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前世代とは別物に進化、ソニーWH-1000XM5レビュー。表現力の底上げで「無線でもまだイケる」を証明したワイヤレスヘッドフォン(本田雅一)

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本田雅一

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ネット社会、スマホなどテック製品のトレンドを分析、コラムを執筆するネット/デジタルトレンド分析家。ネットやテックデバイスの普及を背景にした、現代のさまざまな社会問題やトレンドについて、テクノロジ、ビジネス、コンシューマなど多様な視点から森羅万象さまざまなジャンルを分析。

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前世代とは別物に進化、ソニーWH-1000XM5レビュー。表現力の底上げで「無線でもまだイケる」を証明したワイヤレスヘッドフォン(本田雅一)
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5月末に発売されたソニーのWH-1000XM5。第5世代になった同社ノイズキャンセリング機能付きワイヤレスヘッドフォンのフラッグシップモデルだが、適切な環境で試聴できたのは6月に入ってからのことだった。

試聴用データをUSBメモリで持ってきてくださいねと言われ、会場に用意されたウォークマンからの音を聴いて、ものの数秒で「これはモデル名を変えてもいいんじゃないの?」と思うほど、音の品位が上がっていた。

ここで”品位”と書いているのは、音の質感をチューニングして音楽を心地よく聴けるよう調整したのではなく、明確に実力が底上げされているからだ。音の質という面で、従来機とは異なっている。

2021年、ソニーは完全ワイヤレスステレオ(TWS)のWF-1000XM4をリリース。その際にも大きくS/Nが改善され、よりストレートに素材の良さを引き出す音になっていた。今回はそのとき以上にインパクトの大きな改良だ。

WH-1000XM5に関しては、リニアなトルクを発生させるロングストロークかつ小径(40ミリから30ミリに変更)のドライバユニットなどの効果をソニーは前面に押し出し、その上でスッキリしたデザインへの変更や、比較的高い周波数帯での効きが高められたアクティブノイズキャンセリングの能力などが語られることが多い。

実際、ドライバユニットの変更は音のキャラクタに大きな影響を与えてはいるが、実は本質ではない。

「LDACの存在に意義を感じる」素性の良さ

誤解を恐れずに書くと、これまでいくつかLDAC対応のワイヤレスイヤホン、ヘッドフォンが登場していたものの、ではLDAC搭載をどこまで重視すればいいのか? という部分に関しては疑問を感じざるを得なかった。

ご存知のようにLDACとはソニーが技術ライセンスしているBluetooth向けのハイレゾオーディオコーデック。もちろん、AACと比べれば理論上の情報量は多くなる。しかし、ハイレゾならではの溢れるような情報量が感じられるか? と聞かれると、違いは確かにあるものの大きな差を感じられないことの方が多かった。

さらにLDAC対応を活かすには、LDACに対応したスマートフォン、あるいはデジタルオーディオプレーヤーが必要になる。またスマートフォンではiPhoneが非対応のため、必然的にAndroidに限られる。さらにLDAC対応製品はその一部という狭き門だ。

ワイヤレス製品本来の軽快さを活かし、場所にこだわらず様々なシーンで楽しむことを考えるなら、LDAC対応よりもトータルでの音作りに注目した方が建設的というのがこれまでのワイヤレスイヤホン、ヘッドフォンだったと思う。

その点でWH-1000XM5は、きちんとLDACの存在意義を感じさせる素性の良さがある。実際にLDACで接続する環境を持っているかどうかは別として、それだけ基本的なS/Nが良いという意味で捉えてもらっていい。こうした素性の良さは音作りも変える。

基本的なS/Nがよくない機器では、なんとか音の悪さをカバーしようと七難隠すチューニングが施される。しかし聴きやすくはできても音の質は良くならず、特に情報量(演奏のニュアンスや空間を埋める音場全体の密度感など)が減ってしまう。

しかし素性が良ければ”隠したい”部分も少なくなり、音楽ソースが持つ情報量をたっぷり引き出した上でバランスを取る、より積極的に”聴かせる”チューニングにできる。少なくともそうしたレベルにまで達していなければ、ハイレゾ対応を謳っても無意味と言っていいが、WH-1000XM5は”LDAC、イイかもね?”ぐらいの領域には踏み込めていると思う。

AVアンプ設計のノウハウを活かしてワイヤレスの音を改善

一向に具体的な音質レビューに突入しないが、もう少しお付き合いいただきたい。

なぜこの世代で”素性の良さ”を引き出せたのか。複数の要因があるとは思うが、その中でも重要だったのが基板レイアウトなどの基本的な設計に立ち返って、音を聴きながらのチューンを徹底したことだった。

この製品の音質設計を担当したのはAVアンプの開発に携わっていたホームエンターテインメント&サウンドプロダクツ事業本部モバイルプトダクト事業部の小松英治氏。実は小松氏とはAVアンプ設計時代に何度も取材させていただいた関係がある。

ソニーのAVアンプはハイエンドのデジタルアンプ(S-Master Pro搭載機)から、アナログ増幅のモデルに主力製品が切り替わり、価格帯もだんだんと下がっていった経緯があった。

初期のデジタルアンプはノイズ処理が極めて難しかったが、アナログに回帰した頃はWi-Fi搭載が当たり前で、なおかつデジタル信号処理の量も増え、オーディオアンプの中にパソコンを丸抱えしているような製品になっていたのだ。

コストをかけられる上位モデルなら、電源を複数系統用意したり、処理基板を分割したり、あるいは内部構造をセパレート化したり、といった手段が使えなくはないが、価格が下がるほど使えなくなる。低価格モデルほどシャシーを小さくすることも求められるため、そうした意味でもノイズ処理は難しい。

ではどのようにして音の質を高めていくのか? という取り組みに力を入れていた頃に、小松氏が関わっていた経験を活かした。

もちろん、ヘッドフォンともなれば基板はさらに小さく、無線系、デジタル処理系、アナログ系などあらゆる回路を1枚の小さな基板に収めねばならない。近傍にはUSBコネクタやスイッチ類が当然配置される。具体的には統合プロセッサ、デジタル信号処理プロセッサ、アナログ出力部などのパート間での複写やノイズの回り込みを最小限に抑えることに成功した。

ところが確かに音は良くなったが、別の問題が発生した。

”空間の表現力”とナチュラルな質感

音質は良くなったものの、ワイヤレスヘッドフォンはオーディオ機器であると同時に、無線通信機であり、小さなコンピュータでもある。EMI(電磁気妨害)特性が悪化し、Bluetoothのアンテナ特性が悪化し、不要輻射も増加した。

そこで製品に落とし込んでいく際には多層基板を用いた信号経路、電源経路、グランドパターンなどを電磁シミュレーションしながら最適化することで、オーディオ的な妥協をせずに品質基準を満たすことができたという。

結果としての音の違いは明白で、誰でも聴き始めてすぐにその良さを感じられる。筆者が最初に気づいたのは、半円球に広がる音場空間とその消えギワのグラデーションが滑らかなこと。そして音像のまわりにフワッと自然にまとわりつくニュアンスだ。

こうした空間やニュアンスの表現はワイヤレスのヘッドフォン、イヤホンではなかなか経験できない。

この表現力の上に、ストロークを長く取りながらもリニアリティと応答性を高めた新しい小径ドライバユニットの組み合わせが、情報量と高い鮮度の音を実現しているのだろう。

試聴曲は「01 Audio Test Reference for YouTube」という名称でApple Musicにて共有しているので参考にしていただきたい。


冒頭3曲はヴォーカルの質感などを意識した試聴曲だ。

いずれもヴォーカルの質感たっぷりでドライ目の録音。DidoのDon't Believe In Loveは途中、サビになってから多重録音のコーラスが重ね合わされ広がりのある音へと展開するが、声の質感に着目すると巧みな表現の描き分けを感じられるだろう。

ベン・ハーパーのJah Workは冒頭のパーカッションのアタックの鋭さ、ギターの弦を弾くシャープな質感もさることながら、その鋭く細い音像のまわりに細かなニュアンスを感じるはず。

大石晴子の立ち合いは、ストレートに飛び込んでくるヴォーカルが冷たく硬さを感じる部屋の空間に染み渡るように広がっていく様子が感じられる。

続く3曲は低域再生がテーマ。

ブライアン・ブロンバーグのティーン・タウンはウッドベースを用いた録音。太く長い弦が揺れ、時にフレットに当たるノイズが生々しく表現される。

ザムヴォーロのIn Love and Warは対照的に現代的シンセベースが特徴で、硬いゴムのような質感のベースながら余韻は複雑で長く続く。

絶対的な低域の量感はセルジオ・メンデスのThe Look of Love。マスタリングスタジオのラージモニターでもギリギリの超低域をが「ちゅどーん」と左から右にパンする表現は、明らかに”やりすぎ”で、滅多に本来の表現を楽しめる機器はない。

さてそんな3曲だが、The Look of Loveの最低域では望む量感は得られないものの、全体にアタックのスピードが早くオーバーシュートすることなく正確に表現してくれるところが好ましい。

低域はタイトというほどではなく、次に挙げる3曲ではしっかり音場の広さも表現できるのだが、思わずタイトと言いたくなるほどに小気味よいスピードで、ユルさがないところがいい。

次の3曲は空間表現の評価。

クラフトワークのTour De France(Etape 2)はシンセサイザーを駆使して、音場空間の表現を工夫したアレンジに注目したい。

Mike PosnerのI Took a Pill in Ibizaはシンプルなヴォーカルから入りつつ感情を盛り上げていき、サビに向かって段々と音場を広げていくアレンジ。奥行きだけでなく高さ方向の音場も広い。

そして音場表現と言えば必ず使っているのが1960年代に録音されたレオポルド・ストコフスキー指揮のハンガリー狂詩曲第2番(Hungarian Rhapsody No. 2)。100人を超える大オーケストラだが、冒頭のフォルテッシモから大編成のオーケストラが大きな空間の中に綺麗に分離して聴こえ、ピッコロのソロでは演奏者の顔が見えるような好録音。特にライバルとの比較において、空間表現が得意なWH-1000XM5の良さが引き立つ楽曲だと言える。

もう少し細かなコメントはYouTube動画にも掲載しているので、そちらも参考にしていただきたい。

もちろん機能、性能、スペックも

ノイズキャンセリング能力の高さ、機能的な使いやすさ、無段階で合わせやすいヘッドバンドのサイズ調整、USB-PD対応による急速充電など、今回の第5世代モデルで進化した部分は多い。また細かいことだが、薄く嵩張らない専用ケースも気に入った。

しかし何よりも本機の価値はその音質の大きな飛躍にある。

色々と長文を書いたが、まずは近くの店舗などで体験してみるといいだろう。比較対象は特に必要ない。ワイヤレスヘッドフォンに慣れている人ならば、その違いはすぐにわかるはずだ。


《本田雅一》
本田雅一

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