NTT法廃止めぐり通信各社トップがXで空中戦、NTT広報室も「ナンセンス」と反論。観戦のポイントを解説(石野純也)

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石野純也

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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NTT法廃止めぐり通信各社トップがXで空中戦、NTT広報室も「ナンセンス」と反論。観戦のポイントを解説(石野純也)

防衛費捻出のために始まった「NTT法廃止」の議論ですが、NTTとKDDI・ソフトバンク・楽天連合の意見は平行線をたどっていました。片方が記者会見を開けば、もう一方が対抗。決算説明会でもそれぞれの主張を展開し、それがメディア経由で相手に伝わり、再反論される……といった具合で、議論が進んでいきました。一発目の経緯は、筆者も本サイトで記事にしています。


このNTT法廃止議論に、新たな動きがありました。きっかけは、14日に楽天グループの三木谷浩史会長兼社長がXに投稿した内容。三木谷氏は、「国民の血税で作った唯一無二の光ファイバー網を完全自由な民間企業に任せるなど正気の沙汰とは思えない」と、NTTおよび議論を進めている自民党を痛烈に批判しました。自民党でこのプロジェクトチームを率いる甘利明氏を、カッコ書きで名指しするほどの怒りぶりです。

このポストに対し、ほぼほぼXへの投稿がなくなっていたソフトバンクの宮川潤一社長が追随。「三木谷社長だけに、政府との溝を作らせるのはアンフェア」と男気を見せつつ、「20年、50年先の未来に、どんな有事が起こるかわかりません。民間に引渡しするアセットとしては適正では無いことは明白です。国が責任放棄するのはダメです」と3回に分けてつづっています。

翌15日には、2019年の「バルス」というツイート(当時)を最後に、ポストを絶っていたKDDIの高橋誠社長が参戦。「三木谷さん宮川さんもおっしゃっている通り多額の血税で構築した光ファイバー等特別な資産を持つ特別法人たるNTTの義務を規定したNTT法を単純に廃止する事は、公正競争の観点、有事への対応の観点からもあってはならない」と三木谷氏にリプライする形で語っています。

また、高橋氏は、この議論がスタートしたきっかけも疑問視しています。そもそも当初は、増税を避けながら防衛費を捻出するため、政府がNTT株を売り出す案を検討していましたが、その手段だったはずのNTT法改正の主題がいつの間にかNTT法廃止になってしまったからです。三木谷氏をたきつける結果となった朝日新聞の記事では、目的だったはずの防衛財源化が見送られたことも記されています。これでは、何のために突然話を始めたのかというわけで3社の社長が激怒しているわけです。

Xでの場外乱闘を静観していたかに見えたNTTですが、17日に、突如、NTT広報室アカウントで三木谷氏に引用ポストを仕掛けます。社長アカウントじゃないんだ……という驚きが広がるとともに、その主張には各所から賛同の声や異論が挙がっている状況。三木谷氏を広報室が「ナンセンス」と一刀両断したことも、話題になっています。

NTTの主張は、ザックリまとめると次のとおり。まず、電電公社から引き継いだ資産は、最終的に株主(1/3は政府)に帰属するというもの。完全にもらったわけではない、と言いたいわけです。また、返す刀でKDDIの前身の1社であるKDDIが電電公社から分離した際に資産を引き継いだことや、ソフトバンクが買収し、現在の母体になっている日本テレコムも国鉄から資産を受け継いでいるとも主張しています。一言で表すなら、オマエモナーと返したということです。

また、電電公社時代には光ファイバーはほぼなく、現在の光ファイバーは民営化後に施設したものであるとの主張も展開しています。確かに、ファイバーを引いている土地建物は別として、ファイバーそのものは民営化後。ファクトではあるものの、何かそれは違うのでは……というような印象も受けました。

NTT広報室というまさかのアカウントからあった反論に沸いたX界隈ですが、こうした主張に対し、宮川氏が再度ポスト。空中戦ではなく、直接議論を戦わせたいと語っています。さらに、高橋氏も本稿執筆中にポスト。公開議論で方向性を決めてほしい旨を語りました。

NTTが応じなければ、フォロワー数290万を誇る"最終兵器"のmasasonこと、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長を投入する手もありそうですが、現時点では特に動きはなく、静観の構えを崩していません。

一方で、Xでの空中戦とはいえ、メディアを介した間接的な言い合いから脱し、直接議論を戦わせるようになったのは一歩前進と言えるでしょう。宮川&高橋コンビの主張どおり、公開議論になるかどうかは未知数ですが、国民全体や国のインフラに影響がある話なだけに、拙速に決めるのだけは避けてほしいと感じています。


《石野純也》
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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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