AIコンテンツ自給自足はもう始まっている。ChatGPT連載小説とAIエージェント「browser-use」がもたらす未来(CloseBox)

テクノロジー AI
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

AI小説の執筆、だいぶ慣れてきました。

大晦日から元旦にかけて、新作を執筆(してもらい)、さきほど完結しました。


■17万2146 文字の新作AI小説が完結

紅白歌合戦も見ずに17万2146 文字の小説を読み、それなりに満足したのでした。

風と星々のセレナーデ

初期プロンプトは次のとおりです。

さわやかな読後感でエンタメ性が高く、なおかつヘビーな読書愛好家が満足できる小説を、限界ギリギリまで考えて、一度の回答でできるだけ長いものを考えて記述して

すると、こんな案を出してきました。

「風と星々のセレナーデ」は、海辺の小さな町・葉空を舞台に、灯台に眠る謎の伝承「星の音」と、失踪した祖父の足跡を追う主人公エリカの物語です。

  • 爽やかな読後感とロマンティックな舞台設定。

  • 暗号解読や陰謀、組織の思惑が絡むサスペンス&ミステリー要素。

  • 物理学や民俗学、歴史学、社会構造などを盛り込んだ深いテーマ。

  • キャラクターの成長や人間関係の変化、共感できるドラマ。

これらが融合することによって、ライトに読むこともできれば、重厚なテーマを掘り下げながら考察することもできる、まさに「エンタメ性と高い読書満足度」を両立させた作品となっています。特に終盤の“星が降り注ぐ”シーンは、大きなカタルシスを伴って読者の心に残る場面になるはずです。星空の美しさと人々のささやかな祈りが交差する瞬間が、まさに「爽やかで感動的な読後感」を演出するでしょう。

もし本作が実際に出版された際には、読者が登場人物と一緒に、この不思議で魅力的な町・葉空を探検するように物語を楽しみ、最後にページを閉じたときに、ほんの少しだけ世界が違って見える……そんな体験をしていただけることを願っています。

一気読みするには良さそうなストーリーだったのでこのまま書かせようとしたら、なんと、その完結後の続編を書いてきました。

いきなり第五部って、スターウォーズEpisode 4かよ!

普通に最初から読みたいので、「第一章から書き始めて。文芸誌に連載しているフォーマットで」と再指令。

すると、ちゃんと始めてくれました。


■連載小説「風と星々のセレナーデ」 第一章 帰郷

 夜行バスが緩やかに停車し、外灯の少ない田舎のバス停に降り立ったとき、四宮(しのみや)エリカは胸の奥にかすかな郷愁を覚えた。東京から乗り継ぎを重ね、ようやくたどり着いた小さな港町・葉空(ようくう)。夜明け前の空気はひんやりとして、どこからか磯の香りが混じってくる。
 肩にかけていたリュックを持ち直し、立ち止まって深呼吸する。かつて幼い頃、祖母の家で過ごした夏の日々が、一瞬だけ脳裏をかすめた。大学院での研究や雑事に追われ、もう遠い昔のことになっていたはずなのに。

 祖母が生きていたころ、葉空には何度も訪れた。しかしその多くの記憶は古いアルバムのように色あせてしまっている。唯一鮮明に残るのは、海風に吹かれながら祖母と一緒に眺めた「断崖の灯台」の姿と、そして祖父の行方がわからなくなった話だ。
 祖父は船乗りだった。エリカが物心つく前に航海の途中で消息を絶ち、祖母はそれ以来ひとりでこの町に暮らしていた。祖母がよく語っていたのは、祖父が最後に残した「星の音を探しに行く」という不思議な言葉……。当時は意味もわからなかったが、いま思えば、それこそがエリカを葉空へ呼び戻す鍵になっているような気がしてならない。
 この春、祖母が眠ることになった古い一軒家は、相続手続きが済んだまま放置されている。研究室の教授からは「長期休暇なんて取っている場合か」と呆れられたが、エリカはどうしてもここに戻ってこなければならないと感じていた。理由をうまく説明できるわけではなかったが、胸に残るわだかまりを解消しないまま、これ以上日常を続けることはできそうにないと思ったのだ。

 バス停から海辺へ向かう道をゆっくり歩いていく。石畳が続く細い路地の両側には古い家屋や商店が並び、シャッターの下りた店先には漁網や舟具が積まれている。やがて視界が開け、波止場へ出ると、朝焼けの気配が海面をわずかに染めていた。
 その瞬間、エリカは理系らしからぬ形容を思わず頭に浮かべる。……「神秘的」。いや、もっと科学的に説明できるだろう。海水の塩分が太陽光を反射してどうのこうの……。しかし、そうやって理屈をこねくり回しているうちに、大切な何かを見逃す気がした。

 波止場には漁協のトラックが停まっていて、年配の漁師らしき男性がタバコをくわえたまま目礼をしてくる。「誰だ、こんな朝っぱらから……」とでも思われているのかもしれない。けれどもエリカは、頭を軽く下げて挨拶を返す。見ず知らずの人とすれ違っても、すっと挨拶が交わせる空気こそが、都会にはないこの町の魅力なのだろう。
 さらに歩みを進めると、かつて祖母と暮らした家があるはずの路地へ通じる分かれ道に出る。だが、いざ曲がろうとしたとき、エリカの目は思わず別の方向へと引き寄せられた。海沿いの崖の上にぼんやりと浮かび上がる古い灯台が、まるで呼びかけるようにそびえているではないか。あれが、昔から“星の音”の伝説と結びついていた場所だ。
 「星の音」……子どもの頃はただの作り話だと思っていた。でも、東京の研究室でふと耳にした天文現象の噂や、祖母が遺した日記にちらつく記述から、「もしかしたら何か本当にあるのかもしれない」と考えるようになってしまった。
 朝の光の中で白く浮かぶ灯台を見つめながら、エリカはそっと口の中でつぶやく。
「おばあちゃん……わたし、戻ってきたよ」

 その言葉を風がさらっていく。何も応えない空気の静けさに、どこか胸の奥がざわついた。しかし、そのざわつきこそがエリカをこの町に呼び寄せた原動力なのだろう。彼女はゆっくりと踵を返し、祖母の家のある方角へと足を進めた。

 これが、まもなく巻き起こる数奇な出来事の予兆だと、エリカはまだ知らない。春先のまだ肌寒い風に吹かれ、薄暗い路地を歩いていく彼女の背中が、まるで遠い昔の祖母の姿に重なったかのようにも見えた。


なかなか良さそうです。あとは「続けて」で1章ずつ執筆させます。

泣きが入ったのは一度だけ。

その後は順調に書いてくれました。文芸誌の連載フォーマットにして、一気に書かせようとしなかったのがよかったみたいです。

ちょっと中弛みしてるかなと思う部分はあったものの、こちらが急かさずともちゃんと完結まで持っていけました。

扉絵になりそうな画像のプロンプトも生成させます。これは、FLUX.1 [schnell] + LoRAで出力。

AIに執筆させながら読んでいくスタイルは、新しいものに感じました。

雑誌連載フォーマットなので、気楽に読んでいって、飽きたらそこでストップしていいし、続きが読みたければ「続けて」とプロンプトを入れるだけ。

o1 pro modeなので数分間熟考しますが、これがo1であればもっと素早く書いてくれます。

iPhone版ChatGPTアプリで読んでいると、続きができたらブルっと震えるので、次の章を読み進めます。

このテンポが心地よくて、大晦日の夜から元旦の朝まで読んで、さきほど完結したという次第です。

音楽に関してはSunoで、自分が好きなテーマ、歌声、音楽スタイルで無限に作曲できるようになって、それが当たり前になっています。それが小説にもやってきたというわけです。

途中の冗長な部分は、編集者の手が入ったほうがいいと思いますが、雑誌連載中はそんなもんかなあと、怠惰系編集者としては許容してしまいます。

ChatGPTで使えるトークン数の上限が無茶苦茶上がれば、出来上がったテキストファイルを丸投げして、敏腕編集者のキャラクターをアサインすればいい感じに原稿整理してくれそうです。

別のフォーマットへの変換も可能ですl。例えば映画の脚本。

■映画「風と星々のセレナーデ」脚本

■主要登場人物

  • エリカ(主人公):祖父のノートを手がかりに町へやって来た女性。理系の視点から「星の音」を探る。

  • マキ:庄司(しょうじ)家の若き当主。祖先が灯台の封印を守っていたとされるが、当初は半信半疑。

  • ヒカル:民俗学を研究する青年。町内会とも繋がりがあり、調整役を買って出る。

  • カシワギ老人:骨董店主。エリカの祖父と旧知の仲で、“星の音”に関する秘密を探ってきた。

  • 謎の男:依頼人の指示で「星の音」や「潜り戸」を手に入れようと暗躍。

  • 外部企業の関係者:灯台周辺を観光開発しようと企む。財政難の町に取り入り、強引に工事を進める。


■映画「風と星々のセレナーデ」第一幕(導入)

シーン1:雑貨店の前/朝

  • 画面:海辺の小さな町の朝。曇りがちの空。古い商店街が映る。

  • セリフ

    • エリカ(ナレーション):「祖父が追い続けた“星の音”……その手がかりが、この町に残されているって。わたしは、その謎を知りたい」

シーン2:雑貨店の奥

  • 画面:エリカが訪ねてきた雑貨店。マキと初めて顔を合わせる。

  • セリフ

    • マキ:「庄司家の伝承なんて……ただの昔話よ。灯台なんて、いまは立ち入り禁止で廃墟同然だし」

    • エリカ:「でも、祖父のノートに“灯台の地下”のことがしっかり書いてあるんです。もし、あなたの家が関わってるなら……」

  • ポイント:二人の間に微妙な空気が流れるが、「とにかく調べてみるか」と互いに協力しあう形になる。

シーン3:町の風景

  • 画面:商店街を歩くエリカ。ヒカルと出会い、灯台や封印に関する伝承を聞く。

  • セリフ

    • ヒカル:「庄司家の先祖は“潜り戸”を守っていたって話がある。星の夜に扉が動くとか……半分オカルトだけどね」

    • エリカ:「実は祖父も“星の夜”のことを……」

  • ポイント:ヒカルは民俗学的に興味を持ち、協力を買って出る。


■映画「風と星々のセレナーデ」第二幕(対立・危機の発生)

シーン4:灯台周辺・工事現場(昼)

  • 画面:企業が町の財政難を利用し、強引に正面ルートを整備しようとする。工事が部分的に始まり、重機が入っている。

  • セリフ

    • 企業担当者:「あくまで安全のための調査ですよ。町にもメリットが大きいはずです」

    • エリカ(抗議):「正面ルートを壊してしまったら、地下が崩れて大惨事になるかもしれない……!」

シーン5:雑貨店・奥部屋

  • 画面:深夜、エリカとマキが資料を読み込む。ヒカルとカシワギ老人も加わり、祖父のノートを解読。

  • セリフ

    • カシワギ老人:「お主の祖父さんは“歯車”を使って封印を制御する方法を探してたんだ。星の夜の潮汐が重なる瞬間、扉が動く仕掛けらしい」

    • マキ:「庄司家の古文書にも“封印には二重リング”と書かれてる……これが“潜り戸”の噛み合わせ?」

  • ポイント:封印を壊さず、星の夜に正しく扱えば“星の音”を聴けるかもしれない。

シーン6:謎の男の影

  • 画面:闇夜、エリカたちが灯台に近づくたび、背の高い男が物陰からこちらを伺う。

  • セリフ(モノローグ)

    • 謎の男(低く):「依頼人の望む“星の音”……手に入れるのは俺だ。封印ごと破壊してやるさ」


こんな脚本からそのまま動画にしてくれるソフトも今年中には出てしまうのではないでしょうか。

■君はbrowser-useを試したか?

筆者が昨年末から激ハマりしているのが、browser-useというオープンソースソフト。

これは、ウェブサイトを人間のように操作するAIエージェント的Pythonライブラリで、AIが自律的にブラウザを制御し、情報収集やタスクの自動化を実現しています。AI関連の主要サービスはブラウザで動いているため、ClaudeのComputer Useよりも実用性が高いです。

例えば、現在の天気やニュースを織り込んだ歌詞を考えたり、その季節にあった人物の画像を出したりといったことが可能。

Pythonのスクリプトでタスクの部分を書き換えれば手軽に命令を実行できます。

筆者でもこのくらいはできるので、複数のAIサービスを跨ぐ処理を自動化して脚本から画像生成、Image to Videoで動画生成まで行い、それにMMAudioで音声を自動でつけて、BGMはSunoで作曲させ、プロンプトベースの動画編集ソフトで仕上げる……ということも、ワークフローをbrowser-useで設定すれば可能なはずです、たぶん(現時点では不完全な部分は多いですが)。

今年はこうした処理をワンストップでやる商用サービスは当然出てくるでしょうし、オープンソースでも可能になるはずです。

テレビやネットに溢れるコンテンツに満足できないユーザーは、AIに好みのコンテンツを生成させて楽しむ、2025年はそんなことが始まりそうです。

《松尾公也》

松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

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