離れていても給電できる技術の開発進む。ワイヤレス充電はスマホからIoT、そしてAIへ(山根康宏)

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山根康宏

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香港在住携帯研究家

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離れていても給電できる技術の開発進む。ワイヤレス充電はスマホからIoT、そしてAIへ(山根康宏)
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2024年は新しいワイヤレス充電規格「Qi2」に対応した製品の登場で、スマートフォンの充電がより簡単になりそうです。Qi2はアップルのMagSafeをベースにした規格でもあり、Qi2対応のAndroidスマートフォンが出てくればiPhoneとワイヤレス充電器の共用も可能になります。2024年1月にラスベガスで開催されたCES 2024でもQi2対応ワイヤレス充電台などが展示されていました。

マグネットによりスマートフォン側の充電アンテナとワイヤレス充電器の充電コイルがずれず、最高の効率でワイヤレスで充電できるQi2ですが、スマートフォンと充電器は接触させる必要があります。そのため充電器の設置場所には制限があります。

そこで両者を接触させずとも、ある程度の距離でも充電できる技術の開発も進められています。スマートフォンメーカーのInfinixはCES 2024で自社開発した「AirCharge」のデモを行いました。

AirChargeは充電器から最大20センチ離れていてもワイヤレス給電できる技術です。充電器とスマートフォン背面の角度が60度まで傾いていても充電も可能とのこと。6.78MHz未満の低周波磁気共鳴を利用し、ワイヤレスで最大7.5Wの電力を給電できます。

最大の20センチの距離では1W程度になってしまうものの、これだけの距離でワイヤレス給電できるのであれば、中空なテーブルの裏面に充電器を埋め込むこともできるでしょう。テーブルそのものをはじめから設計するより楽にワイヤレス充電対応にできるわけです。

またスマートウォッチやIoT製品なら、数Wの電力でも十分でしょう。スマートウォッチの充電は意外に面倒ですから、この技術はそこに応用するのもいいかもしれません。今まで設置できなかった場所などにもワイヤレス充電台を内蔵できそうです。

Powercastも小電力のワイヤレス給電が可能なRF/SmartInductive 充電器を出展しました。1フィート(約30センチ)から15フィート(約4.5メートル)まで対応、センサーなど電力をほぼ必要としない機器であれば最大最大120フィート(約36メートル)にも給電が可能と言います。

CESのデモでは実際に約30センチ離れたワイヤレス給電器からリボン状のアンテナと基盤に搭載されたLEDライトの点灯を見せてくれました。ライトの大きさに比べてアンテナの広さがかなり必要ですが、実際にこれだけの距離が離れていても給電できるのです。クリスマスツリーのライトなどの用途なら、すぐにでも使えそうですね。

応用例としては室外の監視カメラの給電を壁の内側の室内からのワイヤレス給電器で行う、といった事例が考えられます。スマートフォンなどのワイヤレス充電用というよりも、ケーブル無しでセンサー類に電力供給できることがこの技術の利点になるのでしょう。なおより高い周波を使うので無線機器などとの干渉もありうるため、設置場所を考慮する必要があります。

家庭やオフィス、学校、あるいは商店などの室内に多数のセンサーを取り付ける場合、現状だとコイン型電池を内蔵したものを設置する必要があります。そのメンテナンスを考えると設置場所を考慮する必要があります。電池交換も面倒ですし、廃電池の処理も大変です。センサーに電池を搭載する必要が無くなれば、高い天井に取り付けても半永久的に使うことができるわけです。

家屋のスマートホーム化はスマートフォンでコントロールできる家電を入れるだけだと実は不十分です。室内の温度や湿度、騒音などをセンサーが感知し、そのデータを基にAIが自動で家電をコントロールしてこそ真のスマートホームが完成します。そう考えるとワイヤレス充電・給電は「スマートフォンの充電を簡単にする技術」という狭い範囲のものではなく、これからはAIの活用にも関連する基幹技術になっていくと言えるでしょう。

CES 2024ではサムスンとLGがAIロボットを発表しました。AI機能の1つとしてあげられたのが家電のコントロールで、日中に家主が不在でも室内環境を一定に保つためにエアコンや空気清浄機を自動で制御します。そのためには室内環境データの取得が必須であり、AIロボットの能力を十分発揮させるためには多数のセンサーを室内に設置する必要があるのです。

もちろんどちらのロボットもワイヤレス充電に対応し、夜はポッドやステーションに戻って自動で充電されます。そしていずれは室内を自由に動くロボットも常にワイヤレスで給電されるようになるのでしょう。固定電話の時代に携帯電話やスマートフォンが考えられなかったように、電気製品を充電するのにケーブルが必要だった、なんて誰もが思う時代がいつの日かやってくるかもしれませんね。


この記事は、テクノコアが運営するメディア「技術の手帖」掲載の記事をテクノエッジ編集部にて編集し、転載したものです。


《山根康宏》

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