スマホ割引「上限2万2000円」規制見直し、ドコモとソフトバンクの「中古価格基準」案を試算してみる(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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スマホ割引「上限2万2000円」規制見直し、ドコモとソフトバンクの「中古価格基準」案を試算してみる(石野純也)
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総務省の規制で上限2万2000円までに制限されている端末割引ですが、今やその金額は有名無実になりつつあります。21年秋ごろから、各社が、回線契約の有無を問わずに端末そのものを値引く荒業を繰り出し始めたからです。

その販売手法は常態化。対象端末のバリエーションも広がり、大々的に店頭POPで一括1円なり実質1円なりをうたうケースを目にする機会が増えています。

ユーザーとしては、最新モデルを安く手に入れられてうれしい反面、中古業者の買い取り価格を大幅に下回る価格で販売されると、あの人たちが殺到します。そう、転売ヤーです。

1人1台の規制を設けるなどして、現在はやや沈静化していますが、一時はキャリアショップや家電量販店に転売ヤーが殺到する事態にもなってしまいました。

このような状況の中、端末の割引に見直しがかかる機運が高まっています。元々、割引規制は3年をめどに、実効性を検討することになっていたからです。

端末への割引が2万2000円に規制された一方、端末単体を値引く手法で一括1円や実質1円が常態化している。23年には、ここにメスが入る可能性も出てきた

総務省の「競争ルールの検証に関するWG(第37回)」では、ドコモやソフトバンクが、新たな規制に関するルールの一案を披露しています。

おもしろいのが、どちらも「中古端末」の価格を基準に割引額を決定する仕組みを提案していること。ただし、ドコモは販売価格、ソフトバンクは買い取り価格といった違いもあります。仮にこの案が採用されれば、一律2万2000円に定まっている現状より、柔軟性が増す格好になります。

▲ドコモは、中古の販売価格を割引全体の上限にする案を提案

▲ソフトバンクは、合計した割引後の金額が中古の買い取り価格を上回るようにする案を提出している

 ただ各社とも、割引合戦の激化は望んでおらず、新たな規制では端末単体販売への値引きの規制も求めています。一括1円などの販売は、不当廉売の疑いもかけられているため、一定のルールが必要というわけです。

では、もしドコモ案ないしはソフトバンク案が採用されたとしたら、代表的な端末はいくらぐらいまで値引きできるのでしょうか。オンラインで公開されている情報に基づき、シミュレーションしてみました。

▲同じくソフトバンクの資料。過度な値引き合戦や転売ヤー問題を鎮静化したい思惑が見て取れる

 まずチェックしたのは、発売から日が浅いiPhone 14 Pro。同モデルは最新なことに加え、中国のゼロコロナ政策のあおりをうけて品薄が続いていました。そのため、中古価格も比較的高め。

平均を取るため、今回チェックした3店舗(イオシス、じゃんぱら、ゲオ)のオンラインストアでは、いわゆる未使用品はヒットしませんでした。ほぼ傷のない状態Aのものはあったので、その平均額を計算したところ、128GB版で14万6440円でした。

▲右のiPhone 14 Proで、割引上限をシミュレーションしてみた。現時点でもやや品薄状態のため、中古は買い取り価格が高い

 対するドコモは、iPhone 14 Proの128GBを17万4130円で販売しています。そのため、ドコモ案では2万7490円まで割引が可能ということになります。ドコモは、2万2000円の割引上限を維持しつつ、それを超える場合の規制を求めています。この案が採用された場合、端末単体も5490円なら割り引けるようになるというわけです。

一方で、上記の中古平均はあくまで状態Aの場合。未使用品だと、もう少し価格が上がるので、2万2000円を超える割引はできなくなる可能性も高そうです。

▲中古店は、3グループの販売価格、買い取り価格をチェックした。最新のiPhoneの場合、販売価格が比較的高いため、ドコモ案だと単体割引の余地は少なくなりそうだ

 一方のソフトバンク案は、買い取り価格が上限になります。先に挙げた3点の平均買取価格は、未使用品の場合で13万1167円。

ソフトバンクはiPhone 14 Proの128GBに17万5680円という価格をつけて販売しているため、差し引きすると4万4513円の割引が可能になることが分かります。買い取り価格になるため、割引額はドコモより多め。

ただ、4万円程度の割引であれば、乱売とはいうほどのレベルではなく、常識的な範囲の割引と言えるかもしれません。

 次に、一括1円なり実質1円なりの“定番”になりつつある、グーグルのPixel 6aの128GB版をチェックしてみました。同モデルは、auが5万3270円、ソフトバンクが6万7680円で販売しています。

これに対し、新古品は3社平均で4万4753円でした。一方の買い取り価格は平均で2万9833円です。発売から半年程度経っている端末ですが、あまり値崩れしていないことがうかがえます。

▲元々廉価なこともあり、目玉として一括1円で販売されることもあるPixel 6a

 この金額を元に、ドコモ案を適用した場合、au版は8517円、ソフトバンク版は2万2927円の割引が可能になります。ただし、auに関しては割引額が2万2000円を下回ってしまっているため、回線契約を伴う場合の割引は22000円までということになりそうです。ソフトバンク版についても、ほぼ同じです。

 ソフトバンク案の場合は、auが2万3437円、ソフトバンクが3万8292円まで割引ができることになります。回線契約に伴う現状の規制よりも、少しだけ上乗せできるイメージ。ただ、どちらの案を取っても、現状より値引きが厳しくなります。

一律で決まった上限2万2000円よりはマシかもしれませんが、少なくとも、店頭をにぎわせている一括1円のような販売手法は消滅してしまうおそれがあります。

▲画面はイオシスの買い取り価格検索。未使用品の場合、3万円前後で売却できるようだ。この金額を基準にすると、現行の規制である2万2000円より割引はできる一方で、一括1円は難しくなる

 逆に、どちらの案を取っても転売のうまみはなくなるため、転売ヤーが特定の端末に殺到するといったことは減る可能性があります。

また、端末が古くなればなるほど、中古店での販売価格や買い取り価格は下がります。在庫を処分したいようなときには大胆な値引きが可能というわけです。その意味では、中古を基準にするのは案外悪くないアイディアと言えます。

 ユーザーにとってはドコモ案の方が厳しめのため、どちらか一方を取るのであれば、ソフトバンク案を採用してほしいところ。iPhoneやPixelに関しては、ソフトバンク案でも過度と言えるほどの値引きにはならないため、ある程度、規制見直しの目的は達成できます。

もちろん、まだどちらの案も却下される可能性は残っているため、このシミュレーションが無駄になってしまうことはありえます。割引規制がどう決着するのかは、今後も注視していくつもりです。

《石野純也》
石野純也

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ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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