PCやワープロで広く採用、汎用性が高かった3.5インチFDD「OA-D33V」(500KB、1984年頃~):ロストメモリーズ File016

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宮里圭介

宮里圭介

ディスク収集家

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需要のわからない記事を作る自由物書き。分解とかアホな工作とかもやるよー。USBを「ゆしば」と呼ぼう協会実質代表。

特集

PCやワープロで広く採用、汎用性が高かった3.5インチFDD「OA-D33V」(500KB、1984年頃~):ロストメモリーズ File016
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[名称] OA-D33V(MFD-33V)
(参考製品名 「HBD-502Z」「HWD-80」)
[種類] 磁気ディスク
[記録方法] 磁気記録
[サイズ] 約102×140×51mm
[接続] 34ピン
[電源] +12V/+5V
[登場年] 1984年頃~

ひとつ、またひとつと消えていき、記憶からも薄れつつあるリムーバブルメディア。この連載では、ゆるっと集めているメディアやドライブをふわっと紹介します。

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「OA-D33V」(MFD-33V)は、ソニーが開発した3.5インチフロッピーディスクドライブ(FDD)。既存PCとの接続を容易にするため、インターフェース仕様などを5.25インチFDDに合わせて変更したのが特徴で、このドライブの登場により、3.5インチFDが多くの機器で利用できるようになりました。

ソニーが開発した3.5インチFDDのうち、初期に当たる倍密度・倍トラック(1DD/2DD)のドライブを簡単に分類すると、4つのモデルに分けられます。

ひとつは1980年に発表されたもので、海外向けワープロの「シリーズ35」やマイクロコンピューターの「SMC-70」で採用された、「OA-D30V」。片面倍密度、トラック数70、ディスク回転数600rpm、データ転送レート500kbpsというもので、容量は437.5KB(アンフォーマット)です。このドライブはOEMとしてHPに「OA-D31V」として出荷され、「HP 9121」などに搭載されました。ソニー初のOEM製品となったという点でも、珍しい製品です。

▲1982年発売のSMC-70でも採用されました

続いて1983年に発表された「OA-D32V」では、トラック数を80へと拡張して容量が500KB(アンフォーマット)に増えました。これは、当時の5.25インチFDDがトラック数40、もしくは80を採用していたため、それに合わせて変更されたものです。ただし、ディスク回転数は600rpmのままなので、データ転送レートも500kbpsと高速なままです。また、前モデルでは手動で開閉していた3.5インチFDのシャッターを、自動で閉まるオートシャッターへと変更。これに伴い、ドライブ側にもシャッターを開く機構が追加されました。ちなみに「OA-D32W」は、ヘッドを上下に備えた両面モデルです。

なお、このドライブと同時期に登場したメディアが、以前紹介した「OM-D3320」。基本的には自動開閉のオートシャッターなのですが、これに対応していないOA-D30V/OA-D31Vでも使えるよう、シャッターを端まで開くとロック。つまむように押すと閉じるという、マニュアルシャッターとしても使えるメディアです。


「OA-D33V」はOA-D32Vと同時に発表されたモデル。基本的には同じですが、ディスク回転数を300rpm、データ転送レートを250kbpsへと変更しているのが大きな変化です。さらに、インターフェースを5.25インチFDDと同じ34ピンのものへと変更し、5.25インチFDDからの単純な繋ぎ替えで3.5インチFDDが使えるようになりました。サイズや容量はともかく、その後の3.5インチFDDと同じ使い勝手が実現されたドライブといえるでしょう。

ソニーの日本語ワープロ「HW-80」の外付けFDDとなる「HWD-80」、MSX「HB-701FD」の内蔵FDD、MSX用外付けFDD「HBD-50」などで採用されました。ちなみにHBD-50は、東芝の「HX-F100」など他社からも同等品が発売されています。

▲1986年発売の日本語ワープロHW-80用のHWD-80

最後の1つは、特殊仕様となるApple Macintosh用。1984年発売の初代モデルに採用された「OA-D34V」で、インターフェースが20ピン、Zone CAV対応のためのモーター回転数制御、オートイジェクト機構などの追加が主な違いです。Macintoshでの採用では、みんな大好きスティーブ・ジョブズとの逸話がイロイロとありますので、気になる方は「フロッピーディスクとドライブの技術とビジネス発展の系統化調査」(P55~)をどうぞ。

ということで、これらの初期ドライブのうち、入手できたOA-D33Vについて見ていきましょう。

オプションの外付けFDDで実物チェック

入手したのは、「HBD-502Z」と「HWD-80」。HBD-502Zは、MSX用のFDDとなる「HBD-50」に接続するセカンドドライブで、コントローラーなどが省かれたモデルです。分解してみると、どちらも使用されていたドライブは「MFD-33V」で、違いといえばケース内でのインターフェース変換くらいでした。

▲どちらも「MFD-33V」という型番シールが貼られていました

型番がOA-D33Vではなく、MFD-33Vとあるのが気になります。ただしHB-50の仕様を見ると、片面倍密度、トラック数80、ディスク回転数300rpm、データ転送レート250kbpsとなっており、OA-D33Vと同等だとわかります。一応、検索して見つかる写真と比べてみましたが、フロントパネル以外の違いは見つかりませんでした。ドライブとして単体販売するのがOA-D33Vで、ソニー製品で使用する場合はMFD-33Vとしていた、といった違いがあるのでしょうか。

このドライブをもう少し詳しく見るため、ケースから取り出してみましょう。

▲約51mmの高さというだけあって、かなり分厚いです

約140mmの奥行きに対し、高さが約51mmとかなりあるので、パッと見コンパクトで可愛く感じます。ただし、重量は約650gと可愛くありません。

フロントパネルとイジェクトスイッチはケース側にあるため、ドライブのみ取り出すと急に機械らしさが目立ちます。茶色いパットがある部分がイジェクトスイッチがある位置。その上の黒い四角い部分が、FDの挿入口です。

インターフェースは背面にあり、右に34ピンコネクター、中央に4ピンの電源コネクター、左にスライドスイッチが並びます。

▲インターフェースは34ピンで、標準的なもの

スライドスイッチの役割がいまいちわかりませんが、このHWD-80に内蔵されていたドライブでは1、セカンドドライブ用のHBD-502Zでは2に設定されていたことを踏まえると、ドライブ番号設定ではないでしょうか。

せっかくなので、FDがセットされたときのドライブの動きを見てみましょう。

FDを押し込むと上面にあるレバーがシャッターを引っ掛け、アクセスウィンドウが見えるように開かれます。また、同時にFDの先端が奥のレバーを押し、側面のロックが外れ、FDが沈み込むように。すると、ディスクがヘッドに接触。また、ハブとモーターが接続されます。

▲ジャマなカバーを外して観察。FDのシャッターがレバーで開かれます
▲FDの先端が奥のパーツを押し込み、側面のロックを解除
▲FDが沈み、ディスクとヘッドの接触、ハブとモーターの接続が行われます

ドライブの内側を見るため、機械部を外してみましょう。アルミのベースに基板や各パーツを取り付けていくという構造になっているので、分解は結構簡単です。具体的には、ネジを4本外すだけで、機械部分が分離できました。

▲中央がディスク回転用のモーター、その奥がヘッドです

まず目につくのが、中央にあるモーター。これはディスク回転用のモーターで、中心部の半球とその隣にある円柱ピン、そしてその周囲をぐるっと囲んでいる磁石(グレーの部分)で構成されています。なお、この円柱ピンは下がバネになっており、上から押すと簡単に沈むような構造です。

FDのハブはまずこの磁石に吸い寄せられ、中心部の半球により、大体真ん中あたりでキャッチされます。ただし、しっかりと固定できないため、このままモーターを回しても空回りしかしません。

そこで登場するのが円柱ピン部分。最初はFDのハブに押されて沈んでしまうため役立ちませんが、モーターが空回りすると、ハブにあけられた穴で頭を出します。すると、半球と円柱ピンの2点でハブを掴めるため、ディスクを回せるという仕組みです。

▲FDのハブ。中央の四角に半球、その横の長方形に円柱ピンがはまることで、ディスクを回転できます

5.25インチFDDや8インチFDDでは上下から挟み込む方式でしたから、片側から簡単に接続できるという点で、大きな進化です。

奥側のモーターは、ヘッドを移動するためのもの。スクリュー式となっており、左右回転を切り替えることで、ヘッドが前後に動きます。MFD-33Vは片面なので、ヘッドは下側にしかありません。そのままでは浮いてしまうため、ディスクとヘッドを接触させるための押さえがあります。

▲片面なので、ヘッドは下部のみ。ディスクを上から押さえて接触させています

ヘッドの手前、アルミベースの左右端にある先の尖った柱は、FDの位置合わせ用のガイド。この先端をFD裏面の凹みに合わせることで、正確な位置合わせが可能です。また、更に手前の左右端には、メディアタイプとライトプロテクトを検知するための接触センサーが搭載されています。

シャッターを取り払ったFDで、ドライブ内での固定位置を再現してみました。

▲ドライブ内では、FDはこんな感じに固定されます

ヘッド部でディスクを上から押さえている様子や、手前の接触センサーがチラッと見えているのが分かるでしょうか。

薄型化や高密度化で、その後の標準メディアに

3.5インチFDはソニー独自のメディアとして誕生しましたが、HPに抜擢されたことで注目度が上がり、続いてAppleにも採用されたことで、個人からビジネスまで、幅広い用途で使われるようになりました。

さらに、これとほぼ同時期に米国でMIC(Micro Floppy Disk Industry Committee)が設立され、改良案を加えた仕様で規格を提案。最終的にANSI(米国国家規格協会)、ECMA(欧州電子計算機工業会)、ISO(国際標準化機構)といった国際規格で3.5インチFDが標準化され、多くの機器で使いやすくなりました。

当初はかなり分厚かったドライブも薄型化が進み、初期の51mmから30mm、そして25.4mmと変化。さらに1989年には、ノートPCにも搭載しやすくなった19mm厚のドライブまで誕生しました。

なお、5.25インチFDと比べメディアの価格が高かったこともあり、個人への普及は遅れ気味だった印象があります。

例えばX68000であれば、1987年登場の初代から1991年登場のXVIまで、5.25インチFDDが標準。3.5インチFDD版となるX68000 Compactの登場は、1992年まで遅れています。

また、NECのPC-9801シリーズだと、1985年登場のPC-9801U2で採用されたものの、採用比率は少なめ。これは、小型モデルで3.5インチFDDを搭載するといった棲み分けがあったからだと考えられます。同型で3.5/5.25インチFDD搭載の両モデルが登場したのは、1990年登場のPC-9801DXからです。

とはいえ、MSX用では3.5インチFDDが主力ですし、当時、広く普及したワープロ機でも3.5インチFDD搭載が多数。従来5.25インチFDDを採用していなかった製品、小型化が重要だった製品では、比較的早めに採用されました。

参考:


オウルテック 3.5インチFDD+7in1 ブラック FA404M(B)
¥2,480
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

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