緊急事態を上空から警告、NY市警が広報ドローン試験。必要性には疑問の声も

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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Sergey / Adobe Stock

ニューヨーク市警は、異常な気候現象による被害がおよびそうな地域上空に急行し、避難勧告などの呼びかけを行うためのドローンをテストしていることを明らかにしました。

異常な気温の上昇や、巨大ハリケーン、洪水、山火事etc...。近年の異常気象によって、米国でも緊急事態の発生が以前よりも一般的なものになりつつあります。ニューヨーク州では少し前に千年に一度と表現されるほどの豪雨による洪水被害が発生したばかりです。

そのため、NY市警は、今後もこのような事態になった場合の住民の安全確保を円滑にするための対策を講じるために「遠隔操縦による公共メッセージング機能」のテストを実施することをTwitterを通じて公表しました。地元紙amNewYorkによると、テストエリアはクイーンズのクリークパークと呼ばれる一角で、天気予報で数日後に予想されるさらなる洪水に先立って試験を行っていると市警は述べています。

これはつまり、住宅街に飛行物体が飛来し、スピーカーなどでなんらかの情報を伝えてまわるSF的なものが現実世界に現れるということです。しかし、この実験に対しては、新しい監視技術を導入する90日前に、その影響範囲に関する声明と使用方針をウェブサイトに掲載し、技術導入の90日前からパブリックコメントを求めることを義務付ける、ニューヨーク市警が遵守すべき手順が守られていないとの指摘があります。

ただ、この指摘に対しては、既存技術の改良や拡張に分類することができる場合は従来どおり公告やパブコメ募集が不要だとする、いわゆるポリシーの抜け穴があり、NY市警は数か月前にもこれを利用してBoston DynamicsのSpotを利用したセキュリティロボット犬「Digidog(正体はBoston DynamicsのSpot)」導入を発表していました。

とはいえ、住民からは緊急事態の際に飛んでくるドローンの不気味さについても懸念の声があるとのこと。これはアニメ『電脳コイル』に登場する球形の監視ドローン「キュウちゃん」や「サッチー」的なものがリアルでやってくる感覚といえば、わかる人にはわかるかもしれません。

そもそも、公共への情報伝達方法としては携帯電話へのプッシュ通知があり、他にも従来のテレビ・ラジオ放送によるものなどがあるため、わざわざドローンを使用する必要性については、明確な理由の説明がなければ、住民も疑問と不安を覚えることでしょう。ニューヨーク州内における監視技術導入の動きを監視する団体Surveillance Technology Oversight Project(S.T.O.P)の事務局長アルバート・フォックス・カーン氏は、メディアに対し「ニューヨーク市にはすでに市民に連絡する手段がいくつもあり、市全体に配備するにしても何千機ものドローンが必要になるでしょう」と述べています。

ちなみに、米国以外に目を向けると、このような広報ドローンの導入は、新型コロナのパンデミックが始まったころに、上海やバルセロナで行われた例がありました。特に上海ではロックダウンのさなかにアパートの窓から住民が歌うのをやめるよう警告することなどに使われていました。


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《Munenori Taniguchi》
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