Suno AIに好みの曲を作らせて自分で歌う、オリジナル曲AIロンダリングで名曲を生み出すワークフロー(CloseBox)

テクノロジー AI
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

Suno AIに好みの曲を作らせて自分で歌う、オリジナル曲AIロンダリングで名曲を生み出すワークフロー(CloseBox)
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井上陽水「人生が二度あれば」で歌われるくらいの年(65)に近づくと、好きなアーティストがどんどん亡くなってしまい、ヒットチャートに自分の好みの音楽が登場することはほとんどなくなってきました。自分が好きなメロディアスなロックやバラードはチャートから消え、フォローしているアーティストの関連プレイリストを漁っても、そこに新しい音楽はありません。


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好みの曲がないのなら自分で作ればいいじゃないとマリー・アントワネットは言ったといいます(たぶん言ってない)。

16年前ならボカロで作ればいいじゃない、というところですが、今ならSuno V3です。

自分が指定した歌詞、好きな音楽ジャンルで作曲して演奏して歌ってくれる。1回で2分までの曲を作れて、気に入ったものは1分ずつ伸ばすことが可能。しかもその品質はプロレベル。


このSuno V3を使って好みの曲を作っていくためのワークフローを確立した感じがするので、その一例をお見せしようと思います。

Claude 3で好みの曲の音楽スタイルを調べる

Sunoは簡易的な使い方で作曲できますし、より高度なやり方で好みの音楽を作り出すこともできます。しかし、そこに音楽的な要素を記述するための力は最低限必要となります。

そこには、音楽を作る側でない人に立ちはだかる大きな壁が存在します。

Sunoの簡易モードでは、歌詞と音楽スタイルをそれぞれランダムで生成する機能がありますが、現在のところ、歌詞はランダムといっても、「Neon Nights」とかが生み出されがちで、だいぶ偏りがある模様。音楽スタイルはランダムに変えて楽しむことはできますが、そのジャンルを知っておく必要があります。

「歌詞」と「音楽スタイル」。自分の好きな楽曲がどういうものかを知れば、それに近い、好みの曲を創作できるかもしれません。

そう考えて、今回は大規模言語モデル(LLM)の中でも最近では特に秀でていると評判の、Claude 3 Opusに登場いただくことにしました。

参考にしたい曲は、ローリング・ストーンズの「悲しみのアンジー」(原題:Angie)。筆者が半世紀前に最初に買ったレコードが、このアルバムが入っている「山羊の頭のスープ」で、思い出深い曲です。


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この曲はストーンズの中でも特にリリカルで繊細なバラードで、イントロのアコースティックギターソロと、中間部の、ニッキー・ホプキンスによる珠玉のピアノソロが特に素晴らしい。その当時(1973年)の深夜番組で「ストーンズで同じようなバラードはありますか?」という質問があった記憶があります。その回答として挙がっていた「ルビー・チューズデー」は意図するものとはちょっと違った印象でした。こんな曲がもっと聴きたい。そう思う気持ちは今も変わりません。ミック・ジャガーは相変わらず元気で、新譜披露のライブでも走り回ってましたが。


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Claude 3に作詞させて音楽スタイル設定を決める

Claude 3 Opusに、次の問いかけをしてみました。

ローリングストーンズのAngieのような優れた曲を作るための音楽スタイルと歌詞を英語で記述して

回答はこちら。

Here are some suggestions for creating a song in a similar style to The Rolling Stones' "Angie", without reproducing any of the copyrighted lyrics:

Musical style:

Use a slow to mid-tempo ballad style with a melancholic feel
Open with a memorable acoustic guitar riff or arpeggio
Include plaintive lead vocal with emotional, yearning delivery
Have instrumental breaks featuring melodic electric guitar solos
Use lush string orchestration in the bridge and outro to add drama
Include subtle piano, bass, and drums to fill out the arrangement
Lyrical themes and ideas:

Write about lost love, heartbreak and regret
Address lyrics to a specific person, using their name
Reminisce about happy memories from the past relationship
Describe feelings of sadness and loneliness in the present
Express a lingering love despite the relationship being over
Use poetic, bittersweet imagery and metaphors
Repeat a simple, heartfelt chorus with the person's name
End with a sad but resigned acceptance of the situation
The key is capturing a wistful, reflective mood both lyrically and musically. Use instrumentation and production to complement the melancholic, lovelorn vocal delivery and poetic words centered around a past romance and enduring heartache. Structuring the song as a direct address to the former lover, using their name, can make it more intimate and impactful. Let me know if you would like me to elaborate on any of these ideas further!

▲Claude 3 Opusに聞いた

ここから、次の音楽スタイルを手作業で選びました。音楽スタイルは120字以内である必要があるためです。

Slow ballad melancholic, acoustic guitar arpeggio, emotional male vocal, lush string orchestration, subtle piano solo

これに、失ってしまった人物の名前を呼びかける、傷心・後悔の気持ちが込められ、楽しかった頃の思い出を振り返りつつも、今もその人のことを思う気持ちが表れているような歌詞を乗せてもらいます。

歌詞を作って

趣旨に沿った歌詞を作ってくれましたが、そのフォーマットとして「Verse 1:」「Chorus:」といった構成要素が入っており、これはSunoでは認識できません。このため、修正してもらいます。

Verse 1:を[Verse 1]といった感じで整形して

これだけで希望するフォーマットになりました。

Natalie, I Remember

[Verse 1]
Natalie, I remember when we met
A summer's day, a crowded street
Your eyes so bright, your smile so sweet
I knew right then, you had me hypnotized

[Verse 2]
Natalie, the times we shared were gold
Laughter, love, a happiness untold
But seasons change, and hearts grow cold
Now all those memories feel like distant lies

[Chorus]
Natalie, oh Natalie
I'd give it all to have you here with me
Nata, sweet Natalie
Without your love, I'll never be set free

[Verse 3]
Natalie, I wander through this town
The places where we used to go around
But nothing's like the way it was before
'Cause every corner holds your ghost somehow

[Chorus]
Natalie, oh Natalie
I'd give it all to have you here with me
Natalie, sweet Natalie
Without your love, I'll never be set free

[Bridge]
If I could turn back time, I'd make it right
I'd hold you in my arms all through the night
But now you're gone, a faded dream
And all I have are tears that fall like rain

[Chorus]
Natalie, oh Natalie
I'd give it all to have you here with me
Natalie, sweet Natalie

Suno V3でガチャを回す

あとはこれをSunoの歌詞のフィールドにペーストするだけ。

タイトルは単純にNatalieがいいのかもしれませんが、フリオ・イグレシアスにそのものずばりの曲があるので、歌詞の出だしをとって「Natalie, I Remember」としました。このくらいは自分で考えないとね。邦題もそれっぽく「追憶のナタリー」で。

それで、3回ほどガチャを回してみました(生成)。これで6曲できました。

▲Suno V3でガチャを回した

最終的に出来上がったものを冒頭に、続けて、未完成バージョンを6種類まとめましたので、お聞きください。

どれもなかなかいい曲です。

アコギのイントロで始まらせたかったので、2回目の生成では音楽スタイルを少し変えて、

acoustic guitar intro, slow ballad melancholic, emotional male vocal, lush string orchestration, subtle piano solo

とした結果、思うような始まり方となりました。このプロンプトで生成した4曲目を採用し、そこから続き(Part 2)を作りました。

続きは2回ガチャを回し、合計4パートができて、その最後を採用。こちらは美しく終わってくれました。ここまで使ったクレジットは無料ユーザーでも1日で使える範囲です。

そして、元曲とPart 2を合わせた完全版を作成。それが、先ほどの冒頭の曲。

完成版と音楽スタイルのプロンプトを比べると、男性ボーカルではなくて、途中から女性ボーカルに変わってるし、ストリングスオーケストレーションはほとんどないし、ピアノソロもない。

でもいい曲です。

これはもったいないと、DTMer魂がムクムクと沸き起こり、これに音を重ねて、自分で歌ってみることにしました。

UVR5によって、ドラム、ベース、ボーカル、その他の4つのステム音源に分離し、それらをLogic Proに取り込みます。

ボーカルを置き換えると、伴奏はほぼ、その他トラックに入っているアコースティックギターだけになってしまうので、補強してあげる必要があります。そこで、ソフト音源のアコギをMIDIキーボードの手弾きで入力。ピアノとストリングスも同様に追加します。

▲ギター、ピアノ、ストリングスを入れる

オケができたら、ボーカル入れです。オリジナルは男声と女声のデュエットになっているので、それぞれ自分が歌います。

▲ボーカルを入れてピッチを調整

高音のパートは、AI声質変換ソフトのRVCを使って、妻の歌声に変えて合わせれば、夫婦でデュエット。

▲RVCを使って自分の歌声を元に妻のボーカルにAI変換

世界にこれだけしかいない、AIカバーの出来上がりです。

昨日(日曜日)は、ほぼこの楽しい作業で1日を終えましたが、ほぼお金がかからない遊びとしてはとても満足のいくものでした。出来上がった曲は繰り返し聴いています。

自分で歌って演奏したらオリジナル曲?

自分がやったのは、参考にしたい曲をAIに分析させて、そこから音楽スタイルを抽出し、歌詞を作らせ、AIの作曲で出来上がったものからいいものを選び出すということ。曲の分析と作詞は、ChatGPT(GPT-4)でもGemini Advancedでも可能ですが、現時点ではClaude 3 Opusは飛び抜けて性能がいいようです。

最終的に出来上がった楽曲に含まれているAIの要素は、イントロのギターくらいで、あとは自分の演奏です。

ボーカルと演奏は別として、楽曲の完成度は満足できるレベルだし、同様の品質で自分で作れる可能性はゼロ。これだけの泣ける英語のバラードを作れる日本のアーティストも、ほぼいないのではないでしょうか。

これを、「自分のオリジナルです」といって公開することも、やろうと思えばできます。ボーカルはAIが歌った歌い方をトレースしたものですが、元を公開しなければトレパクと言われることもないでしょう(いや、それでも言ってくる人はいるかも)。

こんなAIロンダリングで「オリジナル曲」が作れてしまう時代。Sunoの性能はV4でさらに上がっていくでしょうし、ライバルも登場するはず。各パートをMIDIや別トラックで吐き出せるようになれば、現時点におけるSpliceのように、プロアマ問わず、ミュージシャンなら使っていくのが常識となるでしょう。Rolling Stone誌に、SunoのCEOへのインタビュー記事が載っているくらいなので、音楽業界も注目を始めているはずです。

A ChatGPT for Music Is Here. Inside Suno, the Startup Changing Everything

Sunoが開けてしまったパンドラの箱は、音楽のあり方を変えてしまいました。その箱には掘り出せるだけの無限の名曲が詰まっているはずなので、自分は粛々とそこから掘り出していきたいと思います。

《松尾公也》

松尾公也

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