マイクロソフトがゲームパブリッシャー大手のアクティビジョン・ブリザードを買収する計画は、昨年初めに発表されてから1年以上が経った今なお実現していません。
なぜなら世界各国の規制当局から承認を得る必要があるものの、主要な諸国や地域から独占禁止法違反の疑いがある、として調査が続いているためです。しかしその1つであるEU当局からは、まもなく承認される可能性が高いとReutersが報じています。
事態が動き出した理由としては「ライバル企業へのライセンス契約の提供」とあり、任天堂ハードに超人気ゲーム「Call of Duty(CoD)」シリーズ新作やDLCを今後10年にわたりフル仕様で提供することや、NVIDIAのクラウドゲーミング「GeForce Now」にXboxゲームやCoDを含むアクティビジョン全タイトルを提供する契約を締結したことが利いたようです。
またEUは承認条件として、マイクロソフトがアクティビジョンの資産を売却することを要求する可能性は低いとも報じられています。
これは英CMA(競争市場局)が先月、暫定的な調査結果として買収が「英国のゲーマーにとって価格の上昇や選択肢の減少、またはイノベーションの低下につながる可能性がある」として、アクティビジョンのCoD関連事業を売却する案などを提示したことと対照的ではあります。
EU規制当局は4月25日までに買収につき決定を下す予定ですが、それに任天堂やNVIDIAとのライセンス契約がギリギリ間に合ったのかもしれません。
ただし、マイクロソフトが主要市場で買収を有効にするには、まだ英CMAと米FTCという二大規制当局の承認を得る必要があります。もしもEUに認められたとしても、最初の関門をクリアしたに過ぎず、「奴は四天王の中でも最弱」段階に留まっているといえます。
また、EUでの情勢を大きく動かした「ライバル企業へのライセンス契約の提供」についても、大きな課題が残っています。マイクロソフトはソニーに対してもCoD新作ゲームの10年契約を提案していますが、ソニーは依然として契約書にサインしていません。
英CMAは上記のようにCoD事業の売却という飲みがたい条件を付け、米FTCは昨年末に買収そのものに対して差し止め訴訟を起こしています。マイクロソフトが「俺たちの買収はこれからだ(未完)」となるのかどうか、今後の展開を見守りたいところです。
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