手のひら投影型AIデバイス「Humane Ai Pin」で未来っぽい体験を始めた。動画付きファーストインプレッション

テクノロジー AI
五島正浩

シリコンバレーのIT企業でエンジニアとして働きながら、最新のシリコンバレーの話題を紹介しています。

特集

手のひら投影型AIデバイス「Humane Ai Pin」で未来っぽい体験を始めた。動画付きファーストインプレッション
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サンフランシスコに本社を置くスタートアップ企業、Humaneが開発するAi Pinがようやく手元に届きました。前回の記事で紹介したとおり、3月末には事前設定などの発送前に必要な手続きは全て完了し、後は到着を待つだけとなっていました。今回はこのAi Pinの第一印象についてレポートします。


なおHumaneのAi Pinの販売は現在米国のみとなっています。筆者は米国在住で昨年11月の先行販売時に注文をしました。本記事はこの購入体験に基づいて記述しています。

洗練されたAi Pinのデザイン

待ちに待ったAI Pinは質感の良い丸みを帯びた箱の中に入っていました。本体を箱から取り出す時にライトがカラフルに光ったりして演出も凝ってます。同梱されていたクイックスタートガイドのイラストもどことなく未来を感じるもので実にかっこいいものでした。

洗練されたデザインだからでしょうか、手に取った時の感触がとても良いです。初めてハードウェアプロダクトを開発したスタートアップのものとはとても思えません。共同創業者のImran Chaudhriは20年以上Appleでプロダクトデザイナーとして働いていました。そんな彼がこだわり抜いた自信作なのでしょう。

想像していたよりも少し小さい印象でした。この小型デバイスの中にカメラやバッテリーのほか、手のひらに照射する小型プロジェクターまでが組み込まれています。HumaneはAi Pinを開発するためにAppleなどで経験を積んだ優秀なエンジニアを多く採用したと言われています。

Humaneの創業者二人からのメッセージも同梱されていました。Humaneはプロダクトの発表前からDiscordでコミュニティを立ち上げ、アーリーアダプターとなるユーザとの繋がりをとても大切にしています。Humaneのビジョンに賛同するユーザーにいち早くAi Pinを体験してもらい、そこから得られるフィードバックが今後の方向性を決める重要な指針になると考えていることが伝わってきました。

▲マットブラックのAi Pin Eclipseモデル

▲創業者二人からユーザーへのメッセージが同梱されてた

パスコードの入力に戸惑う

早速胸に取り付けてみました。Ai Pinの本体とBooster Batteryと呼ばれる拡張バッテリが磁石でくっつくようになっており、Booster Batteryを本体の裏側に服を挟むかたちで固定します。磁石がかなり強力なのでトレーナーやパーカーでは落ちる心配はありませんでした。一度取り付けると胸にあることをことを忘れてしまいそうです。(厚手の衣類の場合は別売のクリップが必要になるかもしれません)

次はパスコードの入力です。出荷前にサーバ側で設定した4桁のパスコードを初回起動時に入力する必要があります。Ai Pinにはディスプレイもキーボードも無いので、ここで彼らがLaser Ink Displayと呼ぶ手のひらプロジェクター機能の出番です。手をAi Pinの前にかざすとプロジェクターの投影が始まりました。

しかしここで問題が。手のひらにレーザーで投影することはできるのですが、表示される指示通りに手のひらを移動させても、パスコード入力画面に進むことができません。HumaneのDiscordで聞いてみると、Humaneのメディア担当Sam Sheffer本人が返事をくれて、手を手前に少し動かしてすぐに後ろに動かしてみてとアドバイスをくれました。このジェスチャーを試したところあっさりパスコードの入力画面に移ることができました。ちょっとしたコツがあったようです。

ジェスチャーには慣れが必要

パスコードの入力は、手のひらに数字のカードが投影されるのでこの中から4桁の数字を順番に選びます。手前に動かすと小さい数字が、押し出すと大きい数字が表示され、人差し指と親指の指先をくっつけるとその数字が選択されます。手のひらに投影されるシアンカラーのUIといいジェスチャーの時に出る音といい、映画で出てくる未来のシーンを体験している感じです。

パスコードを入力し終わるとAi Pinが使えるようになりました。T-Mobileのモバイル回線に接続され、humane.centerというポータルサイトの自分のアカウントと連携されました。このポータルサイトから自分の問い合わせた内容の履歴、カメラで撮影した写真・動画の確認などができます。

Apple WatchなどはiPhoneを母艦にして設定するのが前提になっていますが、Ai Pinはこうしたスマホとの連携がありません。どうなるんだろう?と思っていましたが、予想以上に簡単にできてしまいました。

ホームでは、現在の時間、天気、日付の確認ができるようになっています。この画面を表示している時に手のひらを押し出すと設定画面が出てきます。手のひらを上・下・左・右に傾けながらメニューを移動させて選んでいきます。手を握るジェスチャーで一つ前の画面に戻ります。これらのジェスチャーには少し慣れが必要だと思います。

なおAi Pinを取り外すとロックされますので、再度取り付けた時にはピンコードを入力してアンロックする必要があります。次の動画はアンロック時のものです。なお動画にした際に手のひらに表示された文字が見辛くなってしまいましたが、実際にはもっと視認性が高いです。

対話型AIサービスで問い合わせ

Ai Pinは単体で対話型AIサービスを利用することができます。胸に取り付けたAi Pinを指一本を使って押している間に音声入力を行うだけです。結果も音声で聞くことができます。いつでもAIサービスに簡単にアクセスできるのはとても便利だと思いました。

実際に使ってみると回答内容が長いと感じることが時々あります。スマホやPCでは長いテキストが画面上に表示されいくのを見るのも苦にはなりませんが、音声の場合は回答を聞き取ることに集中しないといけないので、まず最初に要約した簡単な回答を返してくれた方が都合が良いと思います。問い合わせの仕方を含めて最適化は今後必要そうです。

翻訳機能が素晴らしかった

Ai Pinには音声による翻訳機能があります。米国での生活が長くなっても英語の発音は苦手ですし、自分の考えを英語でうまく伝えられず歯痒い思いをすることはよくあります。Ai Pinの中でも個人的に一番注目していた機能です。

Ai Pinを指二本で押ながら話すことで翻訳機能が使えます。実際に試してみると口語っぽい口調で日本語を少し長めに話しても、話のコンテクストを理解して的確でかつ流暢な英語に変換してくれました。ついにこのレベルに到達したのかと感心します。ただし英語を日本語に訳して時の日本語は少し変な抑揚になっている部分があるので改善が望まれます。将来的には旅行時以外にも日常生活やビジネスのシーンでも幅広く使える可能性が出てくると思われます。

カメラを使ってみた

Ai Pinにはカメラがついていて、二本指でAi Pinをダブルタップすると写真が撮影できます。ピピッという音に続けてシャッター音が合計4回鳴るので複数枚撮影して何らかの処理をしているものと推測します。撮影された写真はhumane.centerのポータルサイトの方にアップロードされ確認することができます。また二本指でダブルタップしてホールドすると最大15秒の動画撮影も可能です。

早速Ai Pinを胸に取り付けて人が集まる街の中に出かけて撮影したところ、なかなか綺麗な画像でした。正直あまり期待していなかったのでちょっとびっくりです。

Ai Pinを胸につけて歩いていたら3度声をかけられました。翻訳のデモをすると「クールだ!」と喜んでもらえました。シリコンバレー周辺ではAI Pinをネットで見て気になっている人が結構いるようです。

▲Ai Pinのカメラで撮影した写真

今回はHumane Ai Pinを開封し一部の基本機能を試しました。各種設定を確認するために手のひらに表示してジェスチャーをいろいろと試していると、クールダウンのため一旦取り外す必要があったり、バッテリーの消費が早くなることが何度かありました。この辺りは早く対策してほしいです。Ai Pinはリリースされたばかりなので、これ以外にもまだまだ多くの改善や機能追加が必要だという印象です。

しかし今回プロダクトをリリースしたことにより、胸につけた小型デバイスだけで対話型AIサービスや音声翻訳を利用したり、手のひらにレーザーで照射してジェスチャで操作するというHumaneがこれまで主張してきたコンセプトが実現可能であることは示せたのではないでしょうか。今後Humaneがアーリーアダプターのフィードバックを取り入れて、彼らが描くビジョンの実現に向けAi Pinをより魅力的なものに進化させていくことに期待したいです。

ところで、以前の記事でも紹介しましたが、2022年7月に公開されたHumaneのイメージ動画は皆既日食の後に手のひらにHumaneのロゴが現れるというものでした。米国では今年4月8日は広い範囲で皆既日食が観測された日でした。その数日後にHumaneがAI Pin出荷を始めたのはこの動画と関係してると思うのは私だけでしょうか。

《五島正浩》

五島正浩

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