えるの?


今回、メディア試用のためにたいへん時間を取ったように、最善の状況での試用には準備が必要だ。

Optic IDという虹彩認証で利用できるようになり、ユーザーのみが様々な個人情報(ブックマークから、写真などに至るさまざまなiCloudデータも)を閲覧できるはずなので、他人にいきなり貸してもほぼ使えなさそう。

ただ、個人情報にはアクセスしないゲストモードも用意されるそうだ。今回の試用時間では試せなかったので詳細は不明。

Q5 既存のVRヘッドセットといったいどこが違うの?


アップルは『空間コンピューティング(Spatial Computing)』と呼んでいる。

たとえば、MacBook、たとえばiPhoneというモノを見つめる制限を受けずに、空間全体でコンピュータ体験を得る、iCloud情報にアクセスする……というものだと思う。

ウェブをブラウズし、写真を見て、SNSにアクセスし、ドキュメントを作り、FaceTimeで通話する。そんな、iPhoneやMacで我々が一日中やっていることを、それらデバイスの場所や画面の制限から解き放って行おうというものだ。

一度体験していただけば分かるのだが、いつでも思う場所にアプリの画面を浮かべて使うのはとても便利なことだ。

もちろん、ハードウェア上はVRゴーグルに近いものだし、エンバイロンメントを100%にすればVR空間にいるのと変わらないが、アップルはVR空間という異世界に人を送り込むのではなく、現実世界を拡張しようと思っているのだと思う。それゆえ、プレゼンテーションではVRという言葉も、ARという言葉もあまり使わなかったのだと思う。

つまりは、従来の製品で実現していたようなVRやARとして理解しようとすると、Vision Proの本質を捉え損なうということである。『空間コンピューティング(Spatial Computing)』とは何かということを問い続ける必要があるし、それはアップルにとっても、今まさに追求し始めたことなのだと思う。

Q6 自分が見ている映像を外部に出力はできない?


私の体験をアップルの担当者がサポートしてくれていた。

担当者はiPadで私の見ているVision Proの視界を表示して見ているのだという。これは試用のための特別な機能ではない。

同じiCloudアカウントのデバイスにログインしていれば、AirPlayで見えるのは当り前です」と言われて虚を突かれた。つまりは、Apple TV経由でテレビに写すのも簡単。

VRデバイスを誰かに使わせてみたことのある人なら、「何が見えてる? ○○っていう操作パネル見えない? え? 何が見えるの?」というやりとりをしたことがあるに違いない。

Vision Proは使い慣れたAirPlayで画面を映せるだけでなく、AirPlay以外の連携機能やこれまで利用してきた環境もそのままシームレスに使える。これがアップルのエコシステムの便利さで、iCloudでログインすれば、メールもブックマークも、メッセージも、最初から自分の環境が出来上がってるということだ。AirDropもできる。

他社のヘッドセットでもミラーリング機能はあり、デスクトップと連携するサードパーティーアプリやソリューションもあるが、Vision Proならば自分のMacの画面を空間に投映したり、iPhoneやiPadのアプリをVision Pro内で使うことも標準で可能だ。

Q7 実機体験で、最も心打たれたポイントは?


『空間再現写真』『空間再現ムービー』という機能。

いわば、単なる3D映像ではあるのだが、周りのぼやけた磨りガラス状の演出が使われており、しかも周りの風景が現実世界であることにより、現実世界に過去をのぞき見ることのできる窓ができたようにしか見えない。そして、この空間の中にいる私には、磨りガラスの向こうに現実にしか見えない立体感があるのだ。

単なる3D動画ではあるが、人の気持ちを深く考えた体験デザインにより、このウィンドウは過去をのぞき見る魔法の窓になる。

数年前に世を去った祖母、子供たちの幼い頃、建て替えで壊してしまった生まれ育った家……そうした懐かしいものが『空間再現写真』『空間再現ムービー』で見られたら、どれほど良いだろう……と思うと、Vision Proの中で涙を流してしまっていた。

デモ映像は、子供たちとの家族の映像で、子供たちがバースデーケーキのロウソクを吹き消すシーンなのだが、吹き消されたロウソクの芯がくゆらせる煙がコチラに流れてきた時には、その匂いを感じるのではないか? と思うほどのリアリティを感じた。ぜひ、体験して欲しい機能だ。


その他、語りたいことは無限にある。この体験をあと1年半もみなさんと共有できないかと思うと辛くて仕方がないほどだ。

同じデバイスでも精密にデザインが設計され、誰をどんな気持ちにさせたいのかというゴールが設定されているだけで、まったく違う製品になるだろう。

iPhoneやMacを愛する人は、その点が気に入っているのだと思う。

そして、間違いなくVision Proはその最新の到達点となるデバイスだ。

他に質問があれば、ぜひTechnoEdge編集部のTwitterアカウント@TechnoEdgeJPまでお寄せいただきたい。


テクノエッジ編集部では、本記事を執筆した村上タクタさん、そして同じくApple Vision Proを体験した西田宗千佳さんによる、WWDC23オンライン報告会を6月16日に開催します。

Apple Vision Proを体験したお二人による貴重なトークセッションですので、ぜひご参加ください。


《村上タクタ》

村上タクタ

フリーランスライター。1969年京都府生まれ。バイク雑誌編集者に憧れて上京し経歴を開始。ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌、デジモノの雑誌をそれぞれ7〜10年編集長として作る。趣味人の情熱を伝えるのがライフワーク。@takuta

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