Apple、「Android版 iMessage」ことBeeper Miniをブロック 「ユーザー保護のため」と説明

テクノロジー Science
Kiyoshi Tane

Kiyoshi Tane

フリーライター

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著書に『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。

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Image:Beeper
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先週初め、米BeeperはAndroidからアップルのiMessage(メッセージ)チャットに「青い吹き出し」で参加できるアプリ「Beeper Mini」をリリースしました。

Androidスマートフォンも「緑の吹き出し」ではなく、アップル製品同士と同じ青い吹き出しでやり取りでき、フルサイズ写真・動画の送受信や入力中表示、リプライや絵文字リアクションなど、Apple独自の iMessage 相当の機能が使えるアプリです。

注目を集めたものの、わずか数日後には全てのユーザーがiMessageとの送受信が不可に。Beeperは修正プログラムを「まもなくリリースする」と表明していますが、一方でアップルが公式に「ユーザーを守るためにブロックした」との声明を出しました。

なぜ「青い吹き出し」が特別視されるかといえば、従来はAndoird と iPhone間では送受信できなかった大きなサイズの写真や動画が使えたり、リアクション等が使えることに加えて、iMessageでは「iPhone以外」が明確に区別できることから。

ただ吹き出しの色が違うだけでなく、1対1のやりとりで気軽にメディアを送っても見られなかったり小さく粗いサイズになったり、またグループチャットではひとりでもAndroidが居ると全員が制限を受けることになります。

比較的高価なiPhoneと「それ以外」の端末が可視化されるため、米国の若者の間ではプレッシャーになっているとの報道もありました。英Nothingによる「Nothing Chats」登場の背景には、そうした事情があります。


Beeper Miniは、同社の説明によればiMessageのプロトコルをリバースエンジニアリングした研究に基づくとのこと。以前もAndroidで「青い吹き出し」が使えるアプリがありましたが、それらは大抵Macサーバーを経由するなど、アップル製品に仲立ちさせていました。

しかしBeeper Miniは、Androidアプリそのものがアップルのサーバーとやり取り。ざっくり言えば、iPhoneなどアップル純正品かどうかのチェックを回避することで、iMessageと同じエンドツーエンドの暗号化を含めて対応しているとの説明です。

これにより、Apple IDに直接サインインしつつ、Androidの電話番号をひも付けることも可能に。さらには、Apple IDさえ不要となっています。ただし、Apple IDでログインしていない場合は、iPadやMacなど他のアップルデバイスとは送受信ができません。

当初は上手く動作していましたが、まもなく掲示板のReddit等でメッセージが送受信できない報告が続出。Beeperは「修正はまだ作業中です。まもなくですが、もう少し時間と努力が必要です」とした上で、7日間の無料トライアルを1週間延長すると述べています。

また、修正作業で iMessage互換では通信できない間、一時的に元の SMS / MMS の仕組みに戻すことでメッセージのやりとりだけは可能にする対応をとったものの、「iPhoneのメッセージアプリは、特定の連絡先が「青い吹き出し」だったことを過去6~24時間のあいだ記憶しているため、この間、一部メッセージが届かない可能性があります」と付け加えています。

それに続き、アップルはThe Vergeの照会に対して声明を発表。「iMessageにアクセスするために偽の認証情報を悪用する技術をブロックすることで、ユーザー保護のための措置を講じました」と述べています。これは、上記のアップル純正品かどうかのチェック回避を指しているようです。

さらに「これらの技術は、メタデータが晒されたり、迷惑メッセージ、スパム、フィッシング攻撃を可能にするなど、ユーザーのセキュリティとプライバシーに重大なリスクをもたらすものでした」と付け加えています。

この公式声明の少し前、BeeperのCEO(スマートウォッチ企業Pebbleの創業者でもある)Eric Migicovsky氏は、通信できない障害はアップルが意図的にブロックしているからだろうと述べていました。

その上で「もしアップルが、自社のiPhoneユーザーのプライバシーとセキュリティを本当に懸念しているなら、なぜiPhoneからAndroidユーザーに暗号化されたチャットを送信できるサービスを潰そうとするのか? RCSのサポートを発表したことで、アップルがここに穴が開いているのを知っていることは明らかだ」と述べています。

つまり、自社のBeeper Miniの暗号化は万全で、ユーザーのプライバシーやセキュリティに問題はないと主張しています。なおRCSの下りは、先月のアナウンスを指しています。


Beeper Miniの暗号化については、専門家の分析を待つほかないでしょう。ともあれ、アップルとBeeperの歩み寄りは難しいかもしれません。

《Kiyoshi Tane》
Kiyoshi Tane

Kiyoshi Tane

フリーライター

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著書に『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。

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