AI活用ゲーム開発ハッカソン、賞金100万円を獲得した作品は?QwenのAlibaba Cloud主催『Tokyo Game Jam』イベントリポート

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2025年4月25日~27日にAlibabaグループのクラウドサービスプロバイダー Alibaba CloudとハッカソンコミュニティMeltingHackが開催したゲーム開発ハッカソン、Tokyo Game Jam 2025 Spring のイベントリポートをお届けします。

Alibaba Cloudといえば、生成AIの最先端のひとつQwen3をはじめとするAIソリューションなど、アリババグループのデジタルテクノロジーとインテリジェンスの中枢として知られる企業。

2025年4月末に実施したハッカソン Tokyo Game Jam 2025 Spring では 「開発もしくはゲームにAI技術を活用すること」がテーマです。

ゲームの企画から完成、プレゼンテーションデモまで3日間というハードなハッカソンを制して優勝賞金100万円を獲得したのは、ゲーム業界志望者やアマチュアの5人チームが開発したカードゲーム『Big Brother』。

参加した各チームの生成AI活用は、アートワークなどアセットの作成から、キャラクターとの会話生成、ゲームの判定など多岐にわたりましたが、1位に選ばれた『Big Brother』は生成AIとプレーヤーの相互作用で、ゲームのルールそのものが変化するアイデアが高く評価されました。

3日間にわたるゲームジャムの様子と各チームが披露した作品について、そして開発の苦労やハッカソン参加者へのアドバイスなど優勝チームのインタビューをお伝えします。

Tokyo Game Jam Spring 2025とは

Tokyo Game Jamは、Alibaba CloudとMeltingHack が主催する「ゲームジャム」イベント。

ゲームジャムとはいわゆるハッカソンの一種で、ゲーム開発者や志望者がチームを組み、限られた時間でゲームのコンセプトからデモまで完成させるイベントです。

今回のTokyo Game Jam 2025 Spring は、Alibaba CloudのAI環境が利用できるだけでなく、賞金総額は140万円という豪華な内容。審査員にはゲームパブリッシャーをはじめ各分野の専門家が揃いました。

ベテランのゲーム開発者からゲーム業界志望の学生まで、ウェブ公募で約80人が参加し、12チームを編成してアイデアと技術を競いました。

完成したゲームの審査項目は、

1.ゲーム性 (Gameplay)

  • 没入感があり、プレイヤーを引き込む内容か

  • ルールや操作が直感的で、プレイ中に工夫や戦略性を感じられるか

  • リプレイ性があり、何度も遊びたくなる仕掛けがあるか

2. AIならではの革新的なユーザー体験 (Innovative UX Powered by AI)

  • AIとの対話・学習・適応を通じて、プレイごとに、プレイヤーごとに異なる驚きや体験があるか

  • AIを活かしたUI/UX表現やインタラクションが設計されており、従来のゲームにはない革新性があるか

  • ゲーム制作のプロセスにAIが十分活用・工夫されているか

3. ビジュアル・サウンド演出 (Visual & Audio Presentation)

  • グラフィック、アートスタイルが独自のゲーム世界観を強化し、魅力的な体験を提供しているか。

  • サウンドエフェクトやBGMが、プレイ体験に没入感や感情の高まりを加えているか。

  • 視覚・聴覚の演出が統一感を持ち、細部までこだわりが感じられるか。

4.将来性、今後の期待度 (Project's Potential / Vision)

  • プロジェクトのコンセプトが秀逸で、大きな将来性を感じられるか。

  • 新たなゲームジャンル、これまでにないゲーム体験などを開拓するポテンシャルが期待できるか。

  • 従来のゲーム産業・エンターテイメントにおける課題を解決するビジョンがあるか。

短時間でゲームを完成させるゲームジャムでは、AIを活用した効率化や省力化が有効ですが、さらにAIならではのコンセプトや将来性を評価する内容となっています。

主催者によるルールの説明に続いて、Alibaba CloudのAI / Big Data ソリューション・アーキテクト藤川氏によるAlibaba Cloudについてのプレゼン。

Alibaba Cloudは、IaaS (Infrastructure as a Service)分野ではAmazon、Microsoft に次ぐ世界3位、アジア太平洋地域ではトップというクラウドサービスプロバイダー。

同時に、高性能なAIモデル Qwenシリーズ、AI開発プラットフォームのPAI、生成AIアプリケーションの開発・運用サービス Model Studio など、最先端AI技術でも知られてきました。

ゲーム開発・運営向けサービスにも注力しており、今回のTokyo Game Jam参加者にはQwenなど開発に利用できる様々なモデルへのアクセスを提供します。

初日のお楽しみネットワーキングタイムは、参加者どうしでチームを編成する重要なフェイズも兼ねています。今回のレギュレーションではグループ参加が可能だったため、すでにチームができている参加者もいれば、自己紹介やお互いのスキル、方向性をマッチングしてその場で結成されるチームも。

ハッカソン経験のない参加者も、イベントのDiscordチャンネルやオーガナイザーの働きかけを通じて無事全員がチームになりました。

いよいよデモ&プレゼン

オリエンテーションとチーム編成、ゲームアイデアソンの初日、実際の開発に集中する二日目を経て、三日目の夕方から作品のデモとプレゼンが始まります。

すでに高い完成度でプレイアブルなゲームをデモしつつピッチできるチームもあれば、資料はあってもゲーム自体が間に合わなかったチームもあり、肝心のデモでトラブルが発生するハッカソンのお約束も。

特に注目を浴びた作品を軽く紹介すれば、

『Prompt Vision』

https://gimu-ai.itch.io/promptvision

画像生成AIを使ったクイズゲーム。プレーヤーにはプロンプトを伏せたまま、『ナポレオン』『サーフィン』『南極』といった奇想天外な組み合わせで画像を生成し、どんなキーワードから出てきた画像なのか?を当てるパーティーゲーム

『Cosmic Diner』

https://redbluebird.itch.io/cosmic-diner

クッキング(クラフト) x ホラーゲーム。食材でもそれ以外でも自由に組み合わせて生成した料理を、ラブクラフト風コズミック・ホラーなお客にサーブする奇妙なダイナーが舞台のゲーム。

クラフト部分、評価の部分にAIを活用。3D環境を歩いて調理するビジュアルの完成度、不気味な演出がオーディエンスには高評価。

『The Normal Dating Game』

https://bt-games-mac.itch.io/the-normal-dating-game

ビジュアルノベル風のクラシックな恋愛シミュレーションと『人狼』の要素を組み合わせた『普通の』デートゲーム。魅力的なデート相手のなかに実は……のホラー要素が特徴。

キャラクターとの会話と判定にAIを活用。キャラクターの性格にあわせた問いかけに、プレーヤーは自由な文章で回答できる。

『Who Pulls the Trigger?』

https://siohi.itch.io/who-pulls-the-trigger

AIキャラクター相手のロシアンルーレット。手番ごとに、自分を撃つか相手を撃つか選択できる。

ただしAIはどの弾倉に実弾が入っているか知っており、台詞でプレーヤーを騙しブラフをかけてくる仕組み。うまくプレーヤーに悟らせず、誘導する台詞をLLMで生成。

『Lost and Found』

https://kenrio.itch.io/lost-and-found

アイソメトリックな俯瞰マップの街をお助けロボットとして探索、様々な人の落とし物を拾って届けてあげるゲーム。シンプルな探し物に加えて、プレーヤーの行動ログから『その日の思い出』を動画として生成する要素も

『Big Brother』

https://sushibytes.itch.io/big-brother

小説『1984』と、カードゲーム『Mao』にインスパイアされたディストピアな心理カードゲーム。基本的なプレイングカードの52枚セットを使い、基本的にはUNOのように一定のルールでカードを出し、先に手札がなくなったプレーヤーの勝利。

ただし正確なルールはプレーヤーに開示されず、ゲーム進行につれてプレーヤーやAIが新ルールを追加してゆく。他の参加者のプレイングを観察して、暗黙のルールを推理するゲーム性。AIにPythonスクリプトとしてルールを生成させることで進行する。

優勝作『Big Brother』に「ゲームの未来を見た」

Tokyo Game Jam Spring 2025を制したのは、チーム SushiByteの『Big Brother』。

審査員を代表して語った株式会社マイネット CTO 堀越氏によれば、上位の三作品はいずれも甲乙つけ難く、どれが優勝してもおかしくない難しい審査だったものの、決め手となったのは「AIがゲームそのもの、つまりルールを作り出す」アイデア。

他の作品はAIにスコアを判定させたり、画像や台詞の生成に活用したのに対して、『Big Brother』ではAIがゲーム中にコードを生成してルールを作り、プレーヤーが探る新しいゲームプレイを提案したことで、「ゲームの未来を見た」(堀越氏)と評しました。

堀越氏によると、AIによるルール生成と、ディストピア小説『1984』に想を得た監視社会、暗黙のルールによる支配と疑心暗鬼といったテーマがマッチするのも優れた点。

AIが決定し、開示されない理不尽なルールはストレスにもなり得ますが、それも含めて他のプレーヤーの行動と結果からルールを推測し、手探りで生き残りを目指すゲーム性とディストピアテーマの統一性も高く評価されました。

優勝チームインタビュー

優勝したSushiBytes は、Jed、Bettina、Sushant、Dan、Ali の5人チーム。米国や欧州、日本やアフリカなど国際色豊かなルーツを持つチームです。ゲーム開発についてはアマチュアで、ゲームジャムやハッカソンについてもほとんどのメンバーが初体験だったとのこと。

Q: 優勝おめでとうございます。受賞が決まったとき、どんな気持ちでしたか?

とても嬉しかったです!正直、勝てるとは思っていなかったので。ただ、アイデアにはみな自信があったので、可能性を認めていただき本当に感謝しています。アイデアを形にするために多くの眠れない時間を費やしたので、それが報われて嬉しいです。

メンバーのほとんどはハッカソンやゲームジャムが初めてだったので、本当にびっくりしました。チーム全員の力がなければできなかった結果だと思っていますし、皆と一緒にここにいられて嬉しいです。

Q: 優勝できた一番の理由は何だと思いますか?

AIを画像やテキスト生成といった一般的な使い方ではなく、ゲームメカニズムのプロセスに応用し、新しいゲームメカニズムを生み出そうとした点だと思います。

将来の、プレイが動的に進化するようなゲームの開発に向けた一歩だと考えていて、これから別のゲームでもこうした方向性を見てみたいと思っています。Alibaba Cloudが提供してくれたテクノロジーにもとても感謝しています。

Q: 今回のゲームジャムで一番苦労した点は?

コードの様々な部分を、意図した通りに連携して動作させるのが大変でした。部分を作るのもそうですが、全体として動作させるのが難しくて、ときには部品から作り直す必要もありました。それもあって、進捗が見えにくいのも苦労しました。

Q: Alibaba Cloudを使ってみてどうでしたか?

『Big Brother』ではAIで新しいルールを生成するために、Alibaba CloudのQwen2.5-Coderにリクエストを送っています。このAPIにアクセスできなければ不可能だったと思います。

他にもAlibaba CloudのAIを組み込みたいアイデアはあったんですが、時間が足りませんでした。

Q: 優勝賞金100万円は何に使いますか?

Jed:もちろん全員で公平に等分します。個人的には、身近な人々のために使いたいです。ガールフレンドが優勝を喜んでくれると思うので、ぬいぐるみをたくさん買うとか?あとは音楽がすごく好きなので、何か機材に使うかもしれません。

(そのほか、メンバーからは「食費」「最近PCを自作したので拡張に使いたい」「今後、別のプロジェクトアイデアが浮かんだらそれに活かしたい」など)

Q: ゲームジャムに挑戦したい人へのアドバイスはありますか?

・大事なのは諦めないことだと思います。週末の間、何度も諦めそうになりました。挑戦して失敗する方が、全く挑戦しないよりもマシです。あとは、お互いのやっていることをしっかり見てくれる、信頼できる相手と参加すること。

・おそらく一番重要なのは、信頼できるメンバーを見つけることです。私たちはグループで参加しましたが、ゲームジャムでは会場でチームを組むこともあります。私たちの場合は、お互いに信頼でき、力をあわせればベストな結果が出せると信じていました。

・完成までの過程が常にうまくゆくとは限りません。最初から完成像が見えているわけでもないので、時間がかかることを覚悟して、自分自身とアイデアのビジョンを信じてやりとげることが必要だと思います。

・コンフォートゾーンから抜け出すこと。以前ハッカソンに参加する機会を逃してしまい、みんなが楽しかったと言っているのを聞いて、本当に残念だと感じてました。だから今回のイベントに参加できて本当に良かったです。

最後は参加チーム全員で記念写真。Alibaba Cloud は今後も定期的にゲームジャムや、開発者向けイベントの開催を予定しています。腕に覚えがあるかたも、これからAIやゲーム開発を学んでみたいかたも、仲間と出会い最新の技術を実践で身につけることができ、結果によっては賞金も狙える機会です。

Alibaba Cloud公式ホームページ https://www.alibabacloud.com/ja

Alibaba Cloud Xアカウント https://x.com/AlibabaCloud_jp

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