Sは王道、Zは技術の革新、Galaxyの戦略をサムスンのモバイル部門 社長に訊く。日本市場への注力は継続、SIMフリーモデルの拡充に期待(石野純也)

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石野純也

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ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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サムスン電子の「Galaxy S23/S23 Ultra」が4月20日に発売されます。ドコモとKDDIは2機種を、楽天モバイルはS23のみを販売。今年はオンライン限定で512GB/1TB版を販売したり、久々に楽天モバイルからSシリーズを発売したりと、サムスン電子が、日本市場攻略のアクセルを踏んできた印象もあります。


▲サムスンは、4月20日にGalaxy S23シリーズを発売する。写真はドコモとauが取り扱うS23 Ultra
▲ベーシックハイエンドのGalaxy S23は、ドコモ、au、楽天モバイルの3社で販売される

その一環として、韓国にある本社から、モバイル部門であるMX(Mobile eXperience)部門の社長を務める盧泰文(ノ・テムン=TMロー)氏が来日。日本の報道陣とのグループインタビューに応じました。同氏は、Galaxy Sシリーズの進化の方向性や、フォルダブルを中心としたGalaxy Zシリーズとの差別化戦略、さらには日本におけるSIMフリー(メーカー版)モデルの展開など、幅広くその方針を語っています。

▲2020年にスマホ部門の社長に就任した盧氏。直後にコロナ禍になり、リアルなグローバルイベントに登壇したのは2月のUnpackedで3年ぶりとなった。日本の報道陣とのインタビューに応えるのも、これが初めて

サムスン電子は、「顧客が最も望む機能や要求に応じて、新しい価値やエクスペリエンスを発展させる」方針でGalaxyを開発しているといいます。Galaxy S23シリーズも同様で、「グローバルの消費者から意見を聞き、それを反映させるところからスタートした」そうです。ここでの調査では、大きく4つのニーズがあることがわかったと盧氏は述べます。

「1つは、Galaxy S23シリーズで特に強化しているカメラ機能です。カメラ性能に関しては、現在ある機能にとどまらず、動画や夜間撮影、周囲の人にシェアする機能も含めて、エンドツーエンドで提供できるよう開発しました。

2つ目に集中したのが、ゲームを中心とした性能です。パフォーマンスを確保し、それをサポートできるバッテリーの持ち時間も実現しました。Galaxy専用のチップ(Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxyのこと)とハードウェア、AIアルゴリズムの開発も含めて研究の努力をし、最高の性能を提供できるよう邁進していきました。

3つ目がグローバルの消費者に接続体験を提供し、ユーザー体験(UX)の完成度を高めるため、One UIを高度化したこと。マルチデバイスの接続やユーザーインタフェースの高度化に注力しました。

4つ目が若い世代が関心を持っているエコやリサイクル素材の拡大です。持続可能性の観点から、より多くのリサイクル素材を適用するとの同時に、ソフトウェアアップデートの期間も延ばすことで、より長く、持続的に使用できるようにしました」

▲暗所撮影を大幅に強化したGalaxy S23シリーズ。特にS23 Ultraは、2億画素のセンサーと相まって、そのクオリティが格段に上がった

また、Galaxy Sシリーズは「最高のカメラエクスペリエンスやパフォーマンス、ディスプレイ、安定感といったバリューを維持して開発を行っている」といいます。いわゆる王道のフラッグシップスマートフォンとして、性能やユーザー体験を高めているのがGalaxy Sシリーズと言えるでしょう。これに対し、Galaxy Zシリーズを提供する狙いは技術の「革新」にあるといい、盧氏はNoteシリーズやZシリーズの歴史を語ります。

「サムスンのGalaxyは多くの革新を引き起こしていると考えています。Noteというカテゴリーを作ったのは2011年ですが、今では当たり前になっている大画面もこのときに完成していました。ペン入力の体験もモバイルデバイスに適用しています。

一方で、4年前の2019年にはフォルダブルスマホを発売しました。大画面でありながらコンパクトな製品(Fold)に加え、一般的なサイズのスマホを折り曲げて持ち運べるFlipも提供しています。このような革新は今までもやってきましたし、これからも継続していきます」

▲王道のSシリーズに対し、Zシリーズは革新を進めていくシリーズという位置づけ。大画面スマホを定着させたNoteシリーズのような役割を果たすシリーズだ。写真はGalaxy Z Fold4

Galaxy Zシリーズは、ここ3年ほど、8月ないしは9月に発表されていますが、次の製品に向け「消費者が望むニーズを綿密に分析している」といいます。そのプロセスとして、「フォルダブルは大画面で利用する部分が強く、生産性や閲覧性の面でのニーズがほかの製品より高いことを確認している」そうです。これらに加え、「大画面でも持ち運びやすいよう、より薄く、軽くしてほしいという意見もたくさんいただいている」とのこと。

このコメントを解釈すると、次のGalaxy Z Fold5は入力面やディスプレイに何らかの進化があるような気がします。また、継続して進めている薄型・軽量化に言及したことから、ユーザーの期待を上回る成果を出せる可能性が高まっているのかもしれません。海外発の情報では、水滴型ヒンジの採用で薄型化するというウワサも出ていますが、その実現に期待が持てそうな発言でした。

▲Galaxy Z Fold4も薄型・軽量化を果たしているが、さらなる進化を求める声も多いという

現状では、先行者利益を生かし、フォルダブルスマホで独壇場のサムスンですが、OPPOやXiaomiに加え、ファーウェイから独立したHonorやアフリカ市場でシェアの高いTechnoに至るまで、幅広いメーカーが端末を投入するようになりました。サムスンにとっては、競合が乱立する時代になったと言えるでしょう。こうした状況に対し、盧氏はエコシステムやパートナーの厚さを強みとして挙げ、次のように語っています。

「消費者がフォルダブルを通じて新しいエクスペリエンスを体験するには、ハードウェアやホームファクターに限らず、ソフトウェアやサードパーティ(のアプリ)がどのぐらい完ぺきに(端末と)マッチしているかが重要になります。これは、サムスンが、初代Galaxy Sからこれまでの製品で追求してきた方向と同じです。オープンネスのスローガンのもと、さまざまなパートナーと協力しているからです。このような関係を通じて、もっとも早く、完璧なサービスを提供できるのが強みです」


実際、海外で開催されるサムスンの発表会には、グーグルでAndroidエコシステムを統括するヒロシ・ロックハイマー氏や、クアルコムのクリスティアーノ・アモンCEOが登壇。19年のイベントでは、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOもゲストとして登場し、緊密な連携をアピールしました。

▲2月に米サンフランシスコで開催されたUnpacked。盧氏の右がグーグルのロックハイマー氏、左がクアルコムのアモン氏だ。パートナーとの協業は、サムスンが得意とするところ

その成果もあってか、グーグルアプリの一部は先行してフォルダブル対応しているほか、マイクロソフトの「Teams」や「Outlook」「Office」といったアプリもフォルダブル対応をいち早く済ませています。ユーザビリティをトータルで見たとき、依然としてサムスンが大きく他社をリードしているというのが盧氏の考えです。

このような取り組みを通じて、サムスンのシェアは日本市場でも徐々に上がってきています。ただ、トップシェアを誇る市場の多い諸外国と比べると、まだまだ十分な成果ではないのも事実。その中で、サムスンが日本市場に注力しているのは、市場規模の大きさと品質に対する要求の高さだといいます。

「日本市場は世界のモバイル産業で、5位、6位にあたる大きな市場です。かつ性能や品質を重視する市場と認識しています。このような要求の高い日本市場で成功してこそ、グローバルでも成功できると考えています。また、日本は依然としてプレミアムセグメントのシェアが高い市場だと考えています」

一方で、昨年、「Galaxy M23 5G」を発売し、オープンマーケット市場にも打って出たサムスンですが、盧氏はこうした取り組みも継続していくことを表明しています。

「SIMフリーモデル(オープンマーケットモデル)に関しても、日本の消費者の方々に様々な選択肢を提供する観点で、継続的に供給することを検討しています。日本のキャリアは非常にいいプログラム(アップグレードプログラムなどのことを指す)を作っているので、SIMフリーが他のグローバルの国や地域のように成功できるのかが悩ましい部分はあります。ただ、日本のキャリアとの関係を強化するのと同時に、新しいニーズに対応した選択を強化する。この2つは引き続き進めていきたいと考えています」

▲Amazon.co.jp専売モデルとして昨年登場したGalaxy M23 5G。こうしたオープンマーケットへの取り組みは、今後も継続していくという

消費者の声に耳を傾けた開発体制を強調していただけに、オープンマーケットモデルの拡大にも期待したいところ。特にハイエンドモデルに関しては、現状、大手キャリアから購入するしか選択肢がなく、特にソフトバンクやMVNOのユーザーが購入しづらいのが難点です。

キャリアで端末を単体購入すれば済む話ではありますが、一般のユーザーにはなかなかハードルが高いのも事実で、その割合は非常に低く推移しています。ソニーやシャープはハイエンドモデルのオープンマーケット版販売に踏み切っているだけに、サムスンにも思い切った判断をしてほしいと感じています。


《石野純也》

石野純也

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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