これからの20年と「スマホの次」に向けて、これまでの20年を振り返る(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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これからの20年と「スマホの次」に向けて、これまでの20年を振り返る(石野純也)
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まずはテクノエッジの創刊、おめでとうございます。一瞬、「Engadget 日本版が復活したのか」と思ってしまうほどの豪華な執筆陣ですが、幸いなことに、筆者にもお声がけがあり、筆を取っている(キーボードを打っている)次第です。締め切りを勘違いしていて、1週間ほど原稿は遅れてしまいましたが……。(笑)

創刊記念原稿として、Ittousai氏から無茶振り……ではなくて、依頼されたテーマは「スマートフォンの次」。ざっくり言うと、次の20年で、スマートフォンやポスト・スマートフォンがどうなっているのかという大きな話です。Ittousai氏からは17年でもOKと言われていたので、まぁ、20年というのは大体の目安ということで、結構先の話をすればOKと捉えました。
ちなみに、対案として出した「バルミューダフォンをレビューしているうちにほしくなったトースター、買ってみたら初期不良を引き当ててしまった件」は、一発目から可燃性が高すぎるということで却下されてしまいました。トースターなだけに。

17年後なり20年後なりはなかなか壮大なテーマというか、正直、そこに対して確度の高い予想ができたら、今、ライターなりジャーナリストなりはやってないと思うんですよね。例えば20年前に「スマートフォンが来る」と確信があったのであれば、先んじてそれを手掛けていた方がよかったというか。職業柄、株は買わないようにしていますが、ここまではっきり分かっていたら、すっぱり職を辞してアップルなりグーグルなりの株を買っているだけで、ひと財産築けていたような気がします。

ということで、歴史に学んでみることにしました。今から逆算して20年前というと2002年、ちょうどiモードが大成功し、iアプリが徐々に普及し始めていた年で、まだおサイフケータイは始まっていませんでした。端末で言えば、ドコモだと504iシリーズが当時の最新モデル。ちょうど、パケット通信の速度が28.8Kbpsに高速化したり、赤外線機能が搭載されたりといったタイミングです。最大速度がGbpsを超えた今のスマートフォンから見ると、超低速ですが、当時はこれでも十分でした。

▲2002年に発売された「P504i」。504iシリーズのころは、パナソニックとNECがトップ争いをしていた

こう見ると、通信、特にモバイルネットワークの進化の仕方があまりにも速くて驚かされます。たった20年でkbpsからGbpsですからね。単位が2つほど上がっています。通信の世代も20年前はPDCの2Gでしたが、3G、4Gと進み、今では5Gが当たり前になっています。2万円前後のエントリーモデルですらGbps超えの通信ができるというのは、当時の人に言っても信じてもらえないのではないでしょうか。有線のインターネットですら、数十Mbpsが当たり前の時代でしたから。

▲わずか20年で、通信速度はGbpsが当たり前に。写真は3万円強の「Xperia Ace III」だが、このクラスの端末も5G対応が進みつつある

iモード時代は特にそうですが、携帯電話としての形から外れないことも重要でした。片手で持って、キーをポチポチと押せる、あの形状です。普通の電話にインターネット機能がついていることが、普及にあたって重要だったというわけです。スマートフォンの原点のような端末はありましたが、どれも鳴かず飛ばず。
スマートフォンの普及が始まったのはいつごろかという時期には諸説あり、宗教論争のようになりそうなので詳細は割愛しますが、一般的にはiPhoneの登場、少しギーク寄りな視点で見ても「W-ZERO 3」の登場を待つ必要がありました。

W-ZERO 3が発売されたのは、2005年で今から17年前のこと。Ittousai氏が「17年前でもいいや」と言ったのは、20年と言って頭を悩ませていた筆者にヒントを与えてくれたのかもしれません。(←多分違う)

(※編注:17年でも、とお願いしたのは前の媒体が17年続いたからです。)

今では完全に消滅してしまったWindows Mobileを搭載したW-ZERO 3は、当時の携帯電話の中ではイロモノと言っても過言ではありませんでしたが、その可能性に共感したユーザーが殺到。家電量販店には、行列ができるほどでした。

▲iPhone以前に日本で初めてヒットしたスマートフォンと言っても過言ではないウィルコムのW-ZERO 3

フルブラウジングや多機能なアプリケーション、さらにはWindowsさながらの深いカスタマイズができる自由度の高さなど、当時のWindows Mobileは、キャリア仕様に固められた携帯電話のアンチテーゼとも言える存在でした。
お世辞にも携帯電話として使い勝手がよかったとは言えませんし、今のスマートフォンに比べるとありとあらゆる点が物足りない仕様でしたが、あのワクワク感を覚えているスマートフォン老人会……もとい、昔からのユーザーは少なくないでしょう。

ここから逆算して17年後なり20年後なりを考えると、今現在のW-ZERO 3的な何かが、将来のスマートフォンやスマートフォンに取って代わる存在になる、とも言えそうです。現時点ではマスに普及していないものの、将来性を感じさせる存在で、かつ国内で数十万台規模が販売され、発売時に行列ができてしまうようなガジェットです。

個人的には、スマートフォンなり携帯電話なりのデバイスを規定してしまう大きな要素の1つに、ディスプレイがあると思っています。ディスプレイのサイズが変われば形態も変わりますし、その上で再生されるコンテンツのスタイルも変わってきます。携帯電話が「ストレート」 → 「折りたたみ」になったのも画面を大型化するため。その拡大版が「板状のスマートフォン」 → 「フォルダブルスマートフォン」ではないでしょうか。

▲携帯電話がiモードの登場でストレート型を駆逐し、折りたたみに進化したように、フォルダブルスマートフォンの登場はコンテンツがリッチ化したことの帰結だと見ている

実際、「Galaxy Z Fold3 5G」を使うと、利用するアプリの傾向が今までと変わることに驚かされます。今まではテレビで見ていたようなNetflixの動画を数時間ぶっ続けで再生していたり、電子コミックを見開きで読むようになったり。PCにリモートアクセスするのも、これまではタブレットでやっていたことです。ただ、それでもまだまだ画面が狭いと感じることは多く、ここには何らかのブレークスルーが必要だと思います。

あくまで一例ですが、ARグラスがもっともっともっと自然になって、目の前に巨大なディスプレイが広がったら、わざわざコンパクトなスマートフォンに目を落とす必要はなくなるかもしれません。ただ、「メガネは顔の一部」というほどで、デザインのトレンドの移り変わりも激しく、身に着けさせるハードルはスマートフォン以上。可能性としては、スマートフォンをそのまま進化させた存在 ── 例えば超小型プロジェクター搭載の端末というようなもの ── もありえないことはないでしょう。「GALAXY Beam」のことは、いったん忘れてください(笑)。

▲2012年のMWC取材写真から引っ張り出してきたGALAXY Beam。当時はGalaxyがすべて大文字だった

加えて、ここまで処理能力が高くなったスマートフォンをなぜそのままPCのように使わないのかにも疑問を持っています。Windows Phoneの「Continuum」を筆頭に、Galaxyの「DeX」やモトローラの「Ready For」、ファーウェイの「PCモード」など、各社がトライ&エラーを繰り返しつつも、普及していない使い方です。
こうした機能も、スマートフォンそのものが表示領域の問題を解決することで広がっていくかもしれません。いや、むしろ広がってほしい。

▲スマートフォンを外部ディスプレイに出力してPCのように使う機能は、各社がトライしつつも、普及していない。写真はWindows PhoneのContinuum

こうなる保証はどこにもありませんが、20年後にこの記事を読み返しとき、タイムカプセル的な答え合わせができることを楽しみにしています。20年後はリアル老人会入り待ったなしの執筆陣で「いやー、あんなことも書いたねぇ」と振り返りたいですね。というわけで、今度こそ目指せ20周年!
テクノエッジが、末永くテクノロジーのど真ん中とそのエッジを伝え続けることを願ってやみません。

《石野純也》
石野純也

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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