マイクロソフトがゲームのサブスクXbox Game Passを大幅に値下げしました。
改定後の新価格は、全部入り最上位プランのXbox Game Pass Ultimate が1か月1550円。PCのみのPC Game Pass は1300円。
2025年10月の急激な値上げでは、Ultimateが旧価格の月1450円からいきなり月2750円に達していたため、約半年で倍近くに上げて半額近くに下げたことになります。
一方で、アクティビジョンの巨額買収で手に入れた看板ソフトのひとつCall of Duty シリーズ(CoD)の新作は、Ultimateプランの特典であるDay Oneリリース、つまり通常の発売日と同時に定額カタログに入る対象から除外。
今後の新作は、通常の発売から約1年後に遊び放題に入る仕組みになると発表しています。
¥2,750
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
¥3,900
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
■ 米国でも19.99ドル → 29.99ドルから22.99ドルへ、約半年で乱高下
Xbox Game Passの価格は、(スタジオ買収を繰り返した結果)人気シリーズが定額に加わりサービスの価値が増したという説明で、また会員獲得フェイズから収益確保への一般的な推移で、開始から数年かけて小刻みに値上げを繰り返してきました。
しかし2025年秋の価格改定は、米国で約50% (19.99ドルから29.99ドル)、円安等の要素もある日本では約90% (1450円から2750円)という急激な値上げ。
今回はその大幅値上げを約半年で改めてやや値上げ程度に、かつ看板のひとつをデイワン定額から切り離す路線変更です。
■ 収益圧力と立直し策、ブランド低下の懸念
マイクロソフトのXbox部門は、初の「ゲーミングCEO」を務めた中興の祖フィル・スペンサー氏が今年2月に退任、後継者と目されていた「Xboxプレジデント」サラ・ボンド氏も退社し、ゲーム部門出身ではない幹部のアシャ・シャルマ氏が新CEOに就任したばかり。
シャルマ氏はゲーム業界出身ではなく、MetaやInstacartでユーザーを増やしビジネスを拡大させてきた手腕を見込まれ、Xboxビジネスの立て直しを期待される立場です。
これは新CEOの就任前から、もともとマイクロソフトではゲーム部門以外の収益性が高いなか、全社的なAIコミットによるビジネス拡大もあり、経営陣から従来以上に高い収益確保を求められていた背景があります。
Bloomberg等が報じたインサイダー情報では、マイクロソフトの最高財務責任者はXbox部門に対して、他の部門と同等の営業利益率30%を求めたとされています。
この「30%圧力」説については、あくまで非公式の内部情報として報じられたものですが、CEOのサティア・ナデラ氏はゲーム部門でもイノベーションを継続するには健全な収益が必要という一般論に寄せた発言で、Microsoft 365等の他部門と同じく高収益を目指すことを認めています。
ゲーム事業の業界平均がおおむね10%台後半から20%程度とされること、過去数年のXbox事業の実績からもかなり高い数字であり、昨年のゲームパス大幅値上げもこれを受けたものと考えられます。
目先の収益確保に大幅値上げした結果、半年で慌てて改めるのは、マイクロソフトが数字を公表したわけではないものの、要は高くしすぎて離脱を招き余計に収益と顧客ロイヤリティを悪化させたと見るのが自然です。
新CEOのシャルマ氏自身、就任とともにビジネス全体を評価した結果、2025年秋の改訂はいくらなんでも高すぎたと社内で評価したことがリークされており、今回の価格改定ではみずから「Ultimate has become too expensive for too many players.」と率直に認めています。
■ スペンサーの功績とAIブーム、マイクロソフト躍進とゲーム事業の立場
前CEOのフィル・スペンサー氏は、アクティビジョンやマインクラフトなどの買収を成功させ、いまや収益の柱になったXbox Game Passを導入するなど、Xbox One世代の混乱と低迷から、Xbox Series X|S とクラウド時代で一定の立て直しに成功して、ビジネス規模を数倍に拡大した功績があります。
社内でも「コンシューマー部門トップの下につくXbox事業担当EVP」から、新たにマイクロソフトCEOに直接リポートする立場になり、「ゲーミングCEO」を新設させ就任するなど、経営トップのナデラCEOに対して、マイクロソフトのなかでコンシューマー向け最大ブランドであるXboxの役割を認めさせたことが評価されていました。
しかし一方で、直近のXbox事業はPS5が好調なソニーやSwitch 2を投入した任天堂との競争が厳しく、巨額の買収がコストに見合う会員増や収益改善につながったかは疑問もあり、世界的な経済環境の悪化を背景に、買収したスタジオの多くでレイオフを実施したり、肝心のゲームパスも以前の数字アピールをいつの間にかやめるなど、伸び悩んでいたことはたしか。
それ以上に、買収もあってXboxのビジネス規模を数倍に拡大したといっても、マイクロソフト全体が過去10年数年にわたり大きく成長しており(たとえばスペンサー就任時の2014年には約870億ドル規模が、2026年には2817億ドルなど)、単体でゲーム事業としてみれば業界的にもそう悪くなかったとしても、高収益体質のマイクロソフト社内としてはパフォーマンスが出ていないと詰められる部門、社運を賭けたAI競争に際し投資が必要ななかで、ゲーム事業のブランドはそこまで必要なのか?と言われかねない立場になっていたのが近年の状況です。
■ 「AI担当幹部がXbox統括」への警戒から「ゲーマーの声を聴く」姿勢アピール
ともあれ、スペンサーは約38年(!)のマイクロソフト歴を経て引退、その下で次期トップと目されていたサラ・ボンドもマイクロソフトを離れ、新Xbox CEOのシャルマはこうした厳しい状況からXboxの立て直しを求められる立場です。
(サラ・ボンドについては、Xboxプレジデントとして外向けの発信を担っていたこと、ここ数年は東京ゲームショウをはじめ何かとスペンサーとセットで公の場に現れるなど後継者と考えられていましたが、スペンサー引退に際してのメッセージでは、サティア・ナデラからも引き継ぐシャルマからもひとことも言及なし。つまり、方針の対立か後任人事に納得できなかったか、経営陣からの感謝メッセージ草稿に追加されるまもなく退社を決断したのではとみられています)。
新たにXboxのトップになったシャルマCEOはゲーム業界の出身ではなく、しかも直近でのマイクロソフトでの担当がAIビジネスだったため、発表当社はこの世の終わりのように嘆くゲーマーもいれば、スペンサー / ボンド体制で進んだXboxコンソール(ゲーム専用機)相対化などへの反発から「(方針変更するなら誰でも) Xbox復活の救世主」と逆に期待する声もあり、コミュニティからも舵取りに注目が集まっていました。
ブランド維持に必要なコミュニティ対応、ゲーマー目線的な意味ではスペンサー路線を継承して、みずからソーシャルメディア等で積極的に発信するスタイル。
今回のゲームパス値下げに際しても、多くのゲーマーに対して高くなりすぎたと率直に認め、今後もプレーヤーにとって何が大事かを学びゲームパスを進化させてゆくとメッセージするなど、ゲーマーの声を聴きます、ゲーム業界出身じゃないので虚心坦懐に学びます姿勢をアピールしています。
■ 結局は100円値上げでCoDデイワン廃止。 どんなプレーヤーが得をする?
半年のあいだに二倍近くの値上げから半額近くの値下げと乱高下しましたが、日本国内では結局Ultimateが1550円になり、看板のひとつCoDのデイワン特典から切り離しで、差し引きでいえば微妙な値上げであることは変わりません。
今回の価格改定でもっとも得をするのは、Xboxゲームパス自体には魅力を感じるが、CoDは特にやらない、ゲームパスに入っていれば遊ぶかもしれないけれど、ロンチで買うまでもない層。

この層にとっては、以前に近い月1550円で、たとえば日本が舞台になったForza Horizon 6、マイクロソフトフライトシミュレーターやHalo、Gears of War などマイクロソフト系の過去作に新作、StarfieldやFallout、ディアブロ、DOOMなどベセスダやidゲーム、あるいは戦略的なデイワンが多い話題のインディーゲーム、Xbox 360 や初代Xboxの互換ゲームなどを、買うかどうか悩むことに心理的リソースを費やすことなくいつでも遊べるゲームパスのメリットを享受できることになります。
逆に値下げの恩恵が少ないのは、CoD新作はかならずロンチで買って仲間と遊ぶという、プレーヤー人口の変化も含めて新作のうちに楽しみたいゲーマー、かつゲームパスの多様なゲームも楽しみたい層。
ゲームパスに加えて、従来ならばロンチから定額内で遊べていたCoDを単品で買うことになるため、12か月で割ってUltimate月額に加えれば値下げ幅はある程度相殺されます。(月額課金を止めてもCoDのライセンスが手元に残る大きな違いはありますが)。
もともとゲームパス自体に興味はない、CoDは買うゲーマーの場合、当然ながら本人的には何も変わりません(ゲームパスにあるなら遊ぶ層も含めた同時接続数が減る効果はあるかもしれませんが)。
出費が増えるのは、CoDはロンチで遊びたい、そのために単品で買うよりも安いゲームパスで済ませたい層。従来はロンチの一か月(初月が安いキャンペーン含む)や、気に入ったらさらに数か月を遊んでも、CoD単品を買うより安く上がりました。
今後はこれができなくなるため、発売日から遊びたいなら単品を買うしかなくなります。(ゲームパスに加入すると、定額外の単品購入やゲーム内課金も割引になる効果があるため、他のゲームに多少なり興味がある場合はその割引率も要チェックですが)。
■ 次世代に向けたXbox Game Pass の変化に注目
業界を代表する稼ぎ頭だったCoDを定額に含めたことは、ゲームパス会員増を上回る損失ではないかとの議論は以前からありました。
またデイワン特典自体についても、定額外のデラックス版や差分DLCを買うと数日アーリーアクセスできるパターン、つまり実質的なデイワンの格下げ・真のデイワン課金を導入する場合や、昨年実施された各プランの再定義では、タイトルにより最上位のUltimateだけでデイワンになる・中間プランのプレミアムでは一定期間待つといった区別が設けられていました。
今回の施策はCoDだけとはいえ、Ultimateでもデイワンではなくなる、どころか1年後になるという大きな変化。これが他のタイトルにも波及するのか、Xbox Series X|S が使命を終えつつあるなかで、PCハイブリッドになる次世代機 Project Helix でのXbox Game Pass Ultimate の位置づけがどう変化するのかも含めて、新CEOがどんなXbox復権策を打ってくるのか注目です。









