通信業界向けのイベントとしておなじみのMWCですが、今年は例年以上にAI一色。キャリアや通信機器ベンダーはもちろんのこと、スマホメーカー、チップセットベンダー、さらにはアプリ開発者も“AI推し”の色合いが濃くなっていました。

(▲画像:今年も行ってきたMWC。写真はメジャーメーカー、キャリアの出展が多いホール3の様子)
スマホAIの潮流の1つとして挙げられるのが、先回りするAI。サムスン電子が「Galaxy S26」シリーズのキャッチフレーズに使っていますが、Androidを手掛けるGoogleもこの方向性を打ち出しており、同モデルにはGeminiによるアプリの自動操作機能が対応しています。
アプリの自動操作については、Google以外の各社も取り組んでおり、中国メーカーのZTEはTikTokでおなじみのバイトダンスとタッグを組んで同社のAIモデルを搭載した「M153」を出展。音声による命令を解釈して、スマホを自動的に操作できるのが特徴です。また、「この動画をTikTokとXに投稿しておいて」というように、複数の操作をまとめて頼めるのもこの機種のメリットです。

(▲画像:ZTEのM153は、バイトダンスのAIを搭載。アプリの操作を代行する)
こうした自動化機能はOSレイヤーに深く組み込まれているものですが、MWCにはアプリで同じようなサービスを実現しようとしている会社も出展していました。米カリフォルニア州に拠点を構えるAGIという企業が開発した「AGI」アプリがそれです。
いわゆる汎用人工知能を意味するAGI(Artificial General Intelligence)と聞くとその大げさぶりに身構えてしまいますが、同社がアピールしていたのは上記のような自動化アプリ。Androidスマホに後付けでインストールすることができ、端末を問わずに利用できるのがメリットになります。

(▲画像:MWCに出展していたAGIのアプリ)
Geminiの自動化は現在、英語と韓国語のみで動かせるアプリもUberなどのごく一部にとどまっています。ZTEのM153も同様で、できることには限界があります。一方で、AGIには言語やアプリの制限がほとんどありません。実際、会場に展示されていたアプリは、日本語で動作させることができました。

(▲画像:他の機能と同様、アプリを直接AIが操作する)
以下は、それを撮影した動画。人間に話しかけるかのように、条件を並べてバルセロナのホテルを検索してもらいました。動画をご覧になっていただければ分かるように、アプリが直接Googleマップを操作し、筆者の言葉を解釈したうえで検索結果に絞り込みをかけています。
ちなみに、ここでGoogleマップが立ち上がったのは、その他のアプリがインストールされていなかったため。会場で早期アクセスの登録をしてもらった筆者私物の「Galaxy Z Fold7」で似たような指示を出したところ、インストールされていたBooking.comのアプリが立ち上がり、同じように検索&絞り込みが行われました。
(▲動画:日本語で話しかけた内容をうまくまとめて、アプリを起動している)
日本語かつ、日本向けのアプリでどこまでできるかを試してみるため、筆者の端末にインストールされたAGIアプリには、「楽天市場でシャオミの毛玉取り機を調べて結果を表示して」といった命令を出してみました。
結果は、ギリギリ合格。楽天アプリをきちんと立ち上げ、検索窓を開いて「シャオミ 毛玉取り機」と入力したうえで、結果のページを見て複数のアイテムがあるという返事がチャット欄に返ってきました。筆者が確認してみると、シャオミ以外の毛玉取り機がかなり含まれていたため、もう一歩踏み込んで該当ページにアクセスしてほしかったものの、ほとんどの操作は自動化できたと言えます。
また、「ANAのアプリを開いてマイレージがどのぐらい貯まっているか教えて」という質問に対しても、きちんとANAアプリを開き、マイルを表示するリンクをタップしたうえで、結果を読み取ってくれました。
複数アプリの連携もお手の物です。AGIアプリに「もっとも最近撮った写真をXにポストして」と言ったところ、Galaxyのギャラリーアプリを開き、一番新しい写真を表示したうえで、その画像を共有メニューからXに投稿しました。投稿直前には、本当に実行していいかどうかの確認メニューも表示されます。

(▲画像:筆者自身の端末にインストールして、MWCの会期中だけ使ってみた。写真を探して、Xに投稿することも簡単にできた)
ほとんどの操作を自動化できてしまうAGIアプリですが、サードパーティにスマホの画面を読み取り、かつ操作までさせてしまうところに不安を覚える向きもありそうです。この作り方だと、個人情報はもちろん、クレジットカード情報や銀行口座の情報などまで読み取り放題。正直、リスクはかなり高いと言えます。
もう1つ課題と言えそうなのが、ビジネスモデルです。AGIアプリは現在、一部ユーザー向けに限定公開されている状態ですが、仮に正式版が有料で出たとしても、自動化に対して料金を払うユーザーがどの程度いるかは未知数。便利な反面、お金を払ってまで使うものかという疑問もわきます。

(▲画像:現在、アプリは公開されているが、すぐには利用できない)
こうした懸念はAGI側も認識しているのか、同社は現在、端末メーカーとの提携も模索しているといいます。メーカー製スマホのプリインストールアプリとして組み込んで提供されれば、プライバシー上の不安はある程度解消されます(そのメーカーを信用できれば、ですが)。
また、プリインストールでメーカーから料金を受け取る形であれば、ユーザーから直接料金を払ってもらう必要はなくなるかもしれません。

(▲画像:MWCでは、レノボと一緒にデモを行い、その実力をアピールした)

(▲画像:クアルコムとも提携、アプリは同社のブースにも展示されていた)
メーカーにとっても、独自でAIを開発する必要がなくなり、早期導入が可能になります。実際、AGIはレノボと共同で検証を行っている旨を発表しているほか、MWCでは同社に出資するクアルコムのブースにもスマホAIの事例として大々的に紹介されていました。今後、このAGIアプリを組み込んだAIスマホが登場する可能性は十分ありそうです。









