この1週間の気になる生成AI技術・研究をいくつかピックアップして解説する今回の「生成AIウィークリー」(第154回)は、2.8兆パラメータのオープンウェイトAIモデル「Kimi K3」や、Microsoftが開発した40億パラメータの小型マルチモーダルモデルファミリー「Mage」を取り上げます。
また、4分の1のサイズで上位モデルと同等精度のThinking Machines Lab開発によるオープンウェイトモデル「Inkling-Small」や、Claude Mythosが耐量子署名HAWKとAES簡略版への新攻撃を発見した内容をご紹介します。
そして、生成AIウィークリーの中でも特に興味深いAI技術や研究にスポットライトを当てる「生成AIクローズアップ」では、中国のDeepSeekがMITライセンスのもと重みを公開したAIモデル「DeepSeek-V4-Flash」正式版を別の単体記事で取り上げます。
4分の1のサイズで上位モデルと同等精度のオープンウェイトモデル「Inkling-Small」をThinking Machines Labが公開
OpenAIの前CTO創設「Thinking Machines Lab」は、オープンウェイトモデル「Inkling-Small」を公開しました。音声と画像もネイティブに扱えます。
総パラメータ276B(アクティブ12B)で最大100万トークンのコンテキスト長のMoE(Mixture-of-Experts)モデルで、上位モデルInkling(総975B・アクティブ41B)の約4分の1のサイズながら同等の性能を出し、動かすコストを抑えられる点が強みです。
上位モデルより後に学習を始めたことでデータ配合や手法を改良でき、さらにInklingを教師役とした蒸留とコーディングの強化学習を追加しています。
その結果、各分野の専門家が作った難問ベンチマークHumanity’s Last Exam(テキストのみ)で31.6%と上位モデルの29.7%を上回り、ソフトウェア開発における問題解決能力を測定するSWEBench Verifiedでも80.2%を記録しました。





Inkling-Small
Thinking Machines Lab
Blog | Hugging Face
Claude Fable 5やGPT-5.6 Solに性能迫る、2.8兆パラメータのAIモデル「Kimi K3」がオープンウェイトで登場
Moonshot AIがオープンウェイトモデル「Kimi K3」を公開しました。パラメータ数2.8兆(トークンあたりの活性化パラメータは1,040億)で、100万トークンのコンテキスト長と画像理解を備えています。
同社は、総合性能ではClaude Fable 5やGPT 5.6 Solに及ばないとしつつ、評価全体でフロンティア級の成績を示したと説明しています。前世代K2と比べ、スケーリング効率は約2.5倍に向上したとのことです。
長時間にわたる自律作業では、GPUカーネルの最適化でFable 5と互角の結果を残し、48時間の自律実行で小型チップを設計した事例も紹介されています。天体物理学の数値計算では、熟練研究者なら1~2週間かかる作業を約2時間で終えたとしています。
提供はKimiアプリ、Kimi Work、Kimi Code、APIで開始済みです。API価格は100万トークンあたり、キャッシュヒット入力0.30ドル、キャッシュミス入力3.00ドル、出力15.00ドルとしています。





Microsoft、40億パラメータの小型マルチモーダルモデルファミリー「Mage」公開
Microsoftが、マルチモーダルモデルファミリー「Mage」を公開しました。すべて4B(40億)パラメータにそろえた小型構成で、限られた計算資源でも学習や運用ができることを狙った研究向けのモデルです。
理解側の「Mage-VL」は、画像と動画を読み取るモデルです。動画は前後のコマがよく似ているため、全部を同じ密度で見る必要はありません。Mage-VLは動画圧縮と同じ発想で、基準となる領域とそこから変わった領域を16×16のパッチ単位で分けて扱う仕組みを取り入れ、視覚トークンを75%以上削減。推論を最大3.5倍高速化しました。
言語側をQwen3-4Bに固定して視覚エンコーダのみを差し替えた比較では、動画理解や時間的な位置合わせで報告されている全ベンチマークでQwen3-VL-4Bを上回ったとされています。モデル全体としても、静止画ではQwen3-VL-4Bと同等、空間理解と動画理解では先行すると報告されています。
生成側の「Mage-Flow」は、文章からの画像生成と指示による編集の両方に対応します。512から2048まで、極端な縦横比も一つのモデルでこなせるのが特徴です。生成・編集それぞれにBase、RL調整版、4ステップのTurboが用意されています。

専門家が2年気づかなかった暗号方式の弱点、Claude Mythosが60時間で発見。耐量子署名HAWKの鍵強度を実質半減
Anthropicは、AIモデル「Claude Mythos Preview」が暗号アルゴリズムの数学的な弱点を発見したと発表しました。
1つ目の成果は、耐量子署名方式HAWKへの攻撃です。米NISTの公募で2年の審査を生き延びてきた候補ですが、Mythosはわずか60時間で既知の最良攻撃を上回り、実効的な鍵の強度を半減させました。API費用は約10万ドルと推定しています。
2つ目は、共通鍵暗号AES-128のラウンド削減版(10ラウンド中7ラウンド)への攻撃です。Mythosの攻撃手法により、従来より200~800倍高速化しました。AESの成果はモデルが1週間で見つけた一方、正しさの確認には研究者2名で1カ月ほどかかりました。
どちらも現行システムには影響しませんとのこと。HAWKは未採用の候補であり、AESへの攻撃も簡略版に限られるためです。
Anthropicは責任ある開示手順に従い、関係者に共有したうえで公表し、今後の議論の必要性を訴えています。

HAWK-n Key Recovery Reduces to SVP in Dimension n/2 + 1
Zygimantas Straznickas and Stephen A. Weis
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