火星の洞窟を片道任務ローバーと「パンくず落とし」作戦で攻略、アリゾナ大が開発中

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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John Fowler/Wikimedia Commons, Mark Tarbell and Wolfgang Fink/University of Arizona
  • John Fowler/Wikimedia Commons, Mark Tarbell and Wolfgang Fink/University of Arizona
  • NASA/JPL/University of Arizona
  • Wolfgang Fink/University of Arizona

火星のような惑星では、洞窟は宇宙線を遮ってくれる安全な場所であり、将来火星への有人探査が実現したときには、適当な洞窟内に飛行士の居住施設を作るアイデアも検討されています。

ただ、未踏の洞窟探検はそれだけでも命がけの冒険であり、飛行士が現地に到着してから行うのはリスクが高そうです。しかも枝分かれし入り組んだ洞窟の探査では、無線通信が岩石で遮られてしまう問題も考えられます。

アリゾナ大学の研究チームは、そんな火星の洞窟内を自律型ローバーで探査する研究を進めています。

入り組んだ洞窟内の探査で問題になるのは、無線通信の電波が岩盤で遮られてしまうことです。そこで研究チームは、探査ローバーから小さな自律型の子ローバーを、タイムボカンシリーズのゾロメカの如く展開する探査システムを開発しています。

このシステムでは親となるローバーから小さな子ローバーを放ち、枝分かれする洞窟内を進みながら、ヘンゼルとグレーテルがパンくずを落として帰り道を確保したように、中継用通信ノードを配置していくことで洞窟の地図を作って行きます。

このシステムがうまく機能すれば、飛行士が火星に到着する前に洞窟やトンネルにローバーを展開し、そのうちどれが飛行士の居住地として適しているかを評価できます。そしてもちろん、純粋な科学探査のためにも利用可能です。

研究チームは、すでにローバーと必要な通信の仕組みを完成しているといい、現在は子ローバーがパンくずを落としていく仕組みを検討しているとのこと。なお、子ローバーは自律的に動作するものの、ひたすら洞窟の奥深くを目指して進むように設計され、戻ってくることは想定していません。研究者は、火星のような場所では「リソースを浪費して何度も洞窟に入ったり戻ったりするよりも、可能な限り奥まで調べ、電力を使い果たしたり、後戻りできない場所に到達した時点で任務を終えさせる方が理にかなっている」と説明し「子ローバーは消耗品として設計されている」と述べました。

ドイツ宇宙生物学会の会長Dirk Schulze-Makuch氏は「この論文が提案する通信ネットワークのアプローチは、惑星探査や宇宙生物学の発見の新時代を告げる可能性を秘めている」と研究を評価しており「火星の溶岩洞窟や氷の衛星の地下海など、地球外生命体が存在するかもしれない場所の探索がついに可能になった」と述べています。

ちなみに、研究者らは今回の研究のしくみを”Breadcrumb-Style”と称していますが、ヘンゼルとグレーテルが帰りの道しるべとして落とし、無事に家に戻れたのは、白い(または月明かりで光る)石を落としたときでした。パンをちぎって落とした時は、そのパンくずが小鳥に食べられてしまい、道がわからなくなります(ただしその後、紆余曲折を経て最終的に家には戻れます)。


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《Munenori Taniguchi》
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