カイパーベルトの準惑星クワオアーに予想外の環を発見。通常は環ができないロッシュ限界の外

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Munenori Taniguchi

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ESA, CC BY-SA 3.0 IGO

太陽系の多くの天体は、その周囲に環を持っています。象徴的なのは土星のような巨大ガス惑星ですが、それだけでなく準惑星や小惑星にも目立たないものの環を持っているものがいくつもあります。

2月8日にNatureに掲載された新しい論文も、太陽系外縁天体のひとつ、「クワオアー」に見つかった環についての報告です。ところが、この環は本来あるはずがない大きさの径を持つ、変わったものでした。

2002年に発見された、冥王星の約半分の大きさ(直径約1100km)のクワオアーは、太陽からおよそ60億km離れた位置で公転しており、2007年にはハッブル宇宙望遠鏡による観測で衛星が見つかり「ウェイウォット」と名付けられました。現在では、カイパーベルト天体の多くに衛星が見つかっているため、これはさほど珍しいことではありません。一方で、クワオアーには環がある可能性を示す観測結果もありました。

新たな研究において、国際的な天文学者のチームは、クワオアーが恒星の前を通過する様子を観測し、恒星が減光する度合いを確認しました。すると、この準惑星による減光の前後に、等しい感覚でわずかな減光現象がみられたとのこと。この現象を説明する、もっとも可能性の高い説明が、クワオアーが持つ環だということです。この環はクワオアーの衛星ウェイウォットの軌道と同じ平面の上に構成され、リング内部にある直径1km以内の天体による重力で多少形状に不規則さを伴っていることもわかりました。

ただ、研究者はそれよりも、この環がロッシュ限界とされる位置より遠くに形成されていることに気づきました。惑星の環は通常、宇宙に漂う塵や氷など小さな粒子が、主星から一定範囲内で平らな円盤状に分布して構成されます。この領域はロッシュ限界と呼ばれ、この限界よりも内側に入った衛星などの天体は、主星の潮汐力によって破壊されてしまいます(シューメーカー・レヴィ第9彗星は発見以前に木星のロッシュ限界内を通過し、その際に少なくとも21個の破片に分裂していたことがわかっています)。一方、ロッシュ限界の外側では、塵や天体の残骸は再び凝集して、衛星などを形成するというのが一般的な考え方です。

クワオアーのロッシュ限界は約1780kmと推定されていますが、環の半径4100kmにあります。したがって、この発見は環の形成に関する理論を再考させることにつながります。研究者らは、環の位置い関して2つの説を検討しています。

ひとつめは、リングを構成している物質が一般に考えられるよりも弾力性を持っているのではないかということ。衛星が形成される際、塵などの粒子は凝集して互いに衝突すると、その際のエネルギーを熱として放出すると考えられますが、今回のリングを構成する物質は、互いにぶつかり合ったときに弾き返してしまうのではないかとのことです。もうひとつは、主星であるクワオアーと衛星ウェイウォットの軌道運動によって、重力場に乱れが発生している可能性が考えられています。いずれにせよ、考えられる可能性を確認するのにも新たな観測と研究が必要になりそうです。


《Munenori Taniguchi》
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