最近増えてきた「AIスマートグラス」製品のひとつ、Lookteck AIスマートグラスの試用インプレッションをお伝えします。
(メーカーからお借りした評価機を使用。製品版とはソフトウェアのバージョンを含め異なる場合があります)
Lookteck AIスマートグラスとは

Looktech AIスマートグラスは、レンズ抜き34gと比較的軽く目立たない「普通のメガネ」形状に、オープンイヤースピーカーとマイク、カメラを搭載したデバイス。
基本的な構成としては、スマートグラスとしてもっとも普及しているRay-Ban Metaに近い製品です。
専用のスマホアプリと連携して、GPT-5ベースのパーソナルAI「Memo AI」に日常的な質問をしたり、音声メモやWeb検索、リマインダ設定、会議の録音・議事録作成等できる点をもって「AIスマートグラス」と称しています。
眼鏡の右端、「智」の部分にカメラを搭載しており、写真や短い動画が撮影できるほか、看板などをAIに見せて内容を訊いたり、覚えさせることも可能。外国語の翻訳や、案内図を見せて後から中身を尋ねるといった使い方もあります。

ディスプレイなし、レンズは度付きや調光も自由
ディスプレイは非搭載。長い回答は耳を澄ませて聴き取る必要がありますが、Memo AIとのやり取りはアプリ側にも保存されるため後で読み返すことも、エクスポートも可能です。
ディスプレイはあれば便利ですが、搭載しないことで本体は軽く、外見は「普通の眼鏡」に近く、最長約14時間という長いバッテリー駆動時間を備えています。
眼鏡レンズ部分も特にウェーブガイド等の特殊な光学機能を備えない普通のメガネレンズなので、度付きなり色付きを作って交換等が容易なことも利点です。
主な仕様は、本体34g、カメラは13MPセンサ(撮影画像は約8MP)・2K動画撮影、内蔵ストレージは32GB、無線はBluetooth 5.4とWi-Fi 6、190mAhバッテリーなど。
実際に試してみる。外観とカメラ

今回メーカーからお借りしたのはグロッシーブラックのモデル。樹脂製ですが極端に安っぽいつくりでもなく、まあまあジェネリックな、よくも悪くも目立たない「普通のプラスチック製メガネ」です。
フレームにはマットブラックやべっ甲風もあり、逆にもっと目立たせてテック感を出したい?人向けには透けて見えるトランスペアレントも選べます。
ツル部分に基板やバッテリー、スピーカー等を内蔵するためやや太いものの、サングラスとしてはおかしくない程度。Meta Ray-Ban Display のように太ましくはありません。ブリッジ部分がやや広いのは、この部分に付属の充電クリップを留めるため。
「人は興味のない他人のメガネまでわざわざ注視しない」のは事実ではありますが、カメラのレンズは、同種のカメラつきスマートグラスのなかでもやや目立つ部類。
センサ自体は大きくないものの、カメラユニットを収める穴と透明なカバーが大きく、本体のカラーと角度にもよりますが、対面すればすぐ分かるほどよく見えます。

隠しカメラでもなく、目立って困ることもありませんが、手に持って構える必要があるスマホカメラとは違いいつでも録れること、撮っているかどうか周囲の人には分からず不安を与える可能性もあるため、李下に冠を正さずの意味もあり、撮影禁止の場所や対象がある場所、盗撮の不安を与える場所では一時的に外したほうが無難です。
「撮っているかどうか分からない」については、いちおう小さなシャッター音が鳴り、カメラと反対側の左端にあるライトと、右の内側にある通知インジケーターが光るようにはなっています。

アプリにシャッター音を消す設定はありませんが、オープンイヤースピーカーから小さめの音で鳴るため、周囲というより着用者にタイミングを知らせる程度。静かな環境で、近くなら気づくかもしれません。
ライトは「撮りましたよ」を伝える役割で、周囲が明るくても光ります。これはカメラつきスマートグラスとしてもっとも売れているRay-Ban Metaと同じ。
(余談ながら、メタのスマートグラスはこの撮影通知ライトを塞ぐとカメラ自体が機能しなくなる手間をかけていますが、Looktech AIスマートグラスは完全に塞いでも撮れました。とはいえ、盗撮の意図があったと思われないためにもそのままにしておきましょう。)
操作は物理ボタンが主。メディアクラウンは便利
基本操作は左側のツルにある「AIボタン」でMeta AI対話の起動、長押しで「見せて訊く」、右側のカメラボタンで写真撮影、長押しで動画撮影。
右側のツル下部には、時計の竜頭のような「メディアクラウン」があり、回転で音量、押し込みで再生 / 一時停止や二度押しで曲送り、三度押しで戻しに対応します。

基本機能としてはおおむね「ジェネリックRay-Ban Meta」的な構成の製品ですが、この物理ボタンメインの操作はユニークな部分。
静電容量式のタッチは手軽な一方で確実性が低かったり、髪がかかると操作しづらい、スライドで量を取りづらい場合もあります。
対して、Looktech AIスマートグラスのメディアクラウンは物理的に押すため確実、音量調整も連続的に操作しやすくなっています。単にタッチセンサより低コストだったり設計の都合説もありますが。
下から押し上げる動作なので指で挟む必要があるのは、一瞬のタッチよりはわずかに手間。

Memo AIの聴き取り開始ボタンが独立していること、さらにAIボタン長押しで撮影してそのまま画像について会話できるのは秀逸。
よく似たRay-Ban Metaでは、対応言語で「これは何?」や「見て翻訳して」のように、カメラを使うように音声で指示する必要があります。
こちらはAIボタン長押しでとりあえず「これは何々ですね。何か質問がありますか?」程度の回答を聞くことができ、会話のコンテキストに残せるため、あとから写した内容について尋ねる使い方もできます。
(製品版では「ヘイメモ」でHey Siri 的にハンズフリー起動できる見込みですが、試用した発売前バージョンではまだ日本語で機能しなかったため、今回は手を上げてボタンを押して使っています。)
カメラは少し前のスマホカメラ程度。明るい場所のメモ用途に
主観で写真や動画が撮れるのも便利な点のひとつ。画質自体は最近のスマホカメラに及ばず、きれいに残したいならばスマホを取り出して構えたほうが明らかに良いものの、特に明るい場所や被写体で静止していれば、メモ用、記録用にはそこそこ役立ちます。
逆にいえば、感激した夜景を見たままに残したい、といった場合は最近のスマホのほうが上。


(▲画像:夜景をフル解像度で撮影。掲載用に縮小済)
これはアップデートを通じた撮影パラメータ最適化や後処理である程度は改善する可能性もあり、アプリの加工で救うことも多少は可能ですが、現状では「そういえば昔のスマホって暗い場所はダメだったなあ」と思い出すような、暗所はノイズ、明かりは白飛びになります。
画素数は2560 x 3120の約8MP。仕様としては13MPとなっていますが、少なくとも手元の評価機で撮れた写真は8MPでした。

仕様はセンサの解像度で撮れる写真はまた別という表記かもしれませんが、写真の解像度としても表記して欲しいところです。動画は2104 x 1560で、こちらは「2K」表記です。
(2Kはそのまま2000ピクセルを示す場合と、モニタ解像度などで2560 x 1440を示す場合がありますが、ここでは前者)
AIボタンを長押しして「写真を撮って訊く」動作の場合、848 x 480 の小さな画像が保存されます。AIが読み取れる解像度もこの範囲。


(▲画像:AIボタンで撮った画像。0.4MPほど)
試用したバージョンでは声でシャッターを切れなかったため完全にハンズフリーではないものの、一瞬メガネに手を伸ばして押すほうが、スマホを取り出して構えるよりは「撮りたいと思った瞬間」に近いことは確か。
動画については、最大で3分という制約はあるものの、両手で何かを持ったり操作する主観映像を手軽に撮れるのはスマホに真似できない機能です(スマホを目の高さにヘッドマウントしたり三脚を立てればできなくもありませんが)。
スピーカーは及第点。聞こえることが重要な用途に
オープンイヤースピーカーはもともと製品による差が激しい技術で、特に最近ではオープン型イヤホンの人気を反映して、「ピン」側が凄まじい勢いで改良を重ねています。
……という背景を踏まえると、こうしたメガネのツルに内蔵するスピーカーについても単純に「良い」や「悪い」で済ませるのが難しいところではありますが、同種のスマートグラスやオーディオグラスとの比較でいえば、Looktech AIスマートグラスは「必ずしも悪くない」程度。
まず構造として低音に弱いのは前提として、Ray-Ban Meta など音漏れ上等でしっかりと聴かせる製品や、オーディオグラスとして音質を売りにする製品と比較すれば、シャカシャカとした軽い音です。
とはいえオープンイヤースピーカーのなかには、自分で聴きたい曲を再生したはずなのに「隣のやつが超音漏れしてて不愉快」的な音の製品もあり、比較すればまだ聴ける部類。曲やコンテンツによっては全く問題ないという人もいるはずです。
さいわいメガネ型のオープンイヤースピーカーはイヤホンと両立するため、そこまで音質に拘らず、鳴っていることが大事、聞き慣れた曲を脳内再生するためのキューとして、あるいはPodcastや動画の音声など中身を聴くことがメインの場合に使い、耳栓や鑑賞音質が欲しいときにはイヤホンをつけて切り替えることもできます。
AI機能はポイント消費式。一定範囲ならサブスク不要
Memo AI は、Bluetoothで接続したアプリからクラウドにクエリを飛ばす方式。最近の「AI搭載!」ガジェットの大半と同じく、AIモデルをデバイス側に内蔵しているわけではありません。
AI機能は使用するごとにポイントを消費する仕組みで、無料枠では月に500ポイント使えます。
一般的な会話や画像認識(食事からカロリー推定、花の名前等)で一回につき1から3ポイント、音声メモや文字起こしは1時間100ポイント。サブスクは月2900円で2500ポイントが使えます。
中身はGPT-5ベースとされており、規定プロンプトでパーソナリティやユーザーについての情報、回答の仕方をカスタマイズすることも可能。

▲画像:声の選択は現状で「小夜」と「玲」。どちらも女声。
履歴はアプリ側にテキストとして残るものの、エクスポートはアプリ側から手動で指示して、しばらく待つとメールでダウンロードリンクが送られてくる仕組みの。すでに使っている外部のAIサービスとの連携にはやや難があります。

常に同期してどこでも文脈を踏まえてくれるというより、定期的に普段使いのAIに食わせて補完する程度が現実的かもしれません。ここは今後のアップデートに期待です。
よく研究した簡易版Ray-Ban Meta。ソフトは今後のアップデートに期待
総合的には、各社が競うように投入する「AIスマートグラス」のうち、ディスプレイを備えないタイプとしては一般的な仕様。
ベンチマークとしてのRay-Ban Metaと比較すれば、機能やサービスとして閉じている(汎用のAIサービスやソーシャルメディア等と連携しない)面はあるものの、専用のAIボタンを備え、長押しで直接「見せて訊く」ができるなど、後発として工夫してきた点もあります。暴発しづらく確実な物理操作のメディアクラウンも、人によっては評価される点。
AI機能については、スマホアプリ経由でクラウドに飛ばすだけとはいえ、ネイティブで日本語が使えるのは大きな利点。デバイス側でLLMが動くわけではないため、天気予報や為替、ニュースも答えてくれます。

(中国のメーカーの製品らしく、現在の発売前バージョンではAI会話の履歴が中身は日本語でも見出しがたまに中国語になったり、言語設定で「日本語」ではなく「日文」表記が混ざっているのは御愛嬌。これでもローカライズはかなりよくできている部類です。)
本体の仕上げや素材、ハードウェアについても、高級感やクラフトマンシップ、ブランドのアイコン的デザインを求める製品ではないことを前提とすれば、極端に安っぽかったり悪目立ちすることもなく、ごく普通に量販される樹脂製メガネの範疇。

たとえば充電はブリッジ部分のPOGOピンを付属のクリップ型USB-C充電アダプタで挟む方式。いかにも簡易な作りで笑ってしまいましたが、手の込んだ追加バッテリー兼用ケースなどを携帯させるより、USB-Cモバイルバッテリーとこのクリップだけあればなんとでもなるのは逆に合理的で良いかもしれません。

発売前のバージョンで気になったのは、メガネで撮った写真のインポートに手間取ってタイムアウトすることがあるなど、ソフトウェアに粗削りな部分、特にワイヤレス関連で失敗する場合が目立つこと。無線関連は相性や環境もありますが、数か所のWi-Fiで試してほぼ変わらない体感でした。おもしろ?バグとしては、現行バージョンでは撮影した画像に埋め込まれる位置情報がなぜか中国の浙江省杭州市になる現象があります。
今回は試せなかったHey Memoの聴き取りや音声操作と並んで、今後のアップデートに期待する部分です。
総評。AIグラスのスターターに
最近は「AIイヤホン」や「AIグラス」など、マイクと無線がありスマホアプリ側のAIサービスに飛ばせるものが何でもAIガジェットを名乗るようになってきました。
「AI搭載」かは若干微妙なところですが、スマホのAI(LLM)チャットアプリも基本的にはクラウドに飛ばしているため、接続の問題や遅延を意識させないかぎり、チャット程度ならばどこで処理するかは大した問題ではありません。
逆にいえば、スマートフォンでChatGPTやGemini等が普及したことで、アプリを開いて入力する手間を省くウェアラブルの価値が光るようになってきたともいえます。

(▲画像:旧芝離宮恩賜庭園の看板を見せて会話。滑舌なのか騒音か、「休憩」を「中継」と聴き取られてしまい、庭園は静かな散策を楽しむところでライブ配信する場所ではありませんよ、とたしなめられる筆者。自販機については、入り口のサービスセンター脇に設置されているため、「基本的には設置されていません」は正確性としては微妙。)
カメラの画質、スピーカーの音質ともに特に高いとはいえないものの、スマホを取り出して構える、イヤホンを装着する手間なく、メガネをかけた「デフォルト」状態からすぐに撮れる・聴ける・話せるのがメガネ型の優位。
そう考えれば、「そんなのスマホを手に持って操作すればいいでしょ」には戻れなくなる、スマートグラスのある生活の手軽なスターターになる製品です。
Looktech AIスマートグラスは、国内向けに12月30日までMakuakeで販売中。「応援購入」は、早割りで市販予定価格の26%オフ3万7990円から。









