1週間の気になる生成AI技術・研究をピックアップして解説する連載「生成AIウィークリー」から、特に興味深い技術や研究にスポットライトを当てる生成AIクローズアップ。
今回は、生成AIが大企業におけるソフトウェア開発者の仕事に与える影響を調査した論文「The Effects of Generative AI on High Skilled Work: Evidence from Three Field Experiments with Software Developers」に注目します。
この研究では、マイクロソフト、アクセンチュア、そして匿名のFortune100電子機器メーカー(以下、匿名企業)において、合計4,867人の開発者を対象に実験が行われました。実験は、2022年から2023年にかけて実施されました。
実験では、ランダムに選ばれた開発者グループにコーディング支援AIツール「GitHub Copilot」へのアクセスが与えられました。GitHub Copilotは、OpenAIとの協力のもとGitHubが開発したツールで、インテリジェントなコード補完を提案する機能を持っています。
このツールは、開発者が書いているコードやコメントの文脈を分析し、関連するコードスニペットやコメント、ドキュメントを生成します。
3つの企業を分析した結果、AIツールを使用した開発者の週当たりの完了タスク数が26.08%増加したことが明らかになりました。また、コミット数は13.55%、ビルド回数は38.38%増加しました。これらの結果は統計的に有意であり、生成AIが高度なスキルを要する職種の生産性を大幅に向上させる可能性を示唆しています。
特筆すべきは、経験の浅い開発者ほど大きな恩恵を受けていることです。
マイクロソフトのデータを分析すると、若手や下位職級の開発者がこのツールを積極的に採用し、顕著な生産性向上を達成しています。新技術に対してより柔軟に使用して、その結果コード生成や更新の効率が大幅に改善されました。
一方、勤続年数の長いベテラン開発者では生産性の向上は若手と比べて低い結果を示しました。この傾向は、若い世代の技術適応力の高さを示すとともに、AIツールが新人育成に影響をもたらすことを示唆しています。