ローミング容量無制限で期待の『Rakuten最強プラン』、エリアは「楽天モバイル=KDDI」になる?(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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ローミング容量無制限で期待の『Rakuten最強プラン』、エリアは「楽天モバイル=KDDI」になる?(石野純也)
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楽天モバイルは、6月1日に新料金プランの「Rakuten最強プラン」を導入します。中二病的な色合いが濃いネーミングにはビックリしましたが、料金体系の中身はいたってまっとう。容量ごとの金額は据え置きで、料金は1078円から。20GBを超えると使い放題になり、3278円になる点も現行プラン「UN-LIMIT VII」と同じです。

▲楽天モバイルは、6月1日に新料金プランのRakuten最強プランを導入する

唯一変わるのが、「パートナー回線」と呼ばれるKDDIローミングエリアでの扱い。現行プランでは、ここが5GBに制限されており、容量超過時は1Mbpsまで速度が低下します。ここを改善し、Rakuten最強プランでは、楽天モバイルの自社回線と同様、容量が無制限になります。容量制限がなくなった結果として、5GB超過時のデータチャージもなくなります。

▲料金的にはまったく変わっていないように見えるが、パートナー回線エリアでも楽天モバイルの自社回線エリアと同様、容量制限がなくなる

この変更に伴い、楽天モバイルは人口カバー率を自社回線エリアとKDDIエリアの合算で99.9%と示しています。現状ではエリアによって料金体系が異なるため、楽天モバイル回線は楽天モバイル回線として示す必要がありましたが、どちらのネットワークも区別なく使えるのであれば、ひとまとめにした人口カバー率を出してもいいということでしょう。その方が、ユーザーにも実態が伝わりやすいからです。

▲人口カバー率を合算で99.9%とアピール。これができたのも、2つのネットワークが同一料金体系になったからだ

大きな反響、それも昨年とは一転してポジティブな反響が広がったRakuten最強プランですが、筆者が気になったのは、より広いKDDIのネットワークと完全に同一視できると勘違いしているユーザーがいることです。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長も、記者会見やその後に開かれた決算説明会で、「地下のコンジェスチョン(混雑)が解決できる」と語っていたため、エリア対策に加えて容量対策もローミングの趣旨と捉えられてしまったおそれがあります。

しかしながら、実態を見ると、ローミングを行う周波数帯はRakuten最強プランでも、KDDIが4Gで使う800MHz帯に限定されています。800MHz帯はプラチナバンドと呼ばれるほどで、エリアを広げやすく、建物などにも回り込みやすいのは事実ですが、一方で、帯域幅は限られています。KDDIが保有する帯域幅は、4G全体で15MHz幅。楽天モバイルが持つ1.7GHz帯の20MHz幅よりも少ない帯域幅しかありません。

▲現在、ローミングで提供されているのは800MHz帯のみ。KDDIによると、この仕様に関しての変更はないという

しかも、この15MHz幅に、au、UQ mobile、povoのユーザーやKDDIから回線を借りるMVNOのユーザーがつながっています。KDDIの契約者数は、22年3月時点で約6400万。500万程度の楽天モバイルユーザーが加わっても大きな問題はないのかもしれませんが、元々そこまで余裕がある周波数帯ではないのも事実です。また、KDDIによると局所的に混雑している地域ではローミングをしないとのことで、三木谷氏が語っていたような混雑対策になるのかは未知数です。

都市部、特に混雑地域での品質は、楽天モバイルが自社のエリアをどこまで構築できているかに左右されます。現時点ではまだまだユーザー数が少なく、あまり顕在化していませんが、ユーザー数が伸びれば4Gの1.7GHz帯だけでは早晩、帯域が不足する可能性があります。新たなローミング契約を結んだことで浮いたコストで、いかに5Gを整備していけるかが今後の鍵になりそうです。

実際、ここ最近、都市部でのネットワーク品質が急低下し、ユーザーからのクレームが噴出しているキャリアもあります。筆者も本サイトで取り上げたドコモです。ドコモは、その原因の1つとして屋内で800MHz帯につながりすぎてしまうことを挙げていましたが、同様の事象は、他のキャリアでも起こる可能性があります。プラチナバンドはエリア対策になっても、品質対策には使いづらいというわけです。

▲都市部の一部でドコモのパケ止まりがひどくなっている原因の1つが、プラチナバンドのひっ迫。同社は夏に向け、他の周波数帯に収容する端末を増やしていくという

また、エリア自体も「楽天モバイル=KDDI」になるわけではありません。いくら800MHz帯が飛びやすいといっても、上記のように収容できる人数には限りがあるため、それ以外の周波数帯でエリア化している場所もあります。加えて、楽天モバイル自社回線エリアでは、あくまでそちらが優先されます。楽天モバイルがつながりづらかった一部を、KDDIのネットワークで補完すると考えれば理解しやすいでしょう。

ローミング自体は現時点でも提供されているため、エリアが急拡大することにはなりません。強いて言えば、新たにローミングを行うことになった東名阪(東京・名古屋・大阪)では、屋内などでよりつながりやすくなる可能性はありますが、劇的にエリアが改善されるといったことにはならないと思います。

▲東名阪のような都市部では、地下やビル内などでつながりやすくなる可能性がある

「エリアが広がる」と誤解されがちなRakuten最強プランですが、その真価は、あくまで楽天モバイルエリアとローミングエリアで、同じ料金体系が適用されるところにあります。新料金プランとして発表されたのは、そのためでしょう。

期待感が高まっているRakuten最強プランですが、元々楽天モバイルのエリアが広かった都市部のユーザーにとってのメリットは限定的です。どちらかと言えば、“5GB制限”に苦しんでいたユーザーや、この制限があるために契約を見送っていたユーザーのためのものと言えそうです。こうした地域では楽天モバイルが弱かったのも事実。そのため、都市部以外での契約者獲得には、弾みがつきそうです。


《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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